形成外科について

形成外科は、体の表面組織に生じた様々な異常や変形、欠損に対し、外科的な治療を通じて修復していく専門診療科です。また、機能面で特段の問題がなかったとしても、外見的な側面(見た目)でお悩みの方もいらっしゃいます。こうした方々に対しても、形成外科特有の手技を活用し、形態的にもより美しく整え、生活の質(QOL)の向上を目指していきます。具体的には、顔の外傷・骨折、やけどや傷あと、あざ、皮膚腫瘍、潰瘍、先天的な外表異常の治療、欠損した組織の再建などを行います。

形成外科の主な疾患

  • 眼瞼下垂
  • けが(外傷)
  • やけど(熱傷)
  • 陥入爪、巻き爪
  • 皮下良性腫瘍(粉瘤、脂肪腫、石灰化上皮腫、異物肉芽種など)
  • 傷痕(瘢痕、ケロイド)
  • 鼻骨骨折
  • 先天性眼瞼下垂
  • 副耳、耳垂裂、耳前瘻孔
  • 陥没乳頭、副乳
  • 臍ヘルニア
  • 毛巣洞

眼瞼下垂

眼瞼下垂は、まぶたが垂れ下がってきて目が開きにくくなる病気です。様々な原因によって上のまぶたを引き上げる筋肉や膜、神経に障害が起こり、まぶたを持ち上げにくくなる状態です。いわゆる「眠そうな目」になってしまいます。片目のみで起こることもあれば、両目で起こることもあります。

眼瞼下垂のうち、生まれつきまぶたを開く力が弱いケースを「先天性眼瞼下垂」と呼びます。一方、生まれた時は正常でも、加齢によるまぶたの皮膚のたるみほか、様々な原因で眼瞼下垂になることがあり、この場合は「後天性眼瞼下垂」と呼びます。

眼瞼下垂の状態を放置していると、「目つきが悪くなる」、「目が小さく見える」といった見た目の問題にとどまらず、健康上の問題も生じます。視野が狭くなるため、無意識のうちに眉に過度の力を入れるようになり、眼精疲労やめまい、頭痛、肩こりなどを引き起こしてしまうのです。このような症状を悪化させることが無いよう、早めに医療機関を受診することが大切です。

先天性眼瞼下垂症と後天性眼瞼下垂症では術式が異なります。眼瞼挙筋と呼ばれる筋肉の力が元々なかったり弱い先天性の場合は、動力源を他の筋肉に求めます。また後天性は筋力に問題がなく膜が伸びてくることにより生じるので、その膜の調整を行います。他の理由で眼瞼下垂が生じている場合は、その原因により治療法を選択します。

けが(外傷)

鋭利な刃物が皮膚に突き刺さったり、硬いコンクリートの上で転んだりすると、体の表面組織が損傷し、骨や筋肉、神経、血管などに傷害をもたらします。命に係わる重いケースから、1週間程度で自然に治癒するケースまで様々ですが、軽いけがは日常的にもよく見られます。

例えば、ガラスの破片や刃物などの鋭い器物が皮膚に当たると、皮膚が切れて傷ができます。切り傷は日常的に誰もが経験しうるのですが、皮膚組織の深くまで損傷すると、神経や腱、骨などに影響が及び、緊急で縫い合わせる処置が必要になります。また、土やサビなどが傷口に入ってしまった場合は、破傷風などの感染症の恐れが生じてきます。

また、硬い地面で転倒したときは、皮膚の一番外側にある表皮がこすり取られ、手や膝に擦り傷ができます。皮膚の浅い部分には神経が密に走っているため、表皮が剥がれて炎症が起こると、切り傷よりもむしろヒリヒリとした痛みが続きがちです。適切な手当をしなければ、細菌などに感染して化膿することがありますので、軽視せず医療機関で治療を受けましょう。

やけど(熱傷)

