院長コラム
ルフォーI型骨切り術は、上顎の骨格を調整し中顔面のバランスを整える外科手術です。顔の輪郭や咬合を改善できる一方で、大がかりな施術であるため手術に関する十分な知識や準備が求められます。
鼻や口元の突出感がある場合や、面長をはじめとする中顔面のバランスに悩む方にとっては、有効な選択肢になることがあります。実際には三次元的に骨を切り、再固定するため、術後の腫れやダウンタイムは長期に及ぶ可能性があります。
以下では、ルフォー1 骨切り術に関する基礎知識や手術の流れ、費用、よくある質問などを解説します。施術を検討する際の参考にしてください。
目次
ルフォー1骨切り術の基礎知識
ルフォー1 骨切り術全般における特徴や目的、メリット、デメリットなどを把握することで、施術の理解を深めることができます。
ルフォー1 骨切り術(LeFort-1)は、上顎骨を水平に切り、上下方向や前後方向に移動させることで中顔面のバランスを調整する手術です。主に面長や上顎の突出感、咬合不全などに対して行われます。顔面骨を自由に再配置できるため、高い修正効果が期待できます。
メリットとしては、正面から見た時の長さだけでなく、横顔や口元の突出感も同時に改善できる点が挙げられます。咬み合わせの適正化により、見た目だけでなく機能面でもプラスの変化が得られる可能性が高いでしょう。
一方で、切開範囲が大きくなるため、術後の腫れやリスクは小規模な施術に比べて高くなります。また、入院期間や術後の通院が必要になり、ダウンタイムも長くなりがちです。これらの点を理解した上で、自身の希望や体質に合うかどうかを見極めることが大切です。
セットバック手術やSSROとの違い
中顔面や下顎の骨切り術には、セットバック手術や下顎枝矢状分割術(SSRO)など複数の手法があります。それぞれの特徴や併用方法を知ることで、目的に合った施術を選択できます。
セットバック手術は主に上顎骨や下顎骨を後方へ移動させることで、口元の突出感を軽減する施術です。一方、ルフォーI型骨切り術は骨を水平に切り離し、三次元的な位置調整を行う点に大きな違いがあります。
また、SSROは下顎の骨を切り分け、顎先や全体のラインを調整する手術です。ルフォーI型骨切り術と比較すると、主に下顎にフォーカスする施術となりますが、希望するフェイスラインによってはルフォーI型骨切り術との併用が効果的です。
セットバック手術とは
セットバック手術は、上顎または下顎を後方に移動させることで口元の突出感を抑える手術です。口元が前に出すぎている、唇がうまく閉じにくいなどの症状を抱える方に多く選ばれます。
骨格そのものを後ろへ移動させるため、抜歯のみで対処できないケースにも対応可能です。ただし、歯列や笑った時の印象が大きく変化する可能性があるため、術前に十分なシミュレーションを行うことが求められます。
術後は腫れが目立ちやすく、ダウンタイム中は流動食やソフト食を取る期間が必要になる場合があります。セットバック手術だけでなく、顎の骨格全体を考慮して施術を組み合わせるケースもあります。
下顎枝矢状分割術(SSRO)との併用
下顎枝矢状分割術(SSRO)は、下顎骨を前後方向に調整する代表的な外科手術です。咬合やフェイスラインの改善を目的として行われ、顎ずれや下顎の後退・突出を修正できます。
SSROをルフォーI型骨切り術と同時に行うと、上下の顎を総合的に再配置できるため、口元や顔立ち全体のバランスをより高い精度で整えることが期待されます。特に正面や側面からの歪みをまとめて改善したい場合に併用が選択される傾向があります。
ただし、複数の骨切り術を同時に行う場合は、術後の腫れや痛みが増すリスクも高まります。術前のカウンセリングでは、自分の悩みの優先度や回復スケジュールをしっかりと検討することが重要です。
ルフォーI型骨切りが向いているのは
ルフォーI型骨切り術は、主に中顔面の突出や面長、咬合不全などに悩む方に適しています。どのような悩みを持つ方に向いているのかを解説します。
上顎の垂直方向の長さが原因で面長に見える方や、口元の突出感が強い方には、ルフォーI型骨切り術が適している場合があります。一般的に歯列矯正や顎矯正だけでは対応しきれない骨格レベルの修正が必要なケースが対象となります。
また、中顔面の骨格が原因で嚙み合わせに不具合がある場合においても、本手術による改善が期待できます。単純に歯並びをそろえるだけでなく、骨格移動によって自然な咬合作りが可能となるからです。
ただし、手術適応かどうかは個人の骨格や歯列の状態に左右されます。矯正歯科医や口腔外科医の診断を通して、最適な治療計画を立てることが大変重要です。
中顔面短縮による改善ポイント
中顔面を短縮することで、正面・側面のフェイスラインや口元の印象が大きく変わります。施術によって期待できる変化をまとめます。
中顔面の長さを短縮することで、顔全体のバランスが取りやすくなり、面長の印象を和らげる効果が期待できます。特に正面からの見た目において、縦に伸びた印象が軽減され、若々しくコンパクトなフェイスラインに近づけることが可能です。
