院長コラム
ゴボ口の原因と治し方|骨切りで改善した症例解説
ゴボ口とは、上下の歯列や顎の骨が前に出ており、口元全体が突出して見える状態のことを指します。
横顔の口もとが“もっこり”して見えたり、口が閉じにくい、笑うと歯茎が目立つなどの症状があり、見た目と機能の両面に悩みを抱えてご相談をいただきます。
今回は、実際に骨切り手術+オトガイ形成でごぼ口を改善した症例をもとに、原因や治療法、手術後の経過、治療法の選び方までを解説します。
目次
ゴボ口の見た目と特徴
ゴボ口の代表的な特徴は、横顔で口元が鼻や顎よりも前に出ているというバランスの悪さです。
その影響で以下のような外見的な悩みが生じやすくなります:
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口を閉じると唇に力が入り、顎に梅干しジワができる
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笑うと上の歯茎が大きく見える(ガミースマイル)
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正面から見ても、下顔面のもっこり感が目立つ
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唇が前に押し出されたような印象を与える
こうした特徴は、外見だけでなく機能面(発音・呼吸・咀嚼)にも影響することがあります。
ゴボ口の原因とは?
骨格による影響が大きい
上下の顎の骨(上顎・下顎)が前方に突出している「上下顎前突」の状態では、骨格レベルで口元全体が前に押し出されます。
また、顎先(オトガイ)が後退している場合には、相対的に口元がさらに前に見えるという視覚的錯覚も加わります。
歯列の前突によるもの
歯が骨に対して前方に傾いて生えていると、唇や口元が前に出て見えやすくなります。
特に前歯が前方傾斜している場合、噛み合わせの不安定さや見た目の歯列不正も起こしやすいです。
表情筋の影響もある
口を閉じるために口輪筋に力が入りすぎている場合、常に唇に緊張がかかっており、不自然な口元の印象や顎のシワにつながります。
ゴボ口の治療方法
ごぼ口の治療には、原因や程度によっていくつかの選択肢があります。
歯列矯正での改善
前歯の傾斜が主な原因であれば、歯列矯正単独での改善が可能です。
特に骨格に大きな問題がない軽度〜中等度の症例では、非外科的なアプローチで十分な変化が期待できます。
ただし、骨格に原因がある場合は矯正だけでは根本改善が困難です。
ヒアルロン酸注入による修正
顎先が小さい・後退している場合、ヒアルロン酸注入で顎先を前方に出すことで、口元とのバランスを一時的に整えることも可能です。
ただし、これはあくまでも根本的な治療ではありません。
骨切り手術+オトガイ形成
上下顎の骨を移動させる「ルフォーⅠ型+SSRO(下顎枝矢状分割術)」により、骨格から前突感を解消できます。
さらに、オトガイ(顎先)を前方に出すことで、シャープで立体的な輪郭を形成できます。
この方法は根本治療であり、再発リスクが非常に低いのが特徴です。
骨切り手術で治療した症例紹介
術前の状態
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横顔や斜めから見て口元が大きく突出
- 顎がやや後退しているため、顎下がやや短い(基準が指が3本入る長さ)
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下唇〜顎先のくびれが消失し、下顔面がもっこり
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笑うと上の歯茎が見えるガミースマイル状態
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インサイザーショー(上前歯の見え具合)は6mm超
これらの特徴により、自然な口元の閉鎖が困難で、表情筋の緊張も強く出ている状態でした。
実施した手術の内容
今回の症例では、サージェリーファースト(先行手術)方式を選択。
事前にCTとシミュレーションソフト(Dolphin)を用いて骨の移動計画を立て、以下の手術を実施:
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上下顎前方をそれぞれ約3mm短縮
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咬合平面を約15度調整
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オトガイ形成により顎先を4mm前方へ移動
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噛み合わせは術後に矯正で調整(連携歯科医担当)
術後1ヶ月の変化
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横顔のラインがスッキリし、口元のもっこり感が改善
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下唇から顎先への自然なくびれが復活
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ガミースマイルが軽減し、笑顔の印象がナチュラルに
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インサイザーショーは約3mm弱に短縮
骨切り後の歯科矯正について
この患者様は、骨切り手術後に歯列矯正を開始しています。
なぜなら、骨切りでたとえ数ミリの移動でも、上下の噛み合わせがずれてしまうため、術後の歯列矯正は必須となるケースが多いからです。
保険診療で行う場合の流れ
保険適用で治療する場合は、原則として以下の順序で治療が行われます。
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歯列矯正(術前矯正)
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外科手術(骨切り)
この方法では、術前の矯正期間が長期化しやすく、患者様によっては歯列矯正だけで3〜5年もの治療期間が必要になることもあります。
当院が採用している「サージェリーファースト」とは?
当院では、サージェリーファースト(Surgery First)法を導入しています。これは、手術を先に行い、その後に歯列矯正をスタートする治療法です。
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最初に骨格を整えることで、術後すぐに見た目が改善される
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歯列矯正は、骨格が正しい位置に整ったあとに行うため、歯の動きが早く、治療期間も半年~1年程度で完了する人が多く、治療期間を短縮できる
なお、この方法は保険適用外(自由診療)となりますが、全体の治療期間を大幅に短縮できるという大きなメリットがあります。
術後経過とリハビリについて
術後1週間は腫れや痛みにより食事制限がありますが、約2〜3週で徐々に食事再開をしました。
この患者様は術後20日目から刻み食を開始し、術後1ヶ月には指3本分の開口が可能な状態にまで回復しました。術後矯正は1ヶ月目からスタートし、順調に進行しました。
口ゴボ手術後は鼻整形が必要?
口元が引っ込むと、相対的に鼻が上を向いて見えることがあります。
この患者さんの症例では、鼻の角度が自然だったため違和感は出ませんでしたが、ご希望があれば必要に応じて鼻の手術をすることも可能です。
比較項目 | 骨切り手術+オトガイ形成 | 歯列矯正 | 注入治療(ヒアルロン酸・ボトックス) |
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適応 | 骨格性のごぼ口・中〜重度 | 歯の傾きが主因の軽度ケース | 軽度の印象改善に適応 |
効果の持続 | 永久的(骨格を再構成) | 長期的(保定装置必要) | 一時的(約6ヶ月〜1年) |
ダウンタイム | 約2〜4週間(腫れ・制限あり) | 基本なし | ほぼなし(当日のみ軽度な腫れ) |
保険適用 | 顎変形症の診断等で可 | 咬合異常で可能 | 不可(自由診療) |
メリット | 根本改善・輪郭の大幅な変化 | 非侵襲的・自然な矯正 | 即効性・手軽に変化が可能 |
デメリット | 費用・手術リスク・回復期間 | 骨格原因には不十分 | 持続が短く、繰り返しが必要 |
よくある質問(FAQ)
Q. ごぼ口は矯正だけで治りますか?
A. 骨格の前突がなければ可能ですが、根本的な治療が必要な場合は骨切り手術が適しています。
Q. サージェリーファーストとは何ですか?
A. 先に手術を行い、その後に矯正治療を進める方法です。治療期間が短縮され、見た目も早期に改善されます。日本では、自費診療となっています。
Q. ゴボ口を治すことで、鼻の見え方も変わるようであれば鼻の整形も一緒にした方がいいですか?
A. ご希望とバランスによります。鼻が上向きに見える場合、術後に検討する方もいます。
監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2025.08.08