やけどは、熱い物体などが皮膚に接触することにより、皮膚が損傷する疾患です。積極的な治療を行なわなくても済む軽度なものから、命に関わる重度のものまで様々な程度があり、その状態によって治療法も変わってきます。初期の処置として、やけどを負った部位を冷やすことが大切です。主に流水によって皮膚深部の温度を下げ、障害の程度が進行しないようにします。

やけどを負ったときは、出来るだけ早く医療機関を受診して下さい。特にお子様の場合、大人よりも皮膚が弱く、見た目以上に皮膚の内部が損傷していることがあるので、早めの治療が欠かせません。浅いやけどの場合は、軟膏を塗るだけで大丈夫ですが、重症の場合は専門的な治療が必要であり、手術などを行うこともあります。

陥入爪、巻き爪

巻き爪は、指の爪が内側にカーブしている状態です。爪の縁が内側に湾曲している状態が続くと、次第に皮膚組織へと食い込んでいき、陥入爪となってしまいます。これに伴い、爪の周囲の組織が傷つき、赤く腫れあがったり、化膿したりします。爪によって皮膚の神経が刺激されるため、歩行時などに強い痛みが出ることも少なくありません。足の親指に出現するケースが多いのですが、その他の指でも陥入爪になることがあります。

主な原因は、靴のサイズの不適合です。小さ過ぎる靴や大き過ぎる靴を履くことにより、親指の爪の辺りが締め付けられ、爪の端が巻いていってしまうのです。また、爪白癬がある場合、爪が肥厚し変形しやすくなります。また、正しくない歩き方や爪の変形が既にある場合に長距離の歩行を続けた場合も、母趾に無理な力がかかり、陥入爪のリスクが高まり、さらに爪周囲炎を起こすことがあります。この他、深爪をしてしまうと、爪の先端の両サイドが皮膚に食い込みやすくなりますので、注意が必要です。
爪周囲炎を起こした場合は痛みも強くなるため、早めの処置が必要になります。

皮下良性腫瘍

皮膚・皮下腫瘍をご覧ください。

傷跡(瘢痕、ケロイド)

傷が治癒する過程において、傷を埋める組織が過剰に増殖し、ケロイドや肥厚性瘢痕になってしまうことがあります。ケロイドと肥厚性瘢痕を線引きする明確な診断基準はありませんが、ゆっくりではありながらも進行を続けて傷の範囲を超えて周囲に拡大するタイプを「ケロイド」、組織の増殖が一時的で時間をかけて赤みが消え、平坦化するもの、そして傷の範囲内に限られるタイプを「肥厚性瘢痕」と呼びます。

ケロイドは、胸の真ん中辺りや肩、上腕の外側、背中の上部、恥骨部、下腹有毛部、耳垂などの、比較的皮膚の緊張が強い部位に発生しやすい傾向があります。手術やけがの痕のほか、にきび痕や虫刺され、本人が気づかないような小さな傷からも発生することがあります。表面に光沢のあるやや赤いしこりで、端の部分はなだらかに盛り上がり、周囲の皮膚は赤みを帯びています。

ケロイドの治療には、外科的療法、薬物療法、圧迫療法、放射線療法などがありますが、いずれの治療法においても、形成外科で行うことが大切です。例えば外科的療法によってケロイドを切除する場合、単に病変部を切除しただけでは再発して、さらに傷跡がひどくなってしまいますので、専門的な手技をマスターしている形成外科医が行う必要があります。

瘢痕治療において、手術による切除後、張力の作用する方向を変えるように工夫するデザインや、術後のテーピングなどで局所に生じる張力を減じることで、再発を防ぐことが可能です。赤みが生じたりかゆみ、痛みなどの症状がある場合は、ステロイド局所注射などを行う事があります。難治性のケロイドの場合、術後に放射線治療を行うことがあります。外科的療法は最も根治的な方法であり、経過が良好なら1本の線にすることも可能です。

