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小陰唇のできもの、原因と治し方|病院に行くべきか?

小陰唇に、普段とは違うできものを見つけてしまい、不安な気持ちでこの記事にたどり着いた方もいらっしゃるかもしれません。
デリケートな部分の悩みは、誰かに相談しにくく、一人で抱え込んでしまいがちです。
しかし、できものには様々な原因があり、中には治療が必要なもの、早期発見が重要なものも含まれます。

この記事では、小陰唇にできるできものの様々な原因や考えられる病気、伴う可能性のある症状、そして放置することの危険性について詳しく解説します。
さらに、受診すべき診療科や、医療機関での検査・診断、主な治療法、日頃からできる予防策についてもご紹介します。

ご自身の症状に不安を感じたら、まずはこの記事を読んで知識を得てください。
そして、適切な対応をとるための第一歩として、ぜひ専門医への相談を検討してください。

小陰唇は、女性器の外側にある一対のひだ状の組織で、その内部には血管や神経が多く集まっています。
非常に敏感でデリケートな部分であり、様々な刺激や変化が起こりやすい場所でもあります。

小陰唇にできる「できもの」と一口に言っても、その形態は様々です。
ポツポツとした小さなもの、触ると硬いしこりのようなもの、痛みや痒みを伴うもの、膿を持つもの、イボのように隆起するものなど、多様な症状が現れる可能性があります。

これらの「できもの」の多くは炎症や感染による良性のものですが、中には性感染症や、稀に悪性腫瘍の可能性も含まれます。
そのため、見た目や症状だけで自己判断するのは非常に危険です。
原因を正確に特定し、適切な治療を行うためには、医療機関での診察が不可欠です。

目次

小陰唇のできもの、考えられる主な原因・病気

小陰唇にできものができる原因は多岐にわたります。
ここでは、比較的よく見られるものから、注意が必要なものまで、考えられる主な原因や病気について解説します。

毛嚢炎(もうのうえん)

毛嚢炎は、毛穴の奥にある毛根を包む組織(毛包や毛嚢)に細菌が感染して炎症を起こす病気です。
小陰唇を含むデリケートゾーンは、下着による摩擦やムレ、自己処理(脱毛、シェービング)などが原因で毛穴に負担がかかりやすく、細菌が侵入しやすい環境になりがちです。

症状: 赤い小さなポツポツとしたできものができ、触ると少し痛みや痒みを感じることがあります。
中心に白い膿点が見られることもあります。
ニキビと似ていますが、毛穴に一致してできるのが特徴です。
通常は自然に治ることも多いですが、数が増えたり大きくなったりする場合もあります。

原因: 主に黄色ブドウ球菌などの細菌感染によって起こります。
免疫力が低下している時や、皮膚に傷がある場合に発生しやすくなります。

治療: 軽度の場合は特別な治療を必要とせず自然治癒することもあります。
しかし、悪化を防ぐために抗菌薬の塗り薬が処方されるのが一般的です。
症状が重い場合や広範囲に及ぶ場合は、飲み薬が使用されることもあります。

せつ(おでき)

せつは、毛嚢炎がさらに進行し、毛包とその周囲の組織にまで炎症が広がった状態です。
毛嚢炎よりも深く、広範囲に感染が及んでいます。

症状: 赤く腫れ上がり、強い痛みを伴う硬いしこりのようなできものができます。
中心に膿がたまり、触ると熱感を感じることもあります。
進行すると、膿点が破れて膿が出ることがあります。

原因: 黄色ブドウ球菌などの細菌感染が原因です。
糖尿病などの基礎疾患がある方や、免疫力が低下している方、不衛生な状態が続いている方に起こりやすい傾向があります。

治療: 炎症を抑え、細菌を排除するために抗菌薬の飲み薬や塗り薬が処方されます。
膿がたまっている場合は、切開して膿を出す処置(切開排膿)が必要になることもあります。

バルトリン腺嚢胞(のうほう)・膿瘍(のうよう)

バルトリン腺は、膣の入り口付近にある分泌腺で、性交時に潤滑液を分泌する役割があります。
この腺の出口が詰まることで分泌液がたまり、腫れ上がったものがバルトリン腺嚢胞です。
この嚢胞に細菌が感染して炎症を起こし、膿がたまった状態がバルトリン腺膿瘍です。

