院長コラム

ワキガ治療(腋臭症)と保険適用|ミラドライとの違いや診断方法

「もしかして自分はワキガかも…?」そんな悩みを抱える方は少なくありません。また、最近では中学生や高校生のお子さんのワキガに悩んで相談に来られる保護者の方も増えています。この記事では、ワキガ(腋臭症)の原因・診断方法・治療法、さらに保険適用やミラドライとの違いを医師の視点から詳しく解説します。

ワキガの原因と遺伝の関係

【アポクリン汗腺とは】

アポクリン汗腺は、人類の進化の過程でフェロモン分泌を担っていた器官と考えられています。現在では、脇の下や陰部など一部の部位に残り、ワキガの原因となっています。

  • フェロモン分泌の名残:動物は繁殖やコミュニケーションのためにフェロモンを分泌します。アポクリン汗腺はその役割を担っていました。
  • 体温調節との違い:エクリン汗腺は体温調節を担当しますが、アポクリン汗腺はほとんどその役割を持ちません。
  • 進化による退化:体毛の減少とともにフェロモンの役割は低下し、アポクリン汗腺は限定的に残存しています。
  • 感情発汗との関係:ストレスや緊張時にアポクリン汗腺からの発汗が増えることがあり、現代でもその反応が残っています。

ワキガ(腋臭症)は、アポクリン汗腺から分泌される成分が皮膚上で分解されることで発生します。特に遺伝的要因が強く、両親のどちらかがワキガ体質なら約50%、両親ともに該当する場合は80%以上の確率で発症します。また、アポクリン汗腺の数は腋毛の量と関係しており、毛が濃い方は重症化しやすい傾向があります。

【思春期のワキガとホルモンバランス】

中学生や高校生で症状が強まるのは、ホルモンバランスの変化によりアポクリン汗腺が活発になるためです。特に思春期は、性ホルモン(エストロゲンやアンドロゲン)が増加する時期で、これによりアポクリン汗腺が刺激され、においが強くなります。また、中には小学生のお子さんのワキガに関するご相談もありますが、この年代はまだ発達が未熟なため、手術でアポクリン汗腺を完全に取り切れず、再発のリスクがあります。そのため、手術を検討する場合は高校生以上を推奨しますが、どうしてもにおいが原因で生活に支障がある場合は、まずはご相談ください。保護者の方は、この悩みが本人のメンタルや学校生活に影響しやすい時期であることを理解し、早めにお子さんが相談できる環境をつくってあげることが大切です。

【生活習慣の影響】

脂質の多い食事やストレス、睡眠不足はにおいを悪化させる要因です。現代人は食事の欧米化によって脂っぽいものや添加物をとる機会が多くなっています。よって、できるだけ野菜や和食を中心に、栄養バランスを整えることがワキガ症状の軽減にもつながります。また、動物性脂肪を多く含む食事(肉類や乳製品)を摂取すると、アポクリン汗腺の活動が活発になり、においが強くなる可能性があります。さらに、ストレスや喫煙は汗の分泌を促し、臭いを悪化させることがあります。このように、腋臭症の原因は生まれつきの体質と生活習慣の影響が組み合わさったものであり、適切なケアや治療を行うことで症状を軽減することが可能です。

【ワキガを軽減する食生活とサプリ】

においの軽減には、日常の食生活も重要です。動物性脂肪や乳製品を控え、野菜・海藻・発酵食品をバランスよく取り入れることで、皮脂分泌やアポクリン汗腺への負担を減らせます。また、ビタミンCやビタミンEを含む食材や、クロロフィルやポリフェノール配合しているサプリの活用も一案です。ただし、サプリはあくまで補助的な手段であり、根本的な治療にはならない点をご理解ください。

ワキガの匂いと汗臭いの違い

ワキガ(腋臭症)と一般的な汗臭さは、汗の種類や発生メカニズムが異なるため、臭いの特徴にも大きな違いがあります。

  • 汗腺の違い:エクリン汗腺は体全体に分布し、99%が水分の汗を出します。この汗自体は無臭で、体温調節を目的としていますが、放置すると細菌の繁殖でいわゆる「汗臭さ」が発生します。対してアポクリン汗腺は脇や耳の中など特定部位にあり、脂質やタンパク質を含むため、常在菌に分解されると独特な強いにおいを放ちます。
  • 発汗の目的:エクリン汗腺は体温調節のため、運動や高温環境で増えます。アポクリン汗腺はストレスや緊張、ホルモンの影響で分泌されやすいのが特徴です。
  • 臭いの持続性:一般的な汗臭さは拭き取りやシャワーで軽減しますが、ワキガのにおいは皮膚の細菌分解で発生するため、洗っても残りやすい傾向があります。

このように、臭いの性質や原因が異なるため、適切なケアや治療方法も変わります。

リノクリニック東銀座でのワキガ診断

【においを嗅ぐ診察は一切なし】

「先生に脇を見せて、直接においを嗅がれるのでは…?」と心配される方もいますが、当院ではにおいを嗅ぐ診察やティッシュ検査は行っていません。問診を中心に、以下を確認します。

  • シャツの脇が黄ばむか
  • 周囲からにおいを指摘された経験
  • 耳あかが湿っているか

【診断基準】

これらを総合的に評価し、保険適用の手術対象かどうかも判断します。

ワキガ治療|保険適用とミラドライの違い

【保険適用手術の特徴】

  • 切開してアポクリン汗腺を目視で確実に除去
  • 再発リスクが低い
  • 自己負担は約21,500円(片ワキ)・37,000~47,000円(両ワキ)※3割負担の場合
  • 手術時間:約60〜90分、入院不要、局所麻酔で痛みなし
項目 ミラドライ 保険手術
保険適用
効果 個人差あり 高い(目視で除去)
再発リスク やや高い 低い
費用 約30〜40万円 両ワキ約37,000円(3割負担)

