院長ブログ

なぜ2ステントで両顎手術を行うのか

両顎手術(OGS)を行う際に用いるステント(スプリントとも言う)について、ドクター向けの内容でブログを書こうと思います。これからOGSを始めようというドクターや2ステントを習得したいというドクターに是非読んでいただきたいです。

両顎手術に必要なステントの写真

1、シングルステントで行うルフォー1骨切り術

大学病院や市中病院で行われているOGSは多くがシングルステントで位置決めされていると思います。口腔外科の先生で2ステントで行っている施設もあるかと思いますが、形成外科の先生はシングルステントが多いと思います。実際自分も大学病院で研修していた時はシングルステントを学びました。この方法はルフォー1骨切りを行う際にシミュレーションソフト、ドルフィンやプロプランで切った場所と同じ場所を切るために、歯尖や歯肉から#1や#6辺りを計測しながら、骨切りラインを再現しながら実際に骨を切っていると思います。

この方法は、術前の3D CASSでのデータを元に骨切りを行うものですが、どれぐらいソフトでの骨切りを術野で正確に再現できるかが問題になります。実際に骨切りを行うと、L1の前面の骨切りは比較的正確に再現しやしですが、後方の骨切りはレシプロの歯がぶれたり、角度が若干異なって切れることがあります。impactionかける際に調整をするので、大きな問題にはなりませんが、impaction分を切除した際に、予定外の隙間ができることがあります。またシングルステントだとそのズレすら気づかないことがあります。骨切りした際に、MMCの座りのより所を作ったりしながら、計測した通りに動かすので、posterior impactionがどれほど再現できているかは、判断が難しくなります。咬合平面板で確認する方法もありますが、骨膜を剥離した軟部組織はあまり当てにならないのと、当然組織の浮腫も生じるので、判断が難しくなると思います。またソフトで計測した咬合平面の変化量を術野で計測することも困難です。更に叢生があると咬合平面板すら安定しないため、動く方向と量の目安くらいにしかなりません。

更にシングルステントでMMCを動かした際に移動量を再現しますが、impactionをかける際に削った量に応じて、若干の誤差が生まれるので、計測自体も不確かなものになります。最後によく言われるのが、yaw rotationが判断しにくいのです。PNSの移動は術野としては確認しにくいので、前方の計測のみで位置を決めなくてはいけないのですが、その位置決めが合っているかどうかは下顎を固定した際の骨移動を見た時に始めてシミュレーション通りかどうかがわかり、そこから微調整のために上顎骨を再固定するためにプレートを外すかというと、微調整くらいなら外さないと思います。結果的には大きな影響がないことが多いですが、予定していた移動ではないことは事実で、下顎の固定の際の顎関節のねじれが予測とは異なるということになります。

そしてもう一つ気をつけなければいけないのは、シミュレーションソフトで決めた骨切りラインが、術野を見た時に再現できない場合です。例えば上顎骨の前壁が思ったよりも薄く、固定する場所を考えると骨切りラインを少し変更しなければいけない場合があった時は、計測した数値が使えなくなります。

それから固定する時の手技についても、言及しておきましょう。MMCで動かした場合、プレート固定するまでは助手が支えなければいけません。助手が慣れた外科医であれば、ある程度固定する時の加減がわかるので良いのですが、まだ経験が浅いドクターが助手だったり、力が弱いナースが助手だと、固定までに保持すること自体が難しくなり、固定するまでにちょっとズレたりした時は直したりで、固定に時間がかかってしまいます。

2、2ステント法で行うルフォー1骨切り術

では2ステントだとどのようなメリットがあるのか説明します。
まず、骨切りラインの決め方は、シミュレーションをある程度再現しますが、多少のズレは気にしません。#3の歯根の位置や#6、#7の歯根の位置を気をつけながら、ある程度再現できていれば、ラインを決めてすぐ骨切り操作を行います。

以前はimpaction量を予め計測して、同時に骨切りして骨片を除去していましたが、現在は尾側のラインでまずはダウンフラクチャーで離断します。それからPMJの処理をある程度した後、1st ステントを用いて下顎と顎間固定を行います。そこから、anterior impactionを計測した数値より若干少なく削り、そこから下顎の運動に合わせて干渉する部分を削りながら、U1 showを確認しながらimpaction量を決定します。大方予定通りのimpaction量になりますが、set backなどしていた場合、U1 showが予測と異なることもあるので、ここは慎重に削っていきます。posterior impactionはPNSの移動量を計測しているので、それに合わせてPMJの処理を先に行って、下顎の運動に合わせて更に干渉部分を削っていきます。この操作をしっかり行うためには、麻酔がかかった後すぐに下顎を動かしてみて、顎関節の動き、動揺、咬合の時の骨頭の位置にズレがないか、押したり引いたりした時の反応を体感しておく必要があります。この上顎を固定する際に、その動きを思い出しながら、押しすぎないよう動かしてスムーズに上顎が収まるまで干渉部分を削っていきます。スムーズにと言うのがミソです。ここで力を入れると下顎骨頭が思いもよらない位置に来るので、注意が必要です。

