院長コラム
一度わきが手術を受けたのに、半年後にはまた脇の臭いが気になる。汗ジミも制汗剤も相変わらず。そんなご相談で、東銀座の当院を訪ねてこられる方がいらっしゃいます。お伝えしている通り、わきが手術の2回目(再手術)を行うこと自体は可能です。ただ、初回より確実に難易度は上がります。前回の手術によって皮膚の下が瘢痕(はんこん)化し、皮膚を養う血流が落ちているためです。当院が行うのは保険適用の剪除法(皮弁法)で、切開は約28ミリ、手術の翌朝には圧迫を外してシャワーを浴びていただけます。この記事では、なぜ再手術が必要になるのか、どこまで修正できるのかを正直にお話しします。
- わきが手術2回目が必要になる主な原因(取り残し・術式の限界・血腫)
- 瘢痕化した皮膚の血流という観点から見た、再手術の難易度と適応の線引き
- 保険の剪除法で行う2回目の手術の流れ、切開の長さ、術後経過と回復期間
- そもそも2回目を避けるために、初回でどんな治療を選ぶべきか
目次
わきが手術2回目は可能?
可能です。ただし「誰でもすぐに」ではありません。前回の手術からの経過期間、皮膚の状態、残っているアポクリン腺の量を診察で確認したうえで判断します。そして、再手術であっても腋臭症(わきが)の診断がつけば保険で受けられます。ここは誤解されている方が多い点です。
申し遅れました。リノクリニック東銀座の院長、宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医)です。外科医として20年以上、脇の皮膚の下を見続けてきました。
まず整理しておくと、腋臭症(わきが)とは、脇のアポクリン汗腺から分泌された脂質やタンパクを皮膚の常在菌が分解することで、特有のにおいが発生する状態を指します。つまり臭いの発生源は汗そのものではなく、アポクリン腺の分泌物。だから根本的に臭いを断つには、このアポクリン腺を物理的に取り除くしかありません。海外の系統的レビューでも、外科的に腺を切除した群の再発率が最も低く報告されています。
2回目の手術を検討される方のご相談で多いのは、「前回と同じ場所をもう一度切ることになるのか」という不安です。多くの場合、答えはイエス。前回の傷あとを含めて切開し、瘢痕を切除しながら皮弁を起こし直します。切開の長さは当院では約28ミリ。再手術でも、この長さを大きく超えることは基本的にありません。
費用については、3割負担で4〜5万円程度が目安です。痛みが不安な方に静脈麻酔を併用しても約45,000円。再手術だから高くなる、ということはありません。保険診療の考え方については、こちらもご覧ください。
わきが手術後に臭いが残る原因

臭いが残る最大の原因は、アポクリン腺の取り残しです。実際のところ、原因の多くはここにあります。ほかにも術式そのものの限界と、術後の血腫による剥離不足の3つ。順に説明します。
アポクリン腺は、脇毛の生えている範囲より一回り広く分布しています。特に外側の辺縁部。ここは皮弁を起こすときに視野が悪く、剥離も浅くなりがちで、取り残しが起きやすいポイントです。私が手術をしていて感じるのは、「毛の生えている範囲=切除範囲」と考えると、ほぼ確実に辺縁が残るということ。だから剪除法では、毛の範囲より1〜2センチ外側まで皮弁を起こして真皮面を確認します。
術式の違いも大きい。海外のメタ解析では、切除術の再発率が約3.0%、吸引法が約5.5%、レーザーが約8.2%と報告されており、別のランダム化比較試験でも吸引・掻爬(そうは)系の手技は切除に比べて再発が多い(約11.5%)と示されています。つまり、傷が小さい方法ほど腺を確実に見て取ることが難しくなる。これは物理的に当然のことで、どの術式が悪いという話ではありません。
もうひとつ見落とされがちなのが血腫です。術後に皮弁の下へ血がたまると、皮膚が生着せず、部分的に壊死することがあります。この場合、臭いが残るだけでなく傷あとも硬く引きつれる。再手術の難易度を一気に引き上げる要因です。微小なドレナージを置いて血腫を予防する報告もありますが、当院で術後の固定や安静をかなり厳格にお願いしているのも、まさにこうしたトラブルを防ぐためです。
なお、「手術したのにまだ臭う気がする」というご相談のうち、実際には臭いがほぼ消えているケースもあります。衣類に染み付いた臭い、エクリン汗による汗ジミの不快感、そして自己臭への過敏。ここは正直に話しますが、診察で第三者の鼻による確認が必要な部分です。
2回目のわきが手術が難しい理由