症状:

  • バルトリン腺嚢胞: 小陰唇の付け根付近に、痛みのない、または軽度の痛みを伴う、弾力のある腫れができます。
    数mmから数cmの大きさになることがあります。
    痛みがない場合は、気づかないこともあります。
  • バルトリン腺膿瘍: 嚢胞に感染が起こると、急激に腫れと強い痛みを伴います。
    赤く腫れ上がり、熱感を感じることもあります。
    歩行や座位が困難になるほどの強い痛みが生じることがあります。

原因: バルトリン腺の出口の閉塞(炎症、外傷、先天的な異常など)や、細菌感染(大腸菌、ブドウ球菌、レンサ球菌、淋菌など)が原因となります。

治療:

  • バルトリン腺嚢胞: 痛みがなく小さい場合は治療せず経過観察となることが多いです。
    大きい場合や気になる場合は、内容物を排出する処置(穿刺や切開)が行われることがあります。
  • バルトリン腺膿瘍: 抗菌薬による治療に加え、膿を出すために切開して排膿する処置が必要不可欠です。
    再発を繰り返す場合は、バルトリン腺を摘出する手術が検討されることもあります。

尖圭コンジローマ(せんけいコンジローマ)

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって引き起こされる性感染症(STI)です。
潜伏期間が数週間から数ヶ月と比較的長いため、感染経路や時期を特定するのが難しい場合があります。

症状: 小陰唇やその周辺、膣の入り口、肛門の周囲などに、鶏冠(とさか)やカリフラワーのような形をした、表面がザラザラしたイボ状のできものができます。
色はピンク色や白色、褐色など様々です。
通常、痛みやかゆみは伴いませんが、大きくなったり擦れたりすると、痛みや出血、痒みが生じることもあります。

原因: 性行為によってHPV(主に低リスク型)に感染することで発症します。
タオルや下着の共有などでも感染する可能性は否定できませんが、性的接触が主な感染経路です。

治療: イボを削り取る、塗り薬(イミキモドなど)を使用する、液体窒素で凍結させる(冷凍凝固療法)、レーザーで焼灼する、手術で切除するなど、様々な治療法があります。
ウイルスそのものを排除する薬はないため、治療はあくまでイボを取り除くことが目的となります。
再発しやすい病気であるため、根気強い治療が必要になることがあります。

脂腺嚢腫(しせんのうしゅ)・粉瘤(アテローマ)

脂腺嚢腫や粉瘤は、皮膚の下にできる良性の腫瘍です。
毛穴の一部や皮脂腺が詰まることで、袋状の構造ができ、その中に本来排出されるはずの皮脂や角質などの老廃物がたまって大きくなっていきます。
小陰唇を含むデリケートゾーンは皮脂腺が比較的発達しているため、発生することがあります。

症状: 皮膚の下にできる、数mmから数cm程度のやわらかい、または少し硬いしこりとして触れることが多いです。
通常、痛みはありません。
中央部に黒い点(開口部)が見られることもあります。
感染を起こすと、赤く腫れ上がり、痛みや膿を伴うことがあります(炎症性粉瘤)。

原因: 毛穴や皮脂腺の出口が詰まることによって発生します。
体質的なものや、摩擦、外傷などが誘因となることがあります。

治療: 炎症を起こしていない小さいもので、特に症状がなければ治療せず経過観察となることもあります。
しかし、大きくなったり、見た目が気になったり、感染を繰り返す場合は、手術で袋ごと摘出するのが根治的な治療法です。
炎症を起こしている場合は、まず抗菌薬で炎症を抑えるか、切開して膿を出す処置を行い、炎症が落ち着いてから摘出術を行うのが一般的です。

ヘルペス

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって引き起こされる性感染症(STI)です。
一度感染するとウイルスは神経節に潜伏し、体の抵抗力が落ちた時などに再活性化して症状を繰り返すことがあります。

症状: 初感染の場合、性行為から数日後に小陰唇やその周辺に、赤みや痒み、違和感が生じ、その後、複数の小さな水ぶくれが集まってできます。
水ぶくれは破れて浅い潰瘍(びらんやただれ)となり、強い痛みを伴います。
股の付け根のリンパ節が腫れて痛むこともあります。
発熱や倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。
再発の場合は、症状が軽くなる傾向がありますが、ピリピリ、チクチクといった予兆を感じることがあります。