※個人差があります

【ミラドライは保険適用になる?】

ミラドライは保険適用にはなりません。美容医療に分類されるためで、費用は全額自己負担(30〜40万円程度)です。一方、保険適用手術は医師の診断に基づき、重度の腋臭症と認められた場合に健康保険が適用されます。

保険適用される術式と特徴

以下の手術が、一定の基準を満たせば保険適用されます。

  • 一般的な剪除法(直視下手術):皮膚を約4cm切開し、アポクリン汗腺を直接確認しながら除去する方法です。確実性は高いものの、切開が大きくなる傾向があります。
  • 当院の剪除法:約1.8cmの小切開で実施するのが特徴で、従来法よりも傷跡が目立ちにくく、術後の圧迫や回復も比較的スムーズです。保険適用で3割負担の場合、片ワキ約21,500円・両ワキ約37,000円~47,000円です。
  • 皮下組織吸引法(シェービング法):小さな切開から特殊な器具でアポクリン腺を吸引します。一定の効果はありますが、剪除法より再発リスクが高く、直接見て切除できないデメリットもあります。

※ボトックス注射、レーザー治療、超音波治療などは原則保険適用外の自由診療です。

術式 メリット デメリット
当院の剪除法(1.8cm切開) 傷跡が目立ちにくく回復が早め、18mmの小切開で行うため仕上がりが自然で確実性が高い 圧迫固定が必要、軽いダウンタイムあり
一般的な剪除法 再発率が低く効果が高い 傷が大きくダウンタイムが比較的長い
吸引法(シェービング法) 傷が小さく回復が早い 再発リスクがやや高い、確実性に欠ける
ミラドライ 切らないためダウンタイムが短い 効果に個人差、再発する場合あり、保険適用外で高額

術後のケアとダウンタイム

  • 小切開ですが、圧迫固定は必要、翌朝まではしっかり圧迫してもらいます。
  • 1週間で抜糸、軽い運動は再開可能
  • 翌日からデスクワークなど軽作業は可能

リノクリニックのワキガ手術の特徴

水着やタンクトップなど露出が多い服を着る方や、スポーツで腕を上げる機会が多い方にとって、傷跡の目立ちやすさは大きな不安要素です。そのため当院では、傷跡ができるだけ目立ちにくい切り方と縫い方を工夫し、約1.8cmの小切開で自然な仕上がりを実現しています。これにより、術後も腕を上げやすく、日常生活やファッションを楽しみやすい手術を目指しています。

執刀医の紹介

当院のワキガ(腋臭症)手術は、外科専門医である宮崎先生が執刀します。宮崎先生は多数のワキガ保険治療の執刀経験を持ち、大学病院での豊富な経験と確かな技術を持っています。

宮崎先生の経歴

  • 大学病院にて再建外科・美容外科領域を担当
  • ワキガ治療を含む皮膚・形成分野で多数の症例実績
  • 輪郭整形などの骨切り手術といった美容外科では大きな手術も多数症例あり

患者様に寄り添い、安全で確実な治療を行うことを信条としています。初めての方でも安心してご相談ください。

安全性とリスクについて

ワキガ手術(腋臭症)は高い効果が期待できる一方で、すべての医療行為と同様にリスクがあります。代表的なものは以下のとおりです。

  • 出血や血腫
  • 感染
  • 傷跡の肥厚や赤みの長期化
  • まれに再発する可能性

また、仕上がりや効果には個人差があることをご理解ください。当院では手術前にカウンセリングを行い、適応を慎重に判断し、他の選択肢も含めてご説明します。

静脈麻酔による治療について

「手術は怖い」「痛みに不安がある」という方のために、当院では静脈麻酔を併用したワキガ手術も可能です。

【静脈麻酔とは?】

静脈麻酔は、点滴を通じて麻酔薬を投与し、うとうと眠っている状態で手術を受けられる方法です。手術中の記憶はほとんどなく、痛みや恐怖感を和らげることができます。

  • 対象:手術に強い不安がある方、痛みを極力避けたい方
  • 特徴:眠っている間に手術が終了
  • 費用:静脈麻酔を併用した場合、両ワキで約47,000円程度(3割負担)
  • 必要なもの:健康保険証やマイナンバーカードをお持ちください

よくある質問

Q1: 中高生でも手術できますか?
A: 成長段階ではアポクリン腺を完全に取り切れず再発リスクがあるため、当院では高校生以上(15歳以上)を推奨しています。ただし、どうしてもにおいで日常生活に支障がある場合は、診察で適応を確認し、手術が可能かを判断します。まずは、ご相談ください。

Q2: ミラドライは保険適用されますか?
A: ミラドライは保険適用外で、全額自己負担です。当院ではミラドライは導入していません。その理由は、高額であるにもかかわらず、効果に個人差があり、再発のリスクがあるためです。当院では、より確実で保険適用が可能な剪除法手術や、場合によってはボトックス治療をご提案しています。

Q3: ダウンタイムはどれくらい?
A: 圧迫は3〜7日、1週間で抜糸。軽い運動は再開可能です。

Q4: 傷跡は残りますか?
A: 切開部は脇のシワに沿うため、目立ちにくくなります。当院では1.8㎝(18mm)の小切開で、なるべく傷が目立たず、術後も腕を上げやすいように工夫した手術を行っています。

監修者情報

宮﨑 邦夫

リノクリニック東銀座 院長

【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員

消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。

監修日:2025.08.06

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