再手術が難しくなる一番の理由は、皮膚の血流にあります。剪除法は、皮膚を薄い皮弁として起こし、裏返して真皮面のアポクリン腺を直視下で切除する手術。皮弁が生きていられるのは、真皮の下にある細かい血管網(真皮下血管網)が残っているからです。
ところが初回手術を受けた脇では、この血管網が一度断たれ、瘢痕組織に置き換わっています。脂肪層と真皮の境目が白く硬くなり、本来なら指で押せば分かれる層が、べったりと癒着している。実際に手術をしていると、メスの入る「面」が消えていることが分かります。無理に薄く削れば皮膚が壊死し、安全を取って厚く残せば腺が残る。この綱渡りが再手術の難しさです。
私が2回目の手術で判断材料にしているのは、次の4点です。
STEP 1|前回手術からの期間
最低でも6ヶ月、できれば1年は空けたい。瘢痕が成熟して柔らかくなるのを待つ時間です。硬い時期に触ると血流障害のリスクが跳ね上がります。
STEP 2|皮膚の可動性と色調
脇の皮膚をつまんで持ち上げられるか。つまめない、色が白く抜けている部位は、血流の余力が乏しいサインと考えています。
STEP 3|残存している毛と腺の分布
毛が残っている範囲、汗がにじむ範囲、臭いの強い範囲をそれぞれ確認します。三者は一致しないことが多い。
STEP 4|前回の切開線と傷あとの質
ケロイド傾向があるか、幅広く引きつれているか。再手術では前回の瘢痕を切除して縫い直すので、ここで傷あとを改善できる場合もあります。
正直に言うと、全例で「前回より完璧に取れます」とはお約束できません。瘢痕がきつい方には、範囲を限定して確実に取れる部分だけを修正するご提案をすることもあります。欲張って広く剥離するより、皮膚を生かすほうが結果的に満足度が高い。これは失敗例を見てきたからこその考えです。
わきが手術2回目の術後経過と回復

経過の大枠は初回と同じです。当院の剪除法では、術後にガーゼで圧迫固定(タイオーバー)を行い、固定期間は4日間。ただし手術の翌朝には圧迫を外してシャワーを浴びていただけます。「数日間お風呂に入れない」と思い込んでいる方が多いので、ここは最初にお伝えしています。
時系列で整理します。
手術当日:所要時間は両脇で1時間半前後。局所麻酔で行い、ご希望があれば静脈麻酔を併用します。日帰りです。
翌朝:圧迫を外してシャワー可。その後は改めて固定し直し、4日目まで続けます。
4〜5日目:固定終了。この頃から脇のつっぱり感が和らいできます。
10〜14日目:抜糸。糸を取ると急に楽になる方が多い。
2週間まで:腕を肩より高く上げる動作、重い物を持つ動作は控えていただきます。皮弁がずれると生着が悪くなるためです。デスクワークであれば数日で復帰されている方がほとんど。
1ヶ月:運動やジムを再開していただけます。
3〜6ヶ月:傷の赤みと硬さが徐々に落ち着いていきます。
2回目の手術では、初回より安静をやや厳しくお願いしています。血流に余力がないぶん、皮弁がずれたときのダメージが大きいからです。銀座・東銀座というエリア柄、仕事の合間に手術を受けられる方が多いのですが、再手術の方には「術後3日間だけは本気で動かないでください」と必ず念を押しています。
臭いの変化を実感できるのは、腫れと内出血が落ち着く術後1ヶ月前後から。半年かけてさらに安定していきます。
2回目を防ぐ初回わきが手術の選び方
これから初めて治療を考える方に伝えたいのは、「何を一番改善したいのか」をはっきりさせてから方法を選ぶ、ということです。
汗の量だけが悩み、つまり脇汗で服のシミが目立つのがつらいという方。この場合はボトックス注射が合理的な選択肢です。エクリン汗腺への神経伝達を抑えることで発汗を減らす方法で、効果は数ヶ月持続します。多汗症に対する治療として国際的にも確立された手法で、手術を急ぐ必要はありません。
一方、「人に臭いと言われた」「制汗剤が効かない」「耳垢が湿っている」という方は、アポクリン腺由来の臭いが主体である可能性が高い。ここで知っておいていただきたいのが、マイクロ波などの熱で汗腺にダメージを与える機器(ミラドライ等)の特性です。汗が減ることで臭いが軽くなることはあります。ただ臭いが残るケースは少なくなく、さらに問題なのは皮下が熱で瘢痕化すること。のちに手術を受けようとしたときに、まさにこの記事で説明してきた「層が分からない」状態になり、手術の難易度が上がります。臭いの元を断つことを考えるなら、アポクリン腺を直視下で取り除く手術が根本的な治療になる、というのが私の考えです。