原因: 性行為によってHSV(主にHSV-2型、稀にHSV-1型)に感染することで発症します。
ウイルスの排出がなくても感染させる可能性があります。

治療: 抗ウイルス薬の飲み薬や塗り薬を使用して、ウイルスの増殖を抑え、症状を軽減させます。
治療によって症状は改善しますが、ウイルスを完全に体内から排除することはできません。
再発を繰り返す場合は、再発抑制療法として低用量の抗ウイルス薬を毎日服用することがあります。

伝染性軟属腫(みずいぼ)

伝染性軟属腫は、ポックスウイルスの感染によって引き起こされる皮膚の感染症です。
子供に多く見られますが、性行為によってデリケートゾーンに感染することもあります。

症状: 数mm程度の、表面がつるつるした、少し盛り上がったできものが多発します。
色は肌色やピンク色をしており、中央が少し凹んでいる(臍窩:さいか)のが特徴です。
痛みやかゆみはほとんどありませんが、掻き壊すと周囲に広がることがあります。

原因: ポックスウイルスに接触することで感染します。
タオルや衣類の共有でも感染する可能性はありますが、成人では性行為による感染が多いです。

治療: 自然に治ることもありますが、数ヶ月から数年かかる場合があります。
治療としては、専用のピンセットでつまみ取る(摘除)のが最も一般的です。
液体窒素で凍結させる、塗り薬を使用するなど方法もあります。

炎症性粉瘤

前述した粉瘤が細菌感染を起こし、炎症を伴った状態です。

症状: 粉瘤の部分が急に赤く腫れ上がり、強い痛みや熱感を伴います。
膿がたまり、破れて排出されることもあります。
放置すると周囲の組織に炎症が広がることもあります。

原因: 粉瘤の袋の中に細菌が侵入して増殖することによって起こります。
皮膚の常在菌が原因となることが多いですが、不衛生な状態や免疫力の低下などが誘因となります。

治療: 抗生物質の飲み薬や塗り薬で炎症を抑えます。
膿がたまっている場合は、切開して膿を出す処置(切開排膿)が必要になります。
炎症が落ち着いた後、再発を防ぐために粉瘤の袋ごと摘出する手術が検討されます。

フォアダイス(生理的なブツブツ)

フォアダイスは、小陰唇や口唇などにできる、生理的な(病気ではない)皮脂腺の増殖です。
誰にでも起こりうるもので、特に異常ではありません。

症状: 小陰唇の内側などに、白い、または黄色っぽい、1mm程度の小さなブツブツが多発します。
痛みやかゆみは全くなく、触るとザラザラした感触があります。

原因: 生理的な皮脂腺の発達によるものであり、特定の原因や病気ではありません。

治療: 病気ではないため、治療の必要はありません。
見た目が気になる場合は、レーザー治療などで除去することも可能ですが、保険適用外となることがほとんどです。

悪性腫瘍(外陰がんなど)

稀ではありますが、小陰唇にできるできものの中に悪性腫瘍(がん)が含まれる可能性もゼロではありません。
外陰がんは、外陰部(大陰唇、小陰唇、クリトリス、会陰など)に発生するがんです。

症状: 初期には、皮膚の色の変化、しこり、ただれ、かゆみ、出血などが現れることがあります。
これらは他の良性のできものと似ている場合もあるため、注意が必要です。
進行すると、痛みや潰瘍、しこりが大きくなるなどの症状が現れます。
治りにくいびらんや潰瘍、徐々に大きくなるしこり、出血しやすいできものなどには特に注意が必要です。

原因: 主にHPV感染(特に高リスク型)が関連しているとされています。
喫煙や慢性的な炎症、免疫抑制などもリスク要因となります。
高齢の女性に多く見られますが、若い世代にも発生する可能性があります。

