院長コラム
鏡を見るたびに口元の線が気になったり、ファンデーションが溝に溜まってしまったり……。写真に写った自分を見て、ふと老け込みを感じてハッとする方は少なくありません。 ほうれい線治療は選択肢が多いため、「結局どれが自分に合うのか分からない」というお悩みを、毎日のカウンセリングでも本当によく伺います。
まずお伝えしたいのは、お一人おひとりの骨格や年齢の重ね方によって「正解の治療」はまったく異なるということです。その選択を間違えないための最大の軸となるのが、溝の原因が「皮下のへこみ」にあるのか、それとも「皮膚や脂肪のたるみ」にあるのかという見極めです。
原因が違えば正解の治療も変わります。この記事では東銀座で手術と注入の両方を担当している立場から、各治療の種類・向き不向き・限界までまとめてお話しします。
【この記事でわかること】
・ほうれい線治療の主な種類と、それぞれが得意なこと・苦手なこと
・「へこみ型」「たるみ型」「骨格型」という原因別の比較と選び方
・持続期間・ダウンタイム・費用の考え方を揃えて比べる方法
・私が診察で何を見て治療を提案しているか、という実際の判断基準
目次
ほうれい線治療の種類と特徴
ほうれい線とは、鼻の脇から口角に向かって走る溝(鼻唇溝/びしんこう)のことで、頬の皮下脂肪と口元の組織の境目に生じる「段差」です。ここを押さえておくと治療の種類が整理しやすくなります。溝そのものを埋めるか、段差を作っている上の組織を持ち上げるか、二つに一つ。これが治療選びの出発点です。
主な治療を挙げます。
ヒアルロン酸注入は、溝のへこみを直接埋める方法。施術時間は10〜20分、腫れや内出血は数日から1週間程度で落ち着くことが多く、製剤によりますが持続は6〜12ヶ月が目安です。韓国で行われた左右の顔を比べる無作為化試験でも、中等度以上のほうれい線に対する架橋ヒアルロン酸の改善効果が24週時点で確認されています。
糸リフト(スレッドリフト)は、溶ける糸を皮下に通して頬の組織を引き上げる方法。腫れや引きつれは1〜2週間、効果の持続はおおむね1〜2年。糸の形状や挿入層によって安全性と効果が変わることは、海外のレビューでも指摘されています。
高周波(RF)やHIFUなどの機器治療は、皮膚とその下の層を引き締める非侵襲的な治療。ダウンタイムがほぼない代わりに変化は穏やかで、東南アジアで行われた前向き試験では、下顔面のたるみとほうれい線の指標に改善が見られたと報告されています。
脂肪注入は、こけた頬にボリュームを戻す方法。定着すれば長期的ですが、生着率に幅があります。
そしてフェイスリフト。SMAS(表在性筋膜)ごと引き上げる手術で、たるみに対しては最も根本的な選択肢になります。
正直に言うと、ここまで並べても「で、自分はどれ?」となるはずです。次で原因から絞り込みます。
ほうれい線の原因別に治療を比較

原因は大きく三つに分かれます。へこみ型、たるみ型、骨格型。私が診察室で最初にやるのは、座った状態と仰向けになった状態で溝がどう変わるかを見ることです。仰向けで溝がほぼ消える方はたるみ型、仰向けでも溝が残る方はへこみ型か骨格型。この一手間で提案はかなり変わります。
へこみ型は、頬の脂肪組織がやせて鼻の脇がすっきりとくぼんでしまうタイプです。こちらは20代後半から30代の比較的お若い、もともとスレンダーな方に多く見られます。 こうした場合、皮膚をどれだけ糸で引き上げても肝心の「溝」自体は埋まりません。そのため、ヒアルロン酸注入や脂肪注入によるボリュームの補充が第一選択となります。 近年の医学的コンセンサスでも、加齢に伴う骨の吸収や脂肪の萎縮、靭帯のゆるみが複雑に絡み合うこと、特にアジア人では上顎の骨格的な後退が影響しやすいことが指摘されていますが、これは日々の診療で私自身が強く実感していることでもあります。