もちろん、どの方法が合うかは脇の状態によって変わります。中央区・東京近郊から相談にみえる方にも、診察で症状を確認したうえでご説明するようにしています。
わきが手術2回目のよくある質問
Q. 1回手術したのに脇がまだ臭います。もう一度手術できますか?
A. できます。前回手術から6ヶ月〜1年ほど経過し、皮膚の瘢痕が落ち着いていれば再手術の適応になります。腋臭症の診断がつけば保険診療で受けられ、3割負担で4〜5万円程度が目安です。まずは残っている腺の分布を診察で確認します。
Q. 2回目の手術だと傷あとはもっと目立ちますか?
A. 多くの場合、前回の傷あとを切除して縫い直すため、幅が広がって目立つとは限りません。むしろ引きつれた瘢痕を整える機会になることもあります。当院の切開は約28ミリで、再手術でもこの長さを大きく超えることはほとんどありません。
Q. ミラドライを受けた後でも、わきが手術は受けられますか?
A. 受けられますが、熱による瘢痕化で皮下の層が分かりにくくなり、手術の難易度は上がります。施術から1年程度あけ、皮膚のつまみやすさや色調を確認してから判断しています。診察で状態を見せていただくのが確実です。
Q. 手術の翌日からシャワーを浴びられるって本当ですか?
A. 本当です。当院では手術の翌朝から、シャワーのときに圧迫を外して浴びていただけます。浴びた後は改めて固定し直し、圧迫固定自体は術後4日間続けます。初回・2回目とも同じ運用です。
Q. 仕事はどのくらい休む必要がありますか?
A. デスクワークなら術後数日で復帰される方が多数です。ただし腕を肩より高く上げる動作と重い荷物は2週間控えてください。再手術の方は皮膚の血流に余力が少ないため、最初の3日間はできるだけ安静にしていただいています。
わきが手術2回目のまとめ
- わきが手術の2回目(再手術)は可能。腋臭症と診断されれば保険で受けられ、3割負担で4〜5万円程度(静脈麻酔を併用しても約45,000円)が目安です
- 臭いが残る主な原因は、アポクリン腺の取り残し、術式の限界、術後血腫による剥離不足
- 再手術が難しいのは、瘢痕化で皮膚の血流と層の境目が失われているため。前回から6ヶ月〜1年は空けたい
- 当院の保険の腋臭症手術(剪除法)は、切開の長さ約28ミリ。圧迫固定は術後4日間続けますが、翌朝からはシャワーのときに外して浴びられます。抜糸は10〜14日目です
- 費用は目安であり、確定金額はカウンセリングでご案内します。効果には個人差があります
一度手術を受けて結果に納得できていない方ほど、次の一歩を踏み出しづらいものです。脇の状態を見れば、何が残っていて何が修正できるのかはかなり具体的にお話しできます。一人で抱え込まず、一度ご相談ください。
わきが手術のご相談は当院へ
リノクリニック東銀座は、東京都中央区銀座3丁目11-13 松本銀座ビル9階(東銀座駅から徒歩3分)にあります。院長は宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医、外科経験20年以上)。腋臭症(わきが)に対する保険適用の剪除法(皮弁法)を中心に、多汗に対するボトックス注射、輪郭形成や婦人科形成などの外科治療を行っています。初回の方も、他院で手術を受けた後の再手術をご検討の方も、診察で脇の状態を確認したうえで治療方針をご説明します。初診のご予約はこちら(WEB予約24時間受付)。
ワキガ手術をご検討中の方へ
オンラインカウンセリングで、治療方法や適応、ダウンタイム、来院までの流れなど、
気になることを事前に医師へご相談いただけます。
所要時間:約30分
関連コラム
参考文献
- Yang JJ, Bai JL, Qiang S, et al. Micropore drainage to prevent hematoma in axillary bromhidrosis: A comparative study. Medicine (Baltimore). 2025;104(26):e43068. PubMed / DOI
- Morioka D, Nomura M, Lan L, et al. Axillary Osmidrosis: Past, Present, and Future. Ann Plast Surg. 2020;84(6):722-728. PubMed / DOI
- Sun P, Wang Y, Bi M, et al. The Treatment of Axillary Odor: A Network Meta-Analysis. Med Sci Monit. 2019;25:2735-2744. PubMed / DOI
- Shin JY, Roh SG, Lee NH, et al. Osmidrosis Treatment Approaches: A Systematic Review and Meta-Analysis. Ann Plast Surg. 2017;78(3):354-359. PubMed / DOI
- Wang C, Wu H, Du F, et al. Axillary Osmidrosis Treatment Using an Aggressive Suction-Curettage Technique: A Clinical Study on Paired Control. Aesthetic Plast Surg. 2015;39(4):608-15. PubMed / DOI
監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2026.11.04