治療: 早期発見が重要です。
治療の中心は手術による切除です。
病状によっては、放射線療法や化学療法が併用されることもあります。

主な原因・病気の比較表

病気 症状の特徴 原因 痛み・かゆみ 主な治療法
毛嚢炎 赤い小さなポツポツ、中心に膿点が見られることも 細菌感染 軽度あり 抗菌薬の塗り薬/飲み薬
せつ(おでき) 赤く腫れ、硬いしこり。膿がたまる。 細菌感染(毛嚢炎の悪化) 強い痛みあり 抗菌薬の飲み薬/塗り薬、切開排膿
バルトリン腺嚢胞 小陰唇付け根の弾力ある腫れ バルトリン腺出口の閉塞 痛みなし/軽度 経過観察、穿刺、切開
バルトリン腺膿瘍 小陰唇付け根の急な強い腫れと痛み、熱感 嚢胞の細菌感染 強い痛みあり 抗菌薬の飲み薬、切開排膿
尖圭コンジローマ 鶏冠/カリフラワー状のイボ、表面ザラザラ ヒトパピローマウイルス(HPV) 通常なし 塗り薬、冷凍凝固、レーザー、手術切除
脂腺嚢腫・粉瘤 皮膚下のしこり、中央に黒点が見られることも 皮脂腺/毛穴の詰まり 通常なし 経過観察、手術摘出(炎症時は抗菌薬、切開排膿も)
ヘルペス 水ぶくれが集まり潰瘍に。強い痛み 単純ヘルペスウイルス(HSV) 強い痛みあり 抗ウイルス薬の飲み薬/塗り薬
伝染性軟属腫 中央が凹んだ肌色/ピンクのツルツルした多発性できもの ポックスウイルス ほとんどなし 摘除、液体窒素、塗り薬
炎症性粉瘤 粉瘤の急な赤み、腫れ、強い痛み、熱感。膿 粉瘤の細菌感染 強い痛みあり 抗菌薬の飲み薬、切開排膿
フォアダイス 小陰唇内側の白い/黄色い小さな多発性ブツブツ 生理的な皮脂腺の発達 なし 治療不要(美容目的で除去可能な場合あり)
悪性腫瘍(外陰がん) 色の変化、しこり、ただれ、かゆみ、出血など HPV、喫煙、慢性炎症など(複合的) 様々(初期はなしの場合も) 手術、放射線療法、化学療法

小陰唇のできものに現れる様々な症状

できものの原因によって、現れる症状は異なります。
ご自身のできものがどのような症状を伴っているかを観察することは、原因を推測する上で役立ちますが、前述の通り自己判断は禁物です。

痛みを伴うできもの

痛みを伴うできものは、炎症や感染が関わっている可能性が高いです。

  • 強い痛み: バルトリン腺膿瘍、ヘルペス、せつ(おでき)、炎症性粉瘤などは、痛みが強い傾向があります。
    これは、組織が細菌などに感染し、炎症を起こしているためです。
  • 軽度の痛み/触ると痛い: 毛嚢炎や、感染を起こしかけている脂腺嚢腫などで見られます。

痛みの有無や程度は、炎症の度合いやできものの種類によって大きく異なります。

痛みのないできもの(しこり)

痛みがなくても、小陰唇にできものができることがあります。

  • バルトリン腺嚢胞: 感染していない状態では、痛みがなく、触るとプニプニとした弾力のあるしこりとして触れることが多いです。
  • 脂腺嚢腫・粉瘤: こちらも通常は痛みがなく、皮膚の下にできる硬さの異なるしこりとして触れます。
  • 尖圭コンジローマ: イボ状のできものですが、初期には痛みや痒みは伴いません。
  • 悪性腫瘍: 外陰がんの初期症状として、痛みのないしこりや硬結として現れることもあります。

痛みがなくても、気づかないうちに大きくなったり、数が増えたりする場合は、医療機関で相談することが重要です。

白いできもの・ぶつぶつ

白いできものやブツブツには、以下のようなものがあります。

  • 毛嚢炎: 中心に白い膿点が見られることがあります。
  • フォアダイス: 小陰唇内側に多発する、生理的な白い小さなブツブツです。
  • 伝染性軟属腫: 少し光沢のある白い、または肌色のブツブツで、中央が凹んでいるのが特徴です。
  • 尖圭コンジローマ: イボの色は様々ですが、白色に見えることもあります。

