院長コラム
両顎手術1ヶ月のダウンタイムがやばい|痛み・腫れ・食事としびれの真実
目次
両顎手術1ヶ月のダウンタイム経過
リノクリニックでは、これまでに多くの両顎手術の患者さんを診てきました。
その経験から言えるのは、術後1ヶ月のダウンタイムが最も過酷な時期の一つだということです。
「痛み」「腫れ」「食事制限」「しびれ」など、身体的にも精神的にも大きな負担がかかるフェーズです。
両顎手術をうけたある患者さんはこう振り返ります。
「人生で一番痛かった。でも1ヶ月を越える頃には“痛さ”を忘れていました。」
実際には、1日目〜1週間目が最高潮の痛み、2週目にはムズムズ系、3〜4週目で痛みが和らぎはじめ、しびれや違和感に移行していくという流れが多く見られます。
この “やばい” と感じる感覚は、決して異常ではなく、むしろ回復のプロセスの一部と捉えるべきものです。
今回は、両顎手術(上下顎移動術)を受けた患者さんに取材し、実際にどのようなダウンタイムの経過をたどったのか、そして「どんな準備やアイテムが役に立ったのか」についてお話を伺いました。
術後1ヶ月という時期は、痛みや腫れが残り、しびれや食事の不自由さもある一方で、
確実に回復へ向かっていく大切なフェーズでもあります。
私たちがこれまで診てきた多くの患者さんの経過とあわせて、この「やばい」と言われる1ヶ月間をどのように乗り越えたのか、臨床的な視点から解説していきます。
両顎手術の腫れと顔の変化
両顎手術後に最も目立つのが「腫れ」です。
術直後は顔がパンパンに膨らみ、鏡を見ることすら辛い期間があります。
当院でも、手術翌日・3日目・1週間後の腫れの写真比較を重視してお伝えしています。
ガミースマイルがコンプレックスだった患者さんの声として、次のような実感がよく聞かれます。
「笑うと歯茎(ハム)が見えていたのが、1ヶ月で出なくなった感じがする。中顔面が短くなったように思います」
臨床的には、1ヶ月時点ではまだ浮腫(むくみ)が残る時期です。
多くの場合、3ヶ月目で大きく腫れが引き、半年以降で輪郭が徐々に締まっていく傾向があります。
ですから、この1ヶ月で「完成形」を期待するのは時期尚早といえます。
両顎手術の食事制限と栄養管理
この期間、最も苦痛を感じやすいのが「食べられないこと」です。
術後1〜2日は口がほとんど開かず、ウィダー系ゼリーすら入らない方も多くいらっしゃいます。
ストローを使って吸うことも痛く、口を開けないとできない動作が制限されます。
こうした中で、患者さんが実践された工夫にはこうしたものがあります:
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スティック型プロテインを少量ずつ溶かして補給
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豆腐・濃縮スープ・流動食をゆっくり流し込む
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高カロリー・高タンパクのゼリー飲料
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食べられるようになってから、軟らかいものから徐々に戻す
私たちも、術後管理時にはこれらの栄養確保を強く指導しています。
特に骨癒合や創傷治癒期にはタンパク質とエネルギーを十分に補うことが、治癒スピードを左右します。
硬い食材(固形物)は通常3ヶ月以降に段階的に再導入するように調整することが多いです。
両顎手術後のしびれと滑舌について
両顎手術では、下唇〜顎先の神経(オトガイ神経など)が一時的に影響を受け、しびれ・麻痺感覚が出ることがあります。
実際、患者さんの中には「下唇が麻酔後のようにしびれている」「触るとぞわっとする感覚がある」という表現をされる方も少なくありません。
私たちの臨床経験と文献を組み合わせて言えることは、
触って“しびれる”感覚が残っている=神経が再生を始めているサイン であるということです。
感覚がまったくないよりは、雑音のある刺激に反応する方が改善の見込みがあります。
滑舌についても、最初は発音が抜けたり音がこもることがありますが、2〜4週目にかけて徐々に改善していきます。
当院でも、1ヶ月程度で「話せる感覚が戻ってきた」と仰る患者さんが多くいらっしゃいます。
