院長ブログ
骨切り後のプレート除去
骨切り手術を受けた患者様から、 「手術でいれたプレートは将来的に今後取り除く必要がありますか?」というご質問をいただくことがあります。この記事では、輪郭形成などで使用される術後のプレート(チタン製)について、その役割や安全性、プレート除去が必要なケース、除去が必要な際はいつ抜けばいいか、再手術の判断基準について、わかりやすく解説していきます。
チタン製プレートの安全性
プレートの素材と体への影響
骨切り手術では、骨を正しい位置に固定するために、チタン製のプレートとスクリューが使用されます。
エラを切った際は、プレート固定が不要ですが、頬骨骨切り術やオトガイ形成、ルフォー1骨切り術やBSSO(下顎枝矢状分割骨切り術‗Bilateral Sagittal Split Osteotomy)など骨を移動させる手術に関してはチタンプレートが必要になります。一部ワイヤーで固定したり吸収性プレートで固定する方法もありますが、移動が複雑な手術の場合はチタンプレートを使用するのが基本です。
このチタンは、整形外科・美容外科・矯正歯科領域でも広く使用されており、非常に人体に親和性が高い金属素材です。
つまり、アレルギーや拒絶反応などを起こしにくく、長期間体内に留まっても安全性が高いという特徴があります。
「体内に金属があるのは不安…」という声もありますが、実際にはチタンプレートが原因で健康被害が出ることはごく稀です。
骨切り整形とプレート固定
骨がくっつくまでの大切な“固定役”
顎変形症や受け口、咬合異常の治療で行われる骨切り手術(ルフォーⅠ型手術、下顎枝矢状分割術〈BSSO〉、オトガイ形成など)では、
上下の顎の骨を適切な位置へ移動させ、プレートとスクリューでしっかりと固定します。
顔面の骨は血流が豊富で、術後2〜3週間で仮固定が得られ、約8週間で骨癒合が完了します。
この間は強い咀嚼や外部からの衝撃に注意が必要で、プレートは骨の安定化を担う重要な役割を果たします。
骨切り後は除去する?
原則として「除去しなくても問題なし」
骨がしっかりと癒合したあとは、チタンプレートはそのまま体内に残していても問題ありません。
「異物を体に残したくない」と除去を希望される方もいらっしゃいますが、
多くのケースではそのままで支障がなく、除去手術(抜釘術)をするメリットよりもリスクや入院などの負担が大きいという考え方もあります。
除去には再度の切開や麻酔、数日間の経過観察が必要で、治療全体の時間や回復期間も延びる可能性があります。
実際に除去を希望される患者様は、年齢にかかわらず全体の数%程度にとどまっています。ですが、近年異物は取っておきたいと、プレート抜去まで考えて骨切りを受けられる方が増えてきました。
除去のベストな時期
希望者は100人に数人、術後半年以降が目安
除去を検討する場合は、はやくて術後半年、待てる場合は9か月~1年が目安となります。
なぜ術後半年〜1年での除去が推奨されるのかというと、チタンプレートは生体親和性が高く、時間の経過とともにその表面に骨が形成されてしまうことがあるためです。
そうなると、プレートが骨の中に埋もれてしまい、抜釘の際には骨を一部削る、または骨を削る特殊ゅな道具の必要が出てくるため、手術にかかる時間や体への負担が大きくなります。
とはいえ、2〜3年経過したからといって除去が不可能になるわけではありません。
その場合も、プレートの上に形成された骨を削りながら慎重に取り除くことが可能です。
除去手術は、手術範囲が狭く腫れや痛みも比較的軽度ではありますが、「再手術である」という点は理解が必要です。しかし、なるべく負担少なく抜去できるよう、チームが一丸となって治療にあたっております。
また、美容外科的な観点から輪郭や口元の違和感を気にされる方が除去を希望されることもあります。
心理的な不安が強い場合は、担当医師との相談を通じて再手術の適否を慎重に判断していきましょう。
また、美容皮膚科の治療を受けたいという理由でプレート除去を希望される方もいらっしゃいます。たとえば、お顔の医療脱毛やハイフ(HIFU)など一部の美容医療では、金属プレートがあると施術を断られることがあります。
当院ではハイフを行うことが可能ですが、他院では金属が入っているという理由で施術を受けられないケースも見受けられます。
骨切り後でもハイフや医療脱毛を定期的に受けたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
感染後は除去が基本?
プレート感染の兆候と対応方法
では、プレート除去が必要な場合はどんな時でしょうか。
医学的にプレートの除去が必要となる代表的なケースがあります。
それが、「プレート感染」です。
これはプレートやスクリューに細菌が付着し、炎症を起こす状態です。
次のような症状が見られる場合は注意が必要です:
- 術後3〜4週間以上、腫れや痛みが続く
- 傷口にジュクジュクした滲出液がある
- 押すと痛みが強い
これらの症状がある場合、自然治癒は困難であり、感染源であるプレートの除去が必要です。
感染が疑われる場合は、できるだけ早く再診し、適切な処置を受けることが大切です
感染がなければ除去不要?
骨切り手術で使われるチタン製プレートは非常に安全性が高く、原則として除去の必要はありません。
ただし、感染症などの例外や、患者様ご自身の不安が強い場合には、医師との相談を通じて判断しましょう。
当院では、形成外科・矯正歯科の連携体制のもと、CTなどの画像診断を活用し、
術前から術後まで一貫して丁寧にサポートしています。
プレート除去の可否やタイミング、入院の有無や期間、回復にかかる日数などについても、個別に最適なご提案を行っています。
不安や疑問があれば、まずはご相談ください
骨切り手術は、顔面のバランスや咬合の改善、審美的な印象の変化にもつながる大きな治療です。
だからこそ、正確な情報をもとに、安心して手術に臨んでいただけることが何より大切だと私たちは考えています。
当院院長をはじめ、経験豊富な専門ドクターが、あなたの「大丈夫かな?」という不安に誠実にお応えし、最良の結果へと導けるよう全力でサポートいたします。
「プレートは取った方がいい?」「この違和感は大丈夫?」
そんな疑問があれば、ぜひ一度ご相談ください。
監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2025.07.10