白いからといって、必ずしも特定の病気を示すわけではありませんが、症状を伴う場合は注意が必要です。

赤いできもの

赤いできものも、炎症や感染を示唆することが多いです。

  • 毛嚢炎、せつ(おでき)、バルトリン腺膿瘍、炎症性粉瘤: これらの細菌感染による炎症では、周囲の皮膚が赤く腫れ上がることが典型的な症状です。
  • ヘルペス: 水ぶくれができる前に、赤みや痒みが生じることがあります。
  • 悪性腫瘍: 初期に赤みやただれとして現れることがあります。

赤みと同時に、熱感や痛みを伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

かゆみを伴うできもの

できものと同時にかゆみがある場合も、いくつかの原因が考えられます。

  • 毛嚢炎: 炎症に伴って、軽度のかゆみを感じることがあります。
  • 尖圭コンジローマ: 大きくなったり擦れたりすると、かゆみが生じることがあります。
  • ヘルペス: 水ぶくれや潰瘍ができる前に、ピリピリ感やかゆみ、違和感などの前駆症状が現れることがあります。
  • その他の皮膚疾患: できもの自体ではなく、同時に別の原因(カンジダ膣炎、アレルギーなど)によるかゆみが生じている可能性も考えられます。

びらんやただれを伴うできもの

皮膚の表面が剥がれて、ただれたような状態(びらん、潰瘍)を伴うできものは、注意が必要です。

  • ヘルペス: 破れた水ぶくれが浅い潰瘍となり、強い痛みを伴うことが特徴です。
  • 悪性腫瘍: 外陰がんの一部は、初期に治りにくいびらんや潰瘍として現れることがあります。

びらんやただれは、感染や悪性腫瘍の可能性も考えられるため、必ず医療機関で診察を受けてください。

イボ状のできもの

隆起して表面がザラザラしたり、ブツブツしていたりするイボ状のできものです。

  • 尖圭コンジローマ: 鶏冠やカリフラワーのような典型的なイボ状です。
  • 伝染性軟属腫: ドーム状で中央が凹んだ、ツルツルした小さなブツブツです。

イボ状のできものの中には性感染症である尖圭コンジローマが含まれるため、自己判断せず、医療機関で診断を受けることが重要です。

小陰唇のできもの、放置は危険?

小陰唇にできものができた際、「自然に治るだろう」「様子を見よう」と放置してしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、デリケートな部分のできものを放置することには、いくつかのリスクが伴います。

放置すると起こりうるリスク

  • 症状の悪化: 細菌感染によるできもの(毛嚢炎、せつ、バルトリン腺膿瘍、炎症性粉瘤など)は、放置すると炎症が広がり、痛みが強くなったり、膿がさらに溜まったりすることがあります。
    重症化すると、治療に時間がかかったり、痕が残ったりすることもあります。
  • 感染の拡大: 性感染症(尖圭コンジローマ、ヘルペスなど)の場合、放置するとできものの数が増えたり、周囲に広がったりする可能性があります。
    また、パートナーに感染させてしまうリスクも高まります。
  • 診断の遅れ: 稀に悪性腫瘍(外陰がん)である可能性もゼロではありません。
    早期発見であれば根治の可能性も高いですが、放置して進行させてしまうと、治療がより複雑になり、予後にも影響する可能性があります。
    良性のできものだと思い込んで放置していたら、実は悪性だった、というケースも考えられます。
  • 慢性化・再発: 適切な治療を行わないと、症状が慢性化したり、繰り返し再発したりすることがあります。
    例えば、バルトリン腺膿瘍は一度できると再発しやすい傾向があります。
  • 心理的な負担: 原因が分からないままできものを放置することで、不安が募り、精神的な負担が増大することがあります。
    性生活にも影響を与える可能性もあります。

自己判断・自己処置の危険性

インターネットの情報だけで自己診断をしたり、市販薬で対応したり、無理に潰そうとしたりするのも非常に危険です。

  • 誤診: 素人判断では、できものの種類を正確に特定することは困難です。
    良性だと思って放置していたら、実は悪性だったという最悪のケースも起こり得ます。
    また、性感染症を見逃してしまうこともあります。
  • 症状の悪化: 無理に潰すと、細菌が周囲に広がり炎症が悪化したり、新たな感染を引き起こしたりする可能性があります。
    痕が残ってしまうこともあります。
  • 適切な治療機会の喪失: 市販薬は、症状を一時的に抑える効果しかない場合が多く、原因そのものを取り除くことはできません。
    適切な診断に基づかない治療は、病気を長引かせたり、隠したりしてしまう可能性があります。

デリケートな部分の症状だからこそ、恥ずかしがらず、専門医に相談することが最も安全で確実な方法です。

小陰唇のできもの、何科を受診すべき?