たるみ型は、頬全体が下がって口元に乗り、段差が深くなるタイプ。40代以降で、同時に「フェイスラインがぼやける」「マリオネットラインが出てきた」「二重顎が気になる」と訴える方はほぼこのタイプです。ここにヒアルロン酸を足すと、重さが増して余計に下がる。カウンセリングでこう聞かれたとき、私はいつも「埋めるより上げましょう」とお答えしています。糸リフト、程度が強ければフェイスリフトです。
骨格型は、上顎の前方への張り出しが乏しく、鼻の脇が構造的に陥凹しているタイプ。「のっぺり顔」「横顔が平たい」と自覚されている方に多く、この場合は鼻翼基部へのボリューム補充や骨格的なアプローチを検討します。
ほうれい線治療の費用と期間の比較
費用を比べるときは「1回いくら」ではなく「3年でいくら、そのあいだ何日休むか」で考えてください。これが私のおすすめする比較軸です。
ヒアルロン酸は1回あたりの負担が軽い反面、6〜12ヶ月ごとの再注入が前提になります。3年なら3〜5回。糸リフトは1〜2年ごと、3年なら2回前後。フェイスリフトは1回の負担は大きいものの、結果の持続は年単位で長く、10年単位の視点に立てば決して割高とは限りません。機器治療は数ヶ月おきのメンテナンスになるため、回数が積み上がります。
ダウンタイムも同じ発想で揃えて比べます。目安として、ヒアルロン酸は内出血が出ても1週間程度、糸リフトは腫れとつっぱり感が1〜2週間、脂肪注入は2週間前後、フェイスリフトは腫れのピークが術後4〜5日で、2週間で約7割、1ヶ月で約9割が引いていくという経過をたどります。仕事復帰は、手術でもマスクをしてデスクワークであれば数日で戻られる方が珍しくありません。腫れを気にしないのであれば、生活リズムは早めに戻していただいて構わないとお伝えしています。
なお、ひとつ注意点を。当院では輪郭や顔面の手術後に、フェイスバンドや包帯による圧迫固定を行いません。血腫ができたときの発見が遅れること、気道の安全、そして開口訓練を早く始めたいこと。この三つが理由です。代わりに、頭を高くして過ごすこと、しっかり食事を取ること、早期からの開口訓練をお願いしています。
当院の確定金額は診察のうえでご案内しますので、料金の目安は事前にご確認ください。
ほうれい線治療の選び方は?

選び方は、次の順番で考えると迷いません。はじめに原因、次に許容できるダウンタイム、最後に予算。この順番を逆にすると、後悔する確率が上がります。
STEP 1|仰向けテストで原因を分ける
自宅でもできます。仰向けに寝て溝が浅くなるならたるみ型、変わらないならへこみ型か骨格型。これだけで候補は半分に絞れます。
STEP 2|許容できる休みの日数を決める
「来週イベントがある」のか「1ヶ月は自由が利く」のかで、選べる治療は変わります。どれだけ良い適応でも、休めないなら手術は選べません。
STEP 3|単独か組み合わせかを決める
実際の診療で感じるのは、単独治療で完結するケースは思ったより少ないということ。たるみ型の方でも、引き上げたあとに鼻の脇にわずかな陥凹が残ることがあり、そこへ少量の注入を足すと仕上がりが整います。
STEP 4|施術者に血管の走行を確認する
これは患者さんから聞いてほしい点です。顔面動脈の深さは部位によって変わり、メタアナリシスでもレベルごとに深度が異なることが示されています。鼻の脇は特に注意が必要な領域。解剖を理解した手技かどうかは、安全性に直結します。
診療の中で私自身が最も厳しく戒めているのが、ヒアルロン酸などの「入れすぎ」です。ほうれい線の溝だけを何とかしようと過剰に埋めてしまうと、頬全体がパンと張ったような不自然な顔立ちになってしまいます。 大切なのは、単一の溝を見るのではなく、顔全体の立体的なバランスを保つことです。日本形成外科学会や日本美容外科学会の場でも、中顔面はひとつのパーツとして切り離すのではなく、お顔全体の調和の中で捉えるべきだという議論が主流になっており、当院でもこの方針を大切にしています。銀座エリアで複数のクリニックを回られた方ほど、「結局どこを治せばいいのか分からなくなった」とおっしゃいます。そういうときこそ、原因に戻るのが近道です。
