院長ブログ
クラス2フェイスの治療
クラス2フェイスと呼ばれる輪郭に対する治療に関して、手術の解説を交えてご紹介します。
クラス2フェイスとは
「クラス2フェイス」と呼ばれる輪郭は下顎後退という輪郭です。
噛み合わせに関して「アングルの分類」というものがあります。6番目の歯が基準になり、その上下の位置関係で3つに分類されます。“クラス2”は上顎6番より下顎6番が後ろに来ている状態です。つまり下顎が後退しているということになるのですが、このクラス2は下顎が下がるだけではなく、上顎が前に出ているというのが、もう一つの特徴です。一見すると上顎までポジションが問題なく見えますが、実は人中の位置が若干前方にあり、下顎が後方に下がっていることで出っ歯感が強くなることがあります。
今回ご紹介するこのケースが「クラス2フェイス」です。この症例に関して詳しく解説します。
術前について
クラス2フェイスの特徴として下顎が後退していますが、上顎はやや前方に位置しています。そのため、鼻翼基部はやや低く、人中が前方に押し出され、上唇もボリュームがあります。下顎は後方に位置しているので唇の合わせはギャップができるため、閉じにくくなります。しかし頤唇溝という下唇と顎との間のくびれは保たれていることが多いです。ゴボ口の場合は頤唇溝は浅くなるか消失してしまいますが、クラス2の場合はここが保たれます。そのため、目から上唇あたりまでのパーツ配置は問題なく見え、下唇から顎先までも問題なく見えます。上下の唇のバランスが合っていないという輪郭です。クラス2フェイスの方で、「エラが気になる」「頬が張ってみめる」など輪郭のサイドの部分を気にされる方が多いのですが、それは下顎が下がっていて小さいために起こる錯覚です。
正面から見ますと、頬の張り出しが気になったり、エラが気になったりで、顎先の長さとしては当然後方に位置しているので長くは感じないのです。
横から見ると唇の上下のギャップは気になります。上唇のボリュームもこの程度のクラス2になるとかなり目立ってきます。
CTを見ると上下顎骨の前後差がはっきりと見えてきます。
クラス2フェイスの両顎手術のプラン
クラス2の治療には大きく分けると2通り。歯列矯正と骨切り+骨切りの外科矯正=両顎手術(顎矯正手術)になります。
矯正治療の場合
矯正でクラス2を治す方法は噛み合わせを整えるのみになります。上顎4番の抜歯をして後方に移動していきます。そうすると上下の前歯のギャップは埋まるわけです。ただ、上顎と下顎のポジションが変わるわけではないので、輪郭の変化はほとんどありません。唇のボリューム感は変化します。
外科矯正の場合
手術と合わせて矯正を行う場合は、パターンが3つあります。
まずはone jawとよばれる上下どちらか一方だけ骨切りを行なって咬合を作る方法です。もしもこの方法だとすると、今回紹介するケースの場合上顎4番抜歯して後方移動しつつ、下顎のBSSO(SSRO)を行なって下顎を前方移動する方法です。これだと骨切りは最小限で終えることができます。ただ、one jawの欠点は咬合平面の傾きを変えられないことです。口角の傾きや口角の下がりを改善できないため、左右非対称がある場合は改善の程度に制限がでます。
次にtwo jawと呼ばれる上下切る方法、両顎手術です。両顎手術を行う場合でも治療プランが2通りあります。
1、両顎手術後に上顎4番抜歯して咬合を整える方法です。手術手技としてはシンプルで、ルフォー1骨切り術、BSSO、オトガイ形成を行なって、術後に歯列矯正で前歯を下げていきます。これは手術コストを抑えることができ、術後矯正の時間が若干延長されますがシンプルな方法です。ただ、プランを立てる段階で、前歯の移動量が多いため予測が難しくなります。矯正歯科医がどれくらい後方に移動させる予定か見立てを聞いて、それを意識して骨切りプランを立てる必要があります。
2、もう一つのプランは両顎手術のルフォー1骨切りと同時にASO(前方分節骨切り術)を行う方法です。これは手術中に上顎4番を抜歯して、ルフォー1骨切りとASOを同時に行い、2ピースで移動する方法です。この利点は上顎前歯と前歯の歯槽骨の傾斜などを一度に見直することができ、輪郭が作りやすくなります。4番抜歯しますが、3−5番間の隙間は狭くなるため、術後の矯正も時短になります。ただ、手技がやや煩雑で手術代も追加で必要になります。
今回のプラン
今回は上顎前歯の唇側傾斜が強く、合わせて上顎の歯槽骨の唇側傾斜も強かったため、上顎は2ピースで骨切りを行うプランにしました。矯正期間も短縮でき、上顎歯槽骨の傾斜も理想的な傾斜にしやすく、術直後の輪郭が整えやすいというメリットがあります。
プランの立て方
こういった2ピースでプランを立てる際には歯科模型を切り出して咬合を作成する方法もありますし、3Dシミュレーションソフト上で咬合を決めていく方法があります。今回は患者様と矯正歯科医とが遠方だったため、全てデジタルでプランを作成しました。オンラインで打ち合わせをし、シミュレーションソフトを供覧しながら、咬合を作成しました。こういったことができるのも3Dシミュレーションソフトを用いる利点です。
術後3か月目の経過
まずは横顔から。上顎の突き出した感じの唇は後方へ移動、ただある程度の立体感を保たないと老けた顔になるので、人中のボリューム変化に注意しながら後方移動しています。
前から見ると目から口角までの距離感に変化があり、下顎が後方に下がっていたことで口角から顎先までの距離が短かったのが、術後改善してパーツバランスが整いました。
笑った時に見える上顎前歯の突出感や、噛み合わせの前後差、上顎の歯先の並びの見え方などが改善しました。程よい上下の前後さ、Uの字を描く上顎の歯の並び、口角の上がり具合も術前と比較して良くなりました。
CTを見ると上顎がやや複雑に見えますが、上顎が2ピースのため、固定に用いるプレートも多く、ワイヤーも用いて固定します。このワイヤーは3−5番間を固定するものなので、3か月あたりで抜去します。
術後のCTと輪郭の写真を並べてみます。術後の上顎歯槽骨の傾斜が整ったことで、人中のボリューム感がちょうど良くなりました。下顎は前方に移動し、オトガイ形成でえラインも整えて、ボリュームバランスがとれた輪郭になりました。
まとめ
クラス2フェイスと呼ばれる輪郭は、程度により輪郭を何も気にされていない方もいて、噛み合わせだけは気になるなどの場合があります。程度が強いと下顎が後退していることでの相対的な変化として輪郭が気になる部分が出てきます。咬合においてはクラス2なので、前歯のギャップやdeep biteと呼ばれる状態なので、より理想的な咬合を目指そうとするとクラス2の位置を変えるという選択肢になります。
今回は強めのクラス2に対して両顎手術+上顎ASOを行なった症例をご紹介しました。
監修者情報
宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2024.10.06