小陰唇にできものができた場合、どの診療科を受診すれば良いか迷うかもしれません。
一般的には、以下の診療科が考えられます。

婦人科

小陰唇を含む外陰部は、女性器の一部です。
したがって、婦人科は小陰唇のできものに関する専門的な知識と経験を持っています。
特に、性感染症(尖圭コンジローマ、ヘルペスなど)や、バルトリン腺関連の疾患、稀なケースである外陰がんなど、女性器特有の疾患が疑われる場合には、婦人科が最も適切な診療科となります。

婦人科では、デリケートゾーンの悩みに慣れている医師やスタッフが対応してくれることが多く、安心して相談しやすい環境が整っています。
女性医師を希望することも可能です。

皮膚科

できものは皮膚の病気の一部と考えることもできます。
皮膚科は、全身の皮膚疾患に関する専門家です。
毛嚢炎、せつ(おでき)、脂腺嚢腫・粉瘤、伝染性軟属腫など、皮膚そのものの問題としてできものができている場合には、皮膚科でも適切な診断と治療を受けることができます。

皮膚科医は、できものの見た目や組織の状態から診断する技術に長けています。

泌尿器科

女性の泌尿器科は、主に膀胱炎や尿失禁など尿路の疾患を扱いますが、外陰部の一部のできものについても診察できる場合があります。
ただし、小陰唇のできものに関しては、女性器の専門である婦人科や皮膚の専門である皮膚科の方が適しているケースが多いでしょう。

迷った場合の受診先

もしどの科を受診すべきか迷う場合は、まずはかかりつけの医師に相談するか、お近くの総合病院の代表電話に問い合わせて相談してみるのも良いでしょう。
多くの場合、小陰唇のできものに関する悩みは、婦人科または皮膚科のいずれかで対応可能です。
特に女性器特有の疾患が疑われる場合は婦人科を、皮膚の表面的な問題や感染症が疑われる場合は皮膚科を選択すると良いでしょう。
デリケートな部分であるため、事前に電話で問い合わせて、相談したい内容(小陰唇のできもの)を伝え、診察可能か確認しておくと、スムーズに受診できます。

小陰唇のできもの、医療機関での検査・診断

医療機関を受診すると、医師はできものの原因を特定するためにいくつかの検査を行います。

問診・視診・触診

まず、医師は患者さんから症状について詳しく話を聞きます(問診)。

  • いつ頃からできものができたか
  • できものの大きさ、数、形、色などの変化
  • 痛み、かゆみ、出血、分泌物などの有無や程度
  • 性行為の状況(パートナーの有無、性感染症の既往など)
  • 既往歴や内服薬、アレルギーの有無
  • 月経周期との関連

次に、医師は実際にできものの状態を観察します(視診)。
できものの場所、大きさ、形、色、表面の状態(滑らかか、ザラザラか、凹みがあるかなど)、周囲の皮膚の状態などを詳細に確認します。
必要に応じて、病変部を拡大して観察できるダーモスコープなどの器具を使用することもあります。

さらに、できものに触れて硬さや動きやすさ、痛み、熱感などを確認します(触診)。
しこりがある場合は、その深さや周囲組織との境界などを確認します。

これらの問診、視診、触診は、できものの原因を特定する上で非常に重要なステップです。
医師はこれらの情報から、考えられる病気をある程度絞り込みます。

その他の検査(組織検査、病理検査など)

