院長コラム

受け口を整える骨切り手術の種類とダウンタイム|Eラインを美しくするポイント

受け口を整える骨切り手術の種類とダウンタイムについて解説します。

― Eラインを美しく整えるために ―

「受け口(反対咬合)」は、横顔の印象やフェイスラインのバランスに大きく影響するお悩みのひとつです。
下あごが前に出ていることで、口元が突出して見えたり、Eライン(鼻先とあご先を結んだ理想的な横顔のライン)が崩れて見えたりします。
この状態は見た目だけでなく、咬み合わせや発音にも影響することがあり、長年コンプレックスとして抱える方も少なくありません。

この受け口を根本から改善するために行われるのが、骨切り手術(顎矯正手術)です。
歯列矯正では動かせない「骨格そのもの」を移動させることで、咬合・表情・フェイスラインの全てを理想的に整えることができます。
今回は、受け口の原因から手術の種類、ダウンタイム、そして美しいEラインをつくるためのポイントについて詳しく解説します。

 

受け口が起こる主な原因

受け口にはいくつかの原因があります。
最も多いのは、下あご(下顎骨)の過成長によるものです。
下あご全体が過度に前方に発達していると、歯列ごと前に押し出され、いわゆる「しゃくれた」ような横顔になります。
咬み合わせもズレやすく、下の前歯が上の前歯より前に出る状態が典型です。

一方で、上あご(上顎骨)の発達不足が原因となるケースもあります。
上あごが後ろに引っ込んでいることで、下あごが相対的に出て見えてしまいます。
このタイプでは中顔面(鼻下から上唇にかけての領域)が平坦に見え、顔の中心が沈んだような印象になります。

また、骨格には問題がなく、歯の傾きだけで反対咬合に見えるケースもあります。
このような場合は歯列矯正のみで改善できることもありますが、骨格のズレがある場合は根本的な解決にならないことが多く、骨切り手術が必要になります。

 

骨切り手術の種類と特徴

受け口を整える骨切り手術には、主に三つの方法があります。
症状の程度や目的によって、単独で行う場合と、複数の術式を組み合わせる場合があります。

① 下顎枝矢状分割術(BSSO:Bilateral Sagittal Split Osteotomy)

最も一般的な受け口の手術です。
下あごの奥歯の後方にある「下顎枝」を縦に切り、下顎骨全体を後方へ移動させて固定します。
下顎関節の位置を保ちながら動かせるため、咬み合わせの安定性が高く、自然な下顎後退が可能です。

突出した下あごを後方へ移動することで、口元の突出感が軽減し、Eラインが整います。
また、骨格的なズレによって起きていた噛み合わせの不調や顎関節への負担も改善することができます。

ただし、下顎単独での移動では、上顎骨との位置関係に制約があるため、顔全体の正中のずれや傾き、口角の高さの非対称などが残る場合があります。
そのため、より自然で美しいバランスを求める場合には、次に紹介する上顎骨の移動を組み合わせた「両顎手術(上下顎移動術)」を選択することをおすすめします。

 

② 上顎骨前方移動術(Le Fort I型骨切り術)

上あごの位置が後退しているタイプの受け口では、上顎骨を前方に移動させることで改善します。
上顎骨を切離し、上顎全体をミリ単位で前方へ移動して固定することで、鼻下から口元のバランスを整えることができます。

この手術を行うと、中顔面に立体感が生まれ、若々しく柔らかい印象になります。
また、上唇の位置が自然に整うことで、Eラインも理想的なラインに近づきます。

上顎骨を動かす際は、鼻の形や角度がわずかに変化することがありますが、これは多くの場合、横顔の調和をとる上でむしろ有利に働くことが多いです。
そして何より、この上顎骨の移動を下顎骨の後方移動と組み合わせる(両顎手術)ことで、より高次元のバランス修正が可能になります。

両顎を同時に動かすことで、上下の正中を正確に合わせることができ、顔の左右差や傾きを調整することができます。
さらに、口角の高さの左右差や、笑顔時の歪み、口元の開閉バランスも改善されます。
骨格レベルでの「顔のゆがみ」や「非対称」を解消できる点が、両顎手術の最大の利点です。

美容的な観点から見ても、両顎手術はEラインだけでなく、中顔面の立体感や頬の位置、唇と顎のラインをトータルでデザインできるため、より自然で洗練された横顔をつくることができます。
単一の顎だけを動かすよりも、顔全体のバランスを整えることを目的に、上下顎を同時に移動させる方法が理想的と言えます。

 

③ セットバック(下顎前方部骨切り術)

セットバックは、下あごの前方部のみを切って後方に移動させる手術です。
あご全体を動かすのではなく、前歯からオトガイにかけての部分を後方へスライドさせることで、下唇やオトガイの突出を改善します。

咬み合わせに大きな影響を与えず、下顔面の印象を整えることができるため、美容的な目的で選ばれることも多い術式です。
ダウンタイムも比較的短く、日常生活への復帰が早い点も特徴です。

ただし、この手術では骨格全体の位置を変えることはできないため、咬合のズレや骨格的な非対称を伴う重度の受け口には適していません。
そのような場合は、やはり上下顎を動かす両顎手術によって、正中・咬合・Eラインを総合的に整える方が確実です。

 