鼻骨骨折

ご承知の通り、顔の中心部にある鼻は前方に突き出しているので、転倒したときや壁に殴打したときに外傷を負うことがよくあります。軽症のときは鼻出血が見られる程度で済み、しばらく止血すれば特段の問題も生じません。しかし、鼻骨が骨折しているときは専門的な手術が必要になります。放置していると鼻骨が変形したまま治癒するので、鼻筋が湾曲して、後々鼻骨骨切りが必要になることもあります。また、鼻出血が続いているとき、呼吸に支障をきたしているときは、早めに形成外科を受診しましょう。

副耳、耳垂裂、耳前瘻孔

形成外科では副耳や耳垂裂、耳前瘻孔の手術も行います。副耳はよく見られる先天奇形の一種であり、耳たぶの前方に隆起物がみられます。柔らかい隆起物ならば簡単な手術で切除できますが、軟骨を含んでいる時は、軟骨の処理も同時に行う必要があります。

耳垂裂は耳たぶが裂けてしまう状態であり、先天性の耳垂裂と、ピアスなどが原因で耳たぶが避けてしまう外傷性のものがあります。また、耳前瘻孔は耳たぶの付け根付近に小さな穴が出来ている先天性の病気です。症状が出ないことも多いのですが、なかには瘻孔に汚れが溜まって異臭を放ったり、感染症を引き起こすこともあるので注意が必要です。

陥没乳頭、副乳

陥没乳頭は、乳頭が突出しておらず、乳輪より奥に引き込まれて凹んでいる状態です。美容上の問題ともなりますが、乳頭が陥没していると乳腺に炎症が起こりやすくなり、乳房が赤く腫れて強い痛みを伴う乳腺炎にかかりやすくなります。陥没した乳頭が妊娠しても突出してこないようなケースでは、授乳に不都合が生じることもあります。そのため、まずは用手的な牽引やマッサージを用いた保存的治療を行いますが、こうした治療が奏功しないときは、手術によって陥没乳頭を治す必要性が生じてきます。

副乳は、一般的に見られる左右ひとつずつの乳房のほかに、乳房線に沿った部位に乳腺組織を認める病態です。皮膚から出ている体毛の一部が変色しただけのものから、乳腺組織や乳頭などを備えたものまであり、授乳期の女性の場合は副乳から乳汁を分泌することもあります。通常、副乳はほかの奇形などを伴いませんので放置していてもよいのですが、美容上の理由から切除することもあります。

臍ヘルニア

臍ヘルニアは、お臍が飛び出しているように見える状態であり、一般的には「でべそ」と呼ばれています。臍の緒があった部位の筋肉が完全に閉じ切らないことにより、腸管が脱出することで起こります。赤ちゃんの1割くらいに見られますので決して珍しい状態ではありません。生後1か月ごろから臍が膨らんできて、3か月ごろまで大きくなりますが、その後は徐々に治っていくケースが大半です。

しかし、なかには2歳過ぎになっても臍ヘルニアが治らないこともあります。この場合、自然治癒はほとんど見込めませんので、手術によって改善させます。また、ヘルニア門が狭い場合に、稀ながら臍部皮膚の内側、筋膜との間で腸がはまって外れなくなる嵌頓と呼ばれる状態になる可能性があり、こうした場合は緊急手術が行われます。
成人してから整容面でも気になる方は手術で臍ヘルニアを修復しながら、見た目通常のおへそとなるよう形成することも出来ます。

毛巣洞

毛巣洞は、肛門の少し上あたりにある皮膚に小さな穴ができる病気です。椅子に長時間座って仕事をしている人は臀部の毛が皮膚に入り込みやすくなるため、毛巣洞を発症することがあります。通常は痛みなどの不快症状を伴わないのですが、細菌感染によって痛みや腫れが生じることもあります。そのような場合は、患部を切開して膿を排出し、抗菌薬を処方します。しかし、再発することもありますので、毛巣洞そのものを手術で切除することをお勧めします。