問診、視診、触診だけでは診断が確定できない場合や、悪性腫瘍の可能性が否定できない場合には、さらに詳しい検査が行われます。

  • 組織検査(生検): できものの一部または全体を切り取って採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。
    特に、悪性腫瘍が疑われる場合や、診断が困難な場合に必須の検査となります。
    採取した組織は病理医によって詳細に調べられ、確定診断に至ります。
  • 病理検査: 生検で採取された組織を顕微鏡で観察し、細胞の形や配列などに異常がないかを確認する検査です。
    がん細胞の有無や、炎症の種類などを正確に診断できます。
  • 細胞診: 病変部を擦り取って細胞を採取し、顕微鏡で調べる検査です。
    特に、びらんや潰瘍がある場合に行われることがあります。
  • 細菌培養検査: 膿や分泌物を採取し、原因となっている細菌の種類を特定する検査です。
    せつやバルトリン腺膿瘍、炎症性粉瘤などで、適切な抗生物質を選択するために行われます。
  • ウイルス検査: ヘルペスや尖圭コンジローマが疑われる場合に、病変部の細胞や血液などを採取して、ウイルスの遺伝子や抗体を調べる検査です。
  • 血液検査: 全身の炎症の程度を確認したり、性感染症(梅毒、HIVなど)の合併がないかなどを確認したりするために行われることがあります。

これらの検査は、医師が必要と判断した場合に行われます。
これらの検査結果と、問診、視診、触診の結果を総合して、最終的な診断が下されます。

小陰唇のできもの、主な治療法

小陰唇のできものの治療法は、原因となる病気の種類や症状の程度によって異なります。
医師の診断に基づき、適切な治療法が選択されます。

薬物療法(塗り薬、飲み薬など)

比較的軽度なできものや、炎症・感染が原因の場合には、薬物療法が中心となります。

  • 抗菌薬(抗生物質): 細菌感染による毛嚢炎、せつ、バルトリン腺膿瘍、炎症性粉瘤などの治療に用いられます。
    塗り薬や飲み薬があり、感染の種類や重症度に応じて使い分けられます。
  • 抗ウイルス薬: ヘルペスなどのウイルス感染症の治療に用いられます。
    ウイルスの増殖を抑え、症状を軽減させます。
    飲み薬が一般的ですが、塗り薬が併用されることもあります。
  • 抗炎症薬: 痛みや腫れなどの炎症症状を抑えるために使用されることがあります。
    非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが用いられます。
  • イボ治療薬(塗り薬): 尖圭コンジローマの治療に用いられることがあります。
    イミキモドクリームなどが代表的で、患者さん自身が自宅で塗布します。
    効果が出るまでに時間がかかることがあります。

薬物療法で効果が見られない場合や、症状が重い場合には、他の治療法が検討されます。

外科的処置(切開・排膿、切除など)

できものに膿が溜まっている場合や、できものそのものを取り除く必要がある場合には、外科的な処置が行われます。

  • 切開・排膿: せつ(おでき)、バルトリン腺膿瘍、炎症性粉瘤など、膿が大量に溜まって痛みや腫れが強い場合に行われます。
    局所麻酔を行い、できものを切開して膿を排出させる処置です。
    痛みが軽減し、治癒が早まります。
  • 切除術: 粉瘤や脂腺嚢腫、尖圭コンジローマ、伝染性軟属腫、そして悪性腫瘍など、できものそのものを取り除く治療法です。
    良性のできものでも、大きいもの、感染を繰り返すもの、見た目が気になるものなどは切除が検討されます。
    悪性腫瘍の場合は、病変部とその周囲の組織を十分に切除することが根治のために重要です。
    局所麻酔または全身麻酔下で行われます。
  • バルトリン腺摘出術: バルトリン腺嚢胞や膿瘍を繰り返し、日常生活に支障をきたす場合に、バルトリン腺を袋ごと摘出する手術が検討されることがあります。

レーザー治療・冷凍凝固療法

イボ状のできもの(尖圭コンジローマ、伝染性軟属腫など)の治療に用いられることがあります。

  • レーザー治療: 炭酸ガスレーザーなどを用いて、できものを焼灼して除去する治療法です。
    比較的短時間で処置が可能ですが、再発の可能性はあります。
  • 冷凍凝固療法: 液体窒素を用いて、できものを凍結させて壊死させる治療法です。
    何度か繰り返しの治療が必要になることがあります。
    痛みや水ぶくれを伴うことがあります。

どの治療法を選択するかは、医師が病気の種類、できものの大きさ、数、場所、患者さんの全身状態などを考慮して決定します。
治療法の説明を十分に聞き、納得した上で治療を受けるようにしましょう。

