院長コラム

両顎手術は何歳まで可能?年齢別リスクと最適なタイミングを解説

両顎手術は何歳まで可能か

両顎手術(Le FortⅠ型骨切り+下顎枝矢状分割術などの総称)は、噛み合わせの改善や輪郭形成を目的とする大掛かりな手術です。
患者さんから特に多い質問が「両顎手術は何歳まで受けられますか?」というものです。

結論から言えば、年齢による明確な制限はありません
20代の若年層から40〜50代の中高年層まで、健康状態が整っていれば手術を受けることが可能です。

ただし、以下の条件が重要となります。

  • 骨や歯周組織が健康であること

  • 糖尿病や高血圧などの持病がコントロールされていること

  • 全身麻酔に耐えられる体力があること

つまり「年齢そのもの」ではなく、全身状態や口腔環境が適応の可否を左右するのです。

若い年代で受けるメリット

10代後半〜20代前半は両顎手術に最も適した時期とされます。

  • 骨や歯周組織が健康で矯正に適応しやすい

  • 回復力が高く、術後の腫れや内出血が引きやすい

  • 手術後の皮膚のたるみが出にくい

特に20代は、歯肉が柔軟に追従するため、ブラックトライアングル(歯間の隙間)が出にくく、仕上がりが自然です。

20代前半の患者さんでは、術後1か月でほぼ社会復帰可能、腫れの残りも軽度というケースが多いです。矯正治療もスムーズで、完成度の高い仕上がりが得られる傾向があります。

30代での両顎手術

30代は、社会的にも経済的にも余裕ができ、自分のために大きな決断をする人が増える年代です。

  • 30代前半は20代とほぼ同等の結果が得られる

  • 30代後半は歯周組織の追従性が低下し、矯正後に歯肉退縮が起こりやすい

  • 骨を小さく削る場合は皮膚が余り、フェイスラインにたるみが出やすい

30代後半で手術を受けた患者さんでは、矯正中に歯肉が下がり、ブラックトライアングルが気になるケースが見られました。見た目改善は達成できても、審美的な満足度には個人差が出やすいため、術前の説明が特に重要です。

40代以降での両顎手術

40代・50代で両顎手術を選択する人も増えています。美容目的、咬合改善目的のどちらでも希望はありますが、特有のリスクがあります。

  • 骨密度や歯の支持力が低下している

  • 術後に皮膚のたるみが強く出る傾向がある

  • 高血圧や糖尿病など持病による麻酔リスクが高い

  • 回復が遅く、社会復帰に時間がかかる

実際に50代前半の患者さんを担当した経験があります。健康診断で問題なく、手術自体は安全に行えましたが、腫れの回復が20代よりも遅く、矯正中に歯周組織の炎症が出やすかったため、歯科医との連携を密に取りました。

何歳から両顎手術はできるのか

一方で「若ければ早いほうがいいのでは?」という質問もありますが、成長が終わるまでは適応外です。

  • 女性は17歳前後まで顔の骨格が成長

  • 男性は18〜20歳前後まで成長が続く

成長期に骨切りを行うと、再び骨格が変化して結果が不安定になる可能性があるため、骨格成長が終了してからが原則です。

手術前に必要な医学的評価

両顎手術は全身麻酔で行うため、術前評価は欠かせません。

  • 血液検査・心電図・呼吸機能検査

  • 歯周病・虫歯の有無を確認

  • CTによる骨格の評価

  • 矯正医による噛み合わせ診断

持病がある場合は主治医との連携も必須です。

術後の経過と生活への影響

両顎手術のダウンタイムは次のように進行します。

  • 1週目:腫れと内出血がピーク、会話や食事が困難。流動食中心。

  • 2週目:腫れが軽減、話しやすくなり柔らかい食事が可能。

  • 1か月後:社会復帰可能、見た目の腫れも大部分が改善。

  • 3か月後:咬合が安定し、軽い運動も再開できる。

生活面では以下の影響もあります。

  • 食事制限による体重減少

  • 発音の不自由さ

  • 長期矯正に伴う日常の負担

社会的背景

社会人の患者さんは1か月程度の休職を想定し、学生は長期休暇を利用して計画するケースが一般的です。家族や職場の理解を得ることが、円滑な治療につながります。

他施術との比較と組み合わせ

両顎手術は骨格改善が可能な唯一の方法ですが、他の美容施術と比較・併用されることも多いです。

  • ヒアルロン酸注入:輪郭の一時的改善は可能だが、骨格や咬合の根本改善はできない

  • 糸リフトやHIFU:たるみ改善には有効だが、噛み合わせ改善はできない

  • フェイスリフト:皮膚のたるみを改善できるが、骨格を変えることは不可能

実際には、両顎手術+リフトアップ治療の組み合わせで、より自然な仕上がりを目指すケースもあります。

長期的な影響と再手術の可能性

両顎手術は一度で大きな改善効果を得られますが、長期的には次のような課題もあります。

  • 加齢に伴うフェイスラインの緩みは避けられない

  • ごくまれに咬合が不安定となり再手術を検討することがある

  • 歯の喪失や歯周病が安定性を損なう要因となる

経験上、40代で骨切りを行った患者さんから、治療後にフェイスラインのたるみ相談を受けました。その際は糸リフトを追加し、見た目を改善しました。骨格改善は強力ですが、加齢変化への対応は別途必要です。

また、治療部位応じてたるみがでる部位も異なるため、詳しくは動画を参考にしてください。

両顎手術の適切なタイミング

結論として「両顎手術の正解の年齢」は存在しません。大切なのは次の3点です。

  • 健康状態に問題がない

  • 矯正や麻酔に耐えられる

  • 「今やりたい」という意思がある

本人の希望と医学的条件が一致したときが、最良のタイミングです。

手術をうけたいと思ったタイミングで、当院のカウンセリングにお越しいただけたら嬉しいです。

よくある質問

Q. 両顎手術は50代でも可能ですか?
A. 健康状態に問題がなければ可能です。ただし矯正が難しいケースもあります。カウンセリングで既往歴や内服薬があればお伝えください。

Q. 若いうちに受けるメリットは?
A. 回復が早く、歯肉の追従性が良いためブラックトライアングルが起こりにくいです。

Q. 術後にたるみは出ますか?
A. 30代後半以降では出やすく、必要に応じてリフトや注入治療を併用します。

Q. 何歳から手術できますか?
A. 骨格成長が終わるのは女性は17歳前後、男性は18~20歳以降が目安です。個人差があるので、医師にご相談ください。

Q. 再手術の可能性はありますか?
A. ごくまれに咬合が安定せず、再手術を検討するケースがあります。

Q. 費用はどのくらいですか?
A. 美容目的では200〜300万円前後が一般的です。

Q. 他施術で代用できますか?
A. 咬合と骨格を同時に改善できるのは両顎手術だけです。

 

監修者情報

宮﨑 邦夫

リノクリニック東銀座 院長

【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員

消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。

監修日:2025.09.23

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