ほうれい線治療のよくある質問
Q. 笑うと出るほうれい線も治療で消えますか?
A. 表情を作ったときに出る線を完全になくすことは難しいと考えてください。表情筋が動く以上、線は生じます。治療の目標は、無表情のときに刻まれている溝を浅くし、動いたときの線を自然な範囲に収めることです。ゼロを目指すと不自然になります。
Q. ヒアルロン酸と糸リフト、どちらを先にやるべきですか?
A. 頬が下がっているなら糸リフトが先です。先にヒアルロン酸で埋めてしまうと、引き上げたあとに量が余って不自然になることがあります。逆に鼻の脇だけがくぼんでいる方は、注入のみで十分なケースも多いです。
Q. フェイスリフトのあとはフェイスバンドで固定しますか?
A. 当院ではフェイスバンドによる圧迫固定は行いません。血腫の早期発見と気道の安全、そして早期の開口訓練を優先するためです。代わりに、就寝時も枕を高めにして頭を上げて過ごすこと、しっかり食事を取ること、早めに口を動かしていただくことをお願いしています。
Q. 30代でほうれい線が気になりますが、治療は早すぎませんか?
A. 早すぎることはありません。30代で目立つ方は、たるみよりも「もともとの骨格」や「頬のボリューム不足」が原因であることが多く、少量の注入で十分整うケースがあります。むしろ原因が単純なうちのほうが、選択肢は多いです。
Q. 顔のマッサージやローラーでほうれい線は改善しますか?
A. 一時的な見た目の変化はあり得ますが、溝そのものを戻す力はありません。8週間の比較試験ではフェイスローラーやかっさで輪郭の計測値がわずかに変化したと報告されていますが、変化量はミリ単位です。深い溝の改善を目的にするなら、医療的な治療をご検討ください。
ほうれい線治療の選び方まとめ
- ほうれい線は「へこみ型」「たるみ型」「骨格型」に分かれ、原因が違えば正解の治療も変わる
- 仰向けで溝が浅くなるならたるみ型、残るならへこみ型か骨格型
- へこみ型はヒアルロン酸や脂肪注入、たるみ型は糸リフトやフェイスリフトが軸になる
- 費用は1回の金額ではなく、3年単位の総額とダウンタイム日数で比較する
- 手術後も当院では圧迫固定を行わず、頭を高く・しっかり食べる・開口訓練を重視している
ほうれい線という変化は、無理に「完全に消し去るもの」ではなく、お顔全体のバランスに合わせて「美しく整えるもの」だと考えています。溝の深さばかりにとらわれると不自然さを生んでしまいますが、全体の調和を考えれば、年齢にふさわしい自然な若々しさを引き出すことは十分に可能です。 治療の効果や経過にはどうしても個人差がありますので、まずはご自身のほうれい線がどのタイプに当てはまるのかを知ることから始めてみませんか。お一人で悩まずに、いつでも気軽にご相談にいらしてください。
リノクリニック東銀座のご案内
リノクリニック東銀座では、院長の宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医、外科経験20年以上)が、ほうれい線やたるみのご相談から輪郭形成、婦人科形成、保険診療の腋臭症手術まで担当しています。所在地は東京都中央区銀座3丁目11-13 松本銀座ビル9階(東銀座駅から徒歩3分)。注入治療と手術の両方を同じ医師が診るため、「どちらが適しているか」から率直にお話しできるのが当院の特徴です。東京・銀座エリアでほうれい線治療をご検討中の方は、どうぞお気軽にご相談ください。初診のご予約はこちら(WEB予約24時間受付)。
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参考文献
- Chottawornsak N, Punthitra V, Kusonjai D, et al. Evaluation of a Novel Bimodal-Approach Radiofrequency Device for Lower Facial Tightening in Southeast Asian Patients: An Open-Label Prospective Study. J Cosmet Dermatol. 2026;25(6):e70932. PubMed / DOI
- Lee SH, Park E, Won CH. Safety and Effectiveness of a Crosslinked Hyaluronic Acid Filler in Korean Patients for the Correction of Nasolabial Folds: A Randomized, Patient- and Evaluator-Blinded, Paired Study. Aesthet Surg J. 2026;46(5):569-575. PubMed / DOI
- Mariwalla K, Fabi S, Belkin D, et al. Assessing the Midface: Nose and Cheeks. Dermatol Surg. 2025;51(12S):S15-S22. PubMed / DOI
- Ahn SH, Hwang UJ, Han HS, et al. Comparative Effects of Facial Roller and Gua Sha Massage on Facial Contour, Muscle Tone, and Skin Elasticity: Randomized Controlled Trial. J Cosmet Dermatol. 2025;24(6):e70236. PubMed / DOI
- Trzeciak M, Ostrowski P, Gładysz T, et al. The Depth of the Facial Artery, Meta-analysis. Aesthetic Plast Surg. 2025;49(13):3793-3802. PubMed / DOI
監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2026.10.25