小陰唇のできものを予防するには

小陰唇のできものを完全に予防することは難しい場合もありますが、日頃のケアによってリスクを減らすことは可能です。

デリケートゾーンを清潔に保つ

清潔を保つことは、細菌感染を防ぐ上で最も基本的な予防策です。

  • 適切な洗浄: 刺激の少ない専用ソープなどを使用し、優しく洗います。
    強く擦りすぎると皮膚を傷つけ、かえって感染の原因となることがあります。
    石鹸成分が残らないように、よく洗い流しましょう。
    洗いすぎも必要な常在菌まで洗い流してしまい、かえってバリア機能を低下させる可能性があるため注意が必要です。
  • ムレを防ぐ: 通気性の良い下着を選び、締め付けのきつい衣服は避けましょう。
    特に生理中は、こまめにナプキンを交換し、デリケートゾーンを清潔に保つことが重要です。
    入浴後やシャワー後、運動後などは、しっかり水分を拭き取り、乾燥させるように心がけましょう。
  • 排泄後の拭き方: 排便後は、前から後ろに向かって拭くようにしましょう。
    後ろから前に拭くと、肛門周囲の細菌が膣や尿道、外陰部に付着し、感染の原因となる可能性があります。

摩擦や圧迫を避ける

小陰唇は非常にデリケートな組織です。
摩擦や圧迫は、皮膚に負担をかけ、炎症やできものの原因となることがあります。

  • 下着: 締め付けがきつすぎる下着や、化学繊維など刺激になりやすい素材の下着は避け、コットンなどの通気性が良く肌触りの優しいものを選びましょう。
  • 衣服: スキニージーンズなど、外陰部を強く圧迫するような衣服を長時間着用するのは避けましょう。
  • 自己処理: 自己処理(カミソリでのシェービング、毛抜きなど)は、皮膚を傷つけたり、毛穴に負担をかけたりして、毛嚢炎やせつの原因となることがあります。
    自己処理を行う際は、清潔な状態で行い、処理後は保湿などのケアを怠らないようにしましょう。
    可能であれば、専門家による処理(医療脱毛など)を検討するのも良い方法です。

ストレスや疲労を溜めない

ストレスや疲労は、体の免疫力を低下させます。
免疫力が低下すると、細菌やウイルスの感染に対する抵抗力が弱まり、できものができやすくなったり、治りにくくなったりすることがあります。
十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動などで、日頃から体調を整え、免疫力を維持するように努めましょう。

医療脱毛によるケア

デリケートゾーンの医療脱毛は、毛量を減らすことでムレや摩擦を軽減し、清潔を保ちやすくする効果が期待できます。
これにより、毛嚢炎やせつのリスクを減らすことにつながる可能性があります。
ただし、脱毛自体が一時的に皮膚に負担をかける場合もあるため、信頼できる医療機関で相談し、適切なケアを行うことが重要です。

これらの予防策を実践することで、小陰唇のできもののリスクを減らし、デリケートゾーンを健康な状態に保つことにつながります。

まとめ:小陰唇のできものに悩んだら専門医へ相談を

小陰唇にできものができる原因は、細菌感染やウイルス感染、体質的なもの、そして稀に悪性腫瘍まで、非常に多岐にわたります。
痛みやかゆみを伴うもの、痛みがなくしこりとして触れるもの、白いブツブツ、赤い腫れ、イボ状のものなど、現れる症状も様々です。

これらの症状の多くは良性のできものによるものですが、性感染症である尖圭コンジローマやヘルペス、そして何よりも注意が必要な外陰がんの可能性もゼロではありません。
見た目や症状だけで自己判断し、放置したり、無理に自己処置を行ったりすることは、症状を悪化させたり、適切な治療の機会を失ったりする危険を伴います。

デリケートな部分の悩みであるため、一人で抱え込んでしまいがちですが、早期に医療機関を受診し、専門医の診断を受けることが最も重要です。
婦人科や皮膚科を受診することで、できものの正確な原因が特定され、適切な治療を受けることができます。

日頃からデリケートゾーンを清潔に保ち、摩擦や圧迫を避け、ストレスを溜めないなど、予防にも努めましょう。

小陰唇のできものに気づいたら、まずは落ち着いてご自身の症状を観察し、この記事で得た情報を参考にしてください。
そして、不安な気持ちを抱えたままにせず、ぜひ勇気を出して専門医に相談してください。
適切な診断と治療によって、安心して過ごせる日が来るはずです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療を保証するものではありません。
ご自身の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の判断を仰いでください。

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