
院長コラム
目次
線維芽細胞と再生医療の可能性
近年、美容医療の分野で注目を集めているのが「再生医療」です。その中でも特に関心を持たれているのが、線維芽細胞を用いた再生医療です。
線維芽細胞は、肌の真皮層に存在し、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸といった肌の若さを保つ成分を作り出す細胞。年齢とともに数や働きが低下することで、シワやたるみの原因となります。
この細胞を自分の皮膚から取り出して培養し、再び体内に戻すことで根本から若返りを目指せるのが線維芽細胞再生医療の魅力です。
医師として臨床の現場で実際に施術を行うと、「もっと若いうちにやっておけばよかった」という声を非常に多くいただきます。
ここでは、線維芽細胞治療の効果・治療の流れ・副作用やリスク・制度背景・他の治療との違いについて、詳しく解説します。
線維芽細胞の役割とアンチエイジング効果
肌の若さを支える重要な細胞
線維芽細胞は真皮層に存在し、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸を生成します。これらは肌の構造を支える柱であり、弾力や潤いを保つために欠かせない成分です。
しかし、加齢や紫外線ダメージにより線維芽細胞は減少し、働きも低下します。その結果、
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シワの増加
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たるみ
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ハリ不足
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肌の乾燥
といったエイジングサインが目立つようになります。
線維芽細胞を補充する効果
自分の線維芽細胞を培養して戻すと、再び活発に働き始めます。
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コラーゲン産生が増加し、肌のハリが改善
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エラスチンが増え、シワが目立ちにくくなる
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ヒアルロン酸が増えて潤い保持力が高まる
外から補うのではなく、自分の力を引き出す自然な若返りが可能になります。
線維芽細胞治療の流れ
採取
耳の裏側から米粒2つ分ほどの皮膚を採取します。局所麻酔で数分程度の処置で済み、傷跡はほとんど目立ちません。
なぜ耳の裏から採取するのか
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髪で隠れるため傷跡が目立ちにくい
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紫外線ダメージが少なく元気な細胞が採れる
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皮膚が薄く、線維芽細胞を効率よく取り出せる
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摩擦が少ない部位で感染リスクも低い
輸送と培養
採取した皮膚は、専用のキットで温度管理された状態で外部の細胞加工施設へ輸送されます。
厚生労働省の認可を受けた細胞培養施設にて、皮膚から線維芽細胞を抽出し、約5週間かけて数百万~数千万単位にまで増殖させます。培養過程では細胞の安全性や無菌性も確認されます。
注入
培養された線維芽細胞は患者様のご予約日にクリニックに配送され、医師が注射で肌に注入していきます。顔、首、デコルテ、手の甲など、シワやたるみが気になる部位に幅広く対応できます。
保存と再利用
培養で増えた細胞の一部は凍結保存されます。
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保存期間は1年単位で更新可能
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保存管理費が必要
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解凍して翌年以降の再注入が可能
メンテナンス
初回は2回の注入を推奨。その後は年に1回程度、保存した細胞を利用して追加注入を行うと効果を持続できます。
患者の声と臨床経験
40代女性:目元と口元のシワに悩み、線維芽細胞治療を受けたケース。半年後には自然なハリが戻り、表情も若々しくなったと喜ばれました。
50代男性:首の横ジワに対して施術。数か月で「ネクタイ姿が若返った」と職場でも評判になった例があります。
このように「自然な若返り」を求める男女に幅広く適応可能です。
線維芽細胞治療の持続性とタイミング
線維芽細胞治療の大きな特徴は長期的な効果の持続です。
ヒアルロン酸注入のように数か月で吸収されるものとは違い、年単位で効果を実感できるケースが多いです。
患者さんからよく聞くのは「もっと早くやっておけばよかった」という言葉。
理想を言えば若いうちに採取・保存しておくのがベストですが、「思い立った時がベストタイミング」と考えて問題ありません。
適応部位と他治療との比較
適応部位
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目尻や口周りのシワ
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ほうれい線
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首の横ジワ
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デコルテのたるみ
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手の甲のシワ
他治療との比較(効果・メリット・デメリット)
副作用やリスクについて
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自分の細胞を使うため免疫反応は基本的に起きない
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培養過程での不純物による反応がまれに報告される
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採取部位に一時的な赤みや腫れが出ることがある
大きなリスクは少なく、安全性の高い治療といえます。
制度的な背景
日本でこの治療を行うには、厚生労働省への「第二種再生医療等提供計画」の届け出が必要です。
この制度により、細胞の培養・保存は認可施設でのみ実施され、クリニックは採取と注入を行います。
つまり、治療は「制度で管理された仕組み」の中で行われるため、患者さんにとっても安心して受けられる再生医療といえます。
区分 | 内容 | リスク | 代表的な例 |
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第1種 | 他人(他家)の細胞を利用(例:iPS/ES由来細胞等) | 高 | 研究段階の再生医療、大学病院レベルでの先端治療 |
第2種 | 自分自身(自己)の細胞を培養して戻す | 中 | 線維芽細胞治療、脂肪由来細胞の培養移植など |
第3種 | 細胞培養を伴わない自己細胞の利用 | 低 | PRP(多血小板血漿)療法など |
医学的限界と今後の展望
現時点での限界は、
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細胞自体を若返らせることは不可能
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他人の細胞を移植することは免疫拒絶で不可能
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保存にはコストがかかる
ただし、今後はiPS細胞や遺伝子研究の進歩により、より画期的なアンチエイジング治療が可能になると期待されています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 効果はどのくらい持続しますか?
A. 数年単位で効果が持続し、保存した細胞を再注入することで長期維持が可能です。
Q2. ダウンタイムはありますか?
A. 採取部位に軽度の赤みが出る程度で、日常生活に支障はほとんどありません。
Q3. どの年齢で受けるのが理想ですか?
A. 若いほど細胞が元気ですが、40~60代で受ける方も多く効果を実感されています。
Q4. 他の治療と併用できますか?
A. ヒアルロン酸やレーザー治療と組み合わせることで、さらに高い効果を得られます。
Q5. 認定施設以外でも受けられますか?
A. 厚労省に届け出を行った医療機関のみで実施可能です。必ず認可施設で受けましょう。

監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2025.08.25