この2ステント法の1stステントを使用していることで、yaw rotationがほぼ固定されます。変な下顎の動かし方をしない限り、顎関節がガイドになります。またraw rotationも同様に顎関節がガイドになります。調整が必要なのはpitch rotationだけなので、ここだけに集中すれば、移動と固定は予定通り行えるのです。

ここで、この1stステントはどのように作られているかというと、自分はドルフィンを使用していますが、ステントを作成するところで上顎を術後、下顎は術前の状態を作って、そこでステントをデザインします。このデザインにもコツがあるので、次回のブログで解説したいと思います。

3、骨切りの誤差

レシプロを用いて骨切りをした際に、切り代が大体0.5mmで計算されていますが、多少の刃のブレでもう少し切り代が出ることもあります。また後方の骨切りの際の歯の角度も若干ブレが生じるので、予想外の隙間ができることがしばしばありました。計測してposterior impactionの量を予め切除すると、固定には問題ないにせよ隙間ができてしまうことがありました。現在の干渉部分を削りながら調整していくと、切除しすぎるとか予想外の隙間ができることがありません。これも2ステントだからできる微調整です。

4、固定が楽

2ステントで上顎骨の位置決めをしてプレート固定する時は、助手にオトガイを持って押さえておくだけです。顎関節のガイドがあるので、強く押し付ける必要もないですし、頭側に軽く押し当てて動かないようにしておくだけなので、助手がナースの場合でも特に苦労なく固定ができます。

5、BSSOについて

上顎が固定し終わったら、下顎の離断に入ります。以前はショートリンガルだったりオベゲイザーだったりハンサックなど様々な骨切りを行ってきましたが、現在はextended BSSOを取り入れています。更に骨切りラインが伸びてもハンサックで行っているので、ノミの入れ方に工夫が必要です。ただextendedなので、下顎の固定はとても楽です。そして、骨片が長いので顎関節のねじれが最小限になります。set back量が多くても、顎関節への負担が減ります。

6、ステントの作成方法

3Dプリンターで作るステント、両顎手術の時のガイド

ステントを作成する方法は簡単で、シミュレーションソフトで作成したステントのstlデータを出力して、技巧所に送るだけです。1万円前後から5万程度と幅があります。とある学会であるドクターが「手術が多いのでステントを作っている暇がない」と言っていましたが、外注するので特に問題はないと思っています。むしろ、シミュレーション作業の一環として必要な作業と、手術の時のガイドなので作らない理由がみあたりません。

最近自分は外注するコストを削減するため、3Dプリンターを購入しました。ステントの作成は、ステントを寝かせると1時間半、立てると3時間ほどかかりますが、帰る前にセットして翌朝できているという感じです。また歯科模型もstlデータからプリントアウトしています。そのため、矯正歯科医から印象模型を送ってもらう必要もなく、finalステントも自分で作成しているので、矯正歯科医から届くのは歯のlocationデータが載ったstlデータのみです。クラウドで共有するので、郵送代、郵送する時間、手間が省けます。そして今は3Dプリンターは45万程度。材料費から計算しても、ステントや印象模型を作成して1000円以下です。大分コスト削減になります。作業の時間は多少必要ですが、プランを微調整したり、見直しした際の変更は容易です。手術の前に矯正歯科医とのMTGがありますが、そこでプランを微調整することがあるので、それが終了してからステントのプリントアウトを行いますが、余裕で間に合います。

7、まとめ

2ステントで行うメリットは多くあり、シミュレーションを忠実に再現しつつ、手術時間を大幅に短縮できるというメリットがあります。これは患者様にとってとても大事な要素で、手術時間は短い方が身体の負担も減るので、保険診療でも行えれば医療費の削減にもなるわけで、是非今後OGSを行いたいドクターや2ステントを導入したいドクターは参考にして頂けたら幸いです。

当院では随時見学など受け入れております。一緒に手術をしながら技術などのディスカッションができたら嬉しいです。

 

監修者情報

宮﨑 邦夫

リノクリニック東銀座 院長

【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員

消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。

監修日:2023.06.04

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