横顔に関しても、上顎骨を後退させたり高さを調整することで、口元の突出感を抑える効果があります。結果として鼻や下顎との位置関係が整い、自然な横顔を演出することに役立ちます。
さらに、咬合が整うことで、噛み合わせの悩みや顎関節への負担が軽減される可能性があります。見た目と機能の両面にわたり、施術後の生活の質が向上しやすい点も中顔面短縮の大きなメリットといえます。
手術の流れと麻酔方法
ルフォーI型骨切り術では、事前準備やカウンセリング、全身麻酔などを経て手術が行われます。手術の大まかな流れと麻酔について理解しておきましょう。
まずはカウンセリングと検査を行い、CTや3Dシュミレーションによって骨格や歯列の状態を詳細に把握します。必要に応じて矯正医と治療計画を立案し、患者へのリスク説明などを経て、手術の準備を進めます。
手術当日は、全身麻酔下でルフォーI型骨切り術を実施します。上顎骨を切離し、必要な位置に移動させた後、固定具やプレートを用いて安定化させます。手術時間は数時間程度かかることが一般的です。
術後は腫れが強く出るため、クリニックでの経過観察を行いながら安静を保ちます。術後は通院を続け、抜糸やCTチェックなどを行いながら骨の癒合具合を確認していきます。
ダウンタイムやリスク・合併症
大がかりな手術であるため、術後の腫れや痛み、感染などのリスクやダウンタイムがあります。リスクや合併症を把握し、適切なケアを行うことが重要です。
腫れのピークは術後48時間前後といわれており、個人差はあるものの数週間かけて徐々に落ち着きます。完全に落ち着くまでには数ヶ月を要するケースもあるため、長期的な視点でダウンタイムを考慮する必要があります。
感染リスクや出血リスクも存在します。衛生管理や適切な投薬によって軽減できますが、万一炎症や痛みが長引く場合は早めに医師へ相談し、追加の処置を受ける必要があります。
他にも、噛み合わせの変化による一時的な違和感や顎関節周辺の不調が起こる可能性があります。術後はマウスピースの着用や指示されたリハビリを実施し、少しずつ正しい顎の動きを取り戻すようにするとよいでしょう。
費用・料金プラン
施術費用はクリニックや手術内容によって異なります。当院では骨切り手術は自費診療となっています。
一般的に、ルフォーI型骨切り術の費用は約110万円から330万円程度とされることが多いですが、実際には医院や施術内容によって差があります。また、入院費や検査費用が手術費用に含まれるかどうかも事前に確認しておきましょう。
保険適用に関しては、重度の咬合不全や顎変形症と診断された場合に保険が適用されるケースがあります。ただし、美容目的の施術においては適用されない場合がほとんどです。
費用面は非常に大きな要素ですので、複数のクリニックでカウンセリングを受け、見積もりを比較することもおすすめです。治療計画や術後のアフターケアも含め、納得のいく形で判断することが大切です。
リノクリニック東銀座の料金表になります。
顎矯正手術 料金表
メニュー | 通常価格 | 部分モニター | 顔出しモニター |
---|---|---|---|
ルフォーI型骨切り術 (L1) | ¥1,540,000 | — | — |
下顎枝矢状分割骨切り術 (オトガイ含む / BSSO) |
¥1,100,000 | — | — |
両顎手術 (オトガイ含む / OGS) おすすめ |
¥2,420,000 | ¥1,958,000 | ¥1,793,000 |
※ モニター条件の詳細はカウンセリングでご案内します。
よくある質問(Q&A)
Q.手術時間や入院期間はどのくらいですか?
A.手術時間は数時間におよび、入院期間はクリニックによって異なります。詳しくはクリニックとの相談が必要です。当院では入院期間は1泊で、その後は近隣のホテルに宿泊していただきます。
Q.術後はいつから食事ができますか?
A.最初は流動食から始まり、徐々に軟らかい食品に移行していきます。完全に普通食を摂れるまでには数週間かかる場合があります。
Q.腫れや痛みにはどう対処すればいいですか?
A.冷却や痛み止めの服用などの対処が一般的ですが、腫れや痛みが長期間続く場合は早めに医師に連絡しましょう。術後の経過観察と定期チェックも大切です。
まとめ
ルフォーI型骨切り術は、中顔面のバランスを整え、面長や中顔面突出など骨格由来の悩みを根本から改善し得る一方、術後のダウンタイムや合併症リスクの正確な理解と回復計画が不可欠です。実施には矯正歯科医・口腔外科医の診断が必要で、複数院でカウンセリングを行い、自身の骨格所見・費用・スケジュールを総合的に比較検討しましょう。審美面と機能面の大幅な改善を目指しつつ、リスク管理と術後フォローまで見据え、十分な情報収集と医師との密なコミュニケーションのもと、納得して治療に臨むことが成功の鍵です。
監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2025.08.13