両顎手術とメンタルケアの重要性
外見的な症状だけでなく、精神的ストレスもこの1ヶ月には非常に大きくかかります。
痛み・腫れ・食事制限の中で、鏡を見るたびに「どうなってるんだろう」と不安になる方も多い。
患者さんからは次のような言葉を聞きます。
「部屋に閉じこもっていると、気持ちが沈んでしまう。 でも友人と外に出ると気が紛れた」
「歩いたり話したりすることが、意外にも気力の支えになった」
そのため、痛みをやり過ごすだけでなく、毎日少しでも外出・会話・軽い運動を取り入れることをおすすめしています。
体を動かし、血流を促すことは回復を後押しします。
両顎手術の回復を早める工夫
当クリニックでは、次のような視点を大切にして術後ケアを提供しています:
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冷却とアイシング管理:腫れを抑えるため、術直後から冷却を適切に行います
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段階的な開口訓練:無理なく少しずつ口を開ける練習を導入
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神経リハビリテーションの支援:触覚や知覚の回復をサポートするリハビリを併用
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栄養指導と補助食品活用:サポート栄養を活用してタンパク質補給を確保
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メンタルサポート:不安を軽減する相談体制やフォローアップ面談
これらを総合的に実践することで、1ヶ月という厳しい期間を、できるだけ安全で乗り切れるよう導いています。
両顎手術の回復期間と目安
次のような時間軸を目安としています:
期間 | 回復の状態 |
---|---|
1週間 | 激痛のピーク。腫れ・内出血も目立つ。 |
2〜3週間 | 痛みが和らぎ始め、ムズムズ感や違和感に変化。食事量が徐々に増える。 |
3ヶ月 | 腫れが大部分引き、顔の輪郭が安定してくる。 |
6ヶ月以降 | 顔つき・ラインの定着期。最終的な“形”に近づく。 |
ただし、このスケジュールはあくまで「一般的な目安」であり、個人差が出る点にご注意ください。
※両顎手術後の注意点とまとめ※
本コラムの内容は、実際に両顎手術を受けた患者さんへの取材をもとに、私たちのこれまでの臨床経験および複数の症例データを踏まえて構成しています。ただし、術式・年齢・骨格・体質・既存の矯正治療の有無などによって、実際の経過には大きな個人差があります。最終的な判断や治療計画については、必ず担当医とのカウンセリングでご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 両顎手術のダウンタイムはどれくらい?
A1. 腫れのピークは1週間、3ヶ月で大部分が落ち着き、6ヶ月以降に輪郭安定化が見られるケースが多いです。
Q2. 食事はいつから普通にできる?
A2. 2〜3週目から軟らかいものから徐々に。完全に硬いものは3ヶ月以降が目安。
Q3. しびれや麻痺はいつ治る?
A3. 個人差はありますが、3〜6ヶ月程度かけて改善することが多く、触覚が戻るのは回復過程の一部です。
Q4. 痛みが強すぎるときは?
A4. 医師処方の鎮痛薬を適切に使用し、冷却・安静を組み合わせて対処します。不安があれば早めに相談ください。
Q5. 完成形はいつごろ見える?
A5. 顔の輪郭が落ち着くのは通常3〜6ヶ月、最終形態として定着するのは6ヶ月以降と考えられます。
詳しくはYouTubeでご覧ください
両顎手術1ヶ月のダウンタイム経過や表情の変化を、動画でわかりやすく紹介しています。
本記事は、実際に両顎手術を受けた患者さんへの取材と、リノクリニックの臨床経験に基づいて構成しています。
術式や年齢、体質により経過には個人差があります。詳しくはカウンセリングでご相談ください。
監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2025.10.17