手術後の経過とダウンタイム

骨切り手術は骨格そのものを移動させるため、一定期間のダウンタイムが必要です。
手術直後から数日は、腫れや違和感、圧迫感を感じますが、これは時間とともに落ち着きます。

術後3日ほどは顔全体が腫れ、冷却と安静が大切な時期です。
1〜2週間で腫れのピークを過ぎ、内出血も薄れていきます。
この間は流動食から軟食に移行し、3〜4週間で表情も徐々に自然に戻ります。

1〜3か月を過ぎる頃には、しびれが残ることがあっても、見た目の腫れはほとんど気にならなくなります。
そして6か月〜1年で骨が完全に安定し、最終的なフェイスラインが完成します。

社会復帰の目安は2〜3週間後。
デスクワークであれば早めに復帰できる方も多く、個人差がありますが、1か月程度で日常生活に戻る方がほとんどです。

 

美しいEラインをつくるためのポイント

Eライン(エステティックライン)とは、鼻先とあご先を結んだ理想のラインで、唇が軽くその内側に触れる位置が最も美しいとされています。
骨切り手術で受け口を改善する際には、このEラインを意識して設計することで、より自然で上品な横顔を作ることが可能です。

美しいEラインを形成するためには、まず鼻とあごの距離感のバランスが重要です。
あごを引きすぎると鼻が強調されて見えることがあり、逆に前方に出しすぎると口元が重く見えます。
また、唇の厚みや筋肉の張りによっても理想のラインは微妙に変化します。

さらに、頬骨・オトガイ・下顎角のラインが滑らかに繋がることが、横顔の完成度を左右します。
そのため、骨格だけでなく、筋肉や皮膚の厚み、表情の動きまで考慮した総合的なデザインが求められます。
このように、Eラインは単なる線ではなく、顔全体の立体構造の調和によって生まれる造形美なのです。

 

手術のリスクと注意点

骨切り手術は高い効果を得られる反面、いくつかのリスクも伴います。
代表的なものには、下唇やオトガイ部の一時的なしびれ、感染、腫れの長期化、咬合の微調整などがあります。
また、チタンプレートの固定に違和感を感じる場合には、数か月後に除去することも可能です。

これらのリスクを最小限に抑えるためには、3DCTやシミュレーションソフトを用いた精密な術前分析が不可欠です。
特に両顎手術では、上下の骨格バランスをミリ単位で設計することで、術後の安定性と審美性の両立が可能になります。

 

まとめ

受け口を整える骨切り手術は、単に見た目を変えるためのものではなく、
咬み合わせ・発音・表情筋の動き・フェイスラインの調和をトータルで改善する根本的な治療です。

下顎枝矢状分割術では下あごの前方位置を整え、上顎骨前方移動術では中顔面の立体感とバランスを整えます。
さらに、両顎手術では正中や傾き、口角の位置まで含めた“顔全体の黄金比”を再構築することができます。
その結果、Eラインが自然に整い、どの角度から見ても美しい横顔を実現できます。

ダウンタイムは必要ですが、手術によって得られる変化は一生ものです。
「Eラインを整えたい」「横顔を美しく見せたい」「自然なバランスの取れた口元にしたい」
そう感じている方は、まず専門医による精密な3D分析カウンセリングを受けてみてください。
理想の横顔は、骨格の正確な診断と、緻密なデザイン計画から始まります。

 

よくある質問(Q&A)

Q1.下あごだけの手術と、両顎手術では何が違うのですか?

A:下あごのみを動かす「単顎手術」では、受け口の改善は可能ですが、顔全体のバランスや左右差、口角の高さまで整えるには限界があります。

一方、上あごと下あごを同時に移動させる「両顎手術」では、正中(顔の中心軸)のズレや傾き、咬み合わせの高さ、口角の位置まで精密にコントロールできます。

また、中顔面に立体感を出しながらEラインを整えることができるため、機能と審美の両面でより完成度の高い結果が得られます。

骨格全体をデザインすることで、自然でバランスのとれた横顔を実現できる点が両顎手術の最大の特徴です。

 

Q2.手術後の腫れやダウンタイムはどのくらい続きますか?

A:手術直後から3日間は腫れのピークで、顔全体がむくんだような状態になります。

1〜2週間で腫れの大部分が引き、内出血も目立たなくなります。

3〜4週間経つと表情も自然になり、マスクをすれば社会復帰できる方がほとんどです。

完全に骨が安定し、フェイスラインが整うまでには6か月〜1年ほどかかりますが、日常生活には1か月前後で支障なく戻ることができます。

当院では、術後の腫れや不快感を最小限に抑えるため、冷却管理・内服コントロール・低侵襲な固定法を採用しています。

 

Q3.Eラインはどのようにデザインされるのですか?

A:Eライン(エステティックライン)は、鼻先とあご先を結ぶ理想の横顔の基準線です。

手術では、CTデータと3Dシミュレーションを用いて、鼻・唇・あごの位置関係をミリ単位で設計します。

唇の厚みや筋肉の張り、鼻の高さなども考慮し、単に「引っ込める」のではなく、顔全体の立体構成の中で最も自然に見える位置に調整します。

必要に応じて、オトガイ形成や鼻・唇の微調整を組み合わせることで、どの角度から見ても美しい横顔をデザインすることが可能です。

監修者情報

宮﨑 邦夫

リノクリニック東銀座 院長

【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員

消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。

監修日:2025.11.04

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