院長コラム

なぜ「顔から考える」のか|セファロ起点の治療設計が抱える3つの限界

2026.10.24

「レントゲンの数値どおりに手術すれば、きれいな顔になるのでは?」
「検査の数字は正常なのに、なぜ顔のバランスが気になるのだろう」

両顎手術(OGS)を調べていると、こうした疑問を持つ方は少なくありません。

結論から言うと、セファロ分析は手術に欠かせない検査ですが、それを「計画の出発点」にすると、患者様が望む顔とのあいだにすき間が生まれることがあります。理由は、二次元の情報であること、正常値と「なりたい顔」が別ものであること、骨の動きと顔の表面の変化が一対一ではないことの3つです。だから当院では、ゴールの顔を先に決めてから骨の動きを逆算するFace-Driven Planning(フェイスドリブンプランニング)という考え方で治療を設計しています。

この記事は、院長の宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医)が、Face-Driven Planningシリーズの第2回として書いています。第1回はFace-Driven Planningとは?をご覧ください。

この記事でわかること

  • セファロ分析とはどんな検査で、何が得意なのか
  • セファロを計画の出発点にしたときに起こる3つの限界
  • Face-Driven Planningでセファロ分析をどう使うのか
  • 自費の両顎手術で「顔から考える」ことが大切になる理由

セファロ分析とはどんな検査か

セファロ分析とは、頭部X線規格写真(横から撮影する頭のレントゲン)で骨格の角度や距離を測り、平均値と比べて骨格のずれを数字で表す検査です。

客観性があり、誰が測っても同じ結果になりやすい。外科医と矯正歯科医が同じ言葉で症例を話し合えるのも、セファロ分析があるからです。私自身、毎日のようにセファロ分析を使っています。この検査の価値は間違いなくあります。

ただ、セファロ分析を「治療計画のスタート地点」にしたとき、いくつかの構造的な問題が出てきます。

限界1 レントゲンは二次元

一つめの限界は、セファロが横から撮った一枚の画像、つまり二次元の情報だという点です。

顔は三次元の立体です。正面から見たときの幅、斜めから見たときのライン、顔の左右差。これらはセファロには写りません。

CTを使えば立体の情報は得られます。それでも、セファロ分析の基準値やノルム(正常値)は、基本的に横顔の二次元画像をもとに作られてきたものです。三次元のデータを手に入れても、それを「どんな顔を目指すか」という治療目標に置きかえる物差しが二次元のまま、というギャップがあります。

限界2 正常値となりたい顔は別

二つめの限界は、「正常値」が患者様の理想と一致するとは限らないことです。

セファロ分析では、SNA角・SNB角・ANB差など、さまざまな角度や距離に正常値があります。これはある集団から導き出された統計的な平均値です。

一方で、患者様が求めているのは「平均に近い顔」ではありません。「横顔をすっきりさせたい」「あごをシャープにしたい」「やわらかい丸みのある輪郭にしたい」。希望は一人ひとり違います。

韓国で多くの症例を見てきたなかで私が感じたのは、数値を正常に近づけた結果、患者様の希望とずれてしまうケースが少なくないということでした。計算が間違っていたのではなく、出発点が違っていたのだと考えています。

限界3 軟組織の変化は人それぞれ

三つめの限界は、骨を動かしたときの顔の表面(軟組織)の変化が、一対一では決まらないことです。

皮膚や筋肉、脂肪の厚みや弾力は人によって違います。同じ5mm骨を動かしても、顔の表面の変わり方は人それぞれです。

セファロの数値から骨の移動量を決めると、最終的な顔の変化は「予測」になります。予測が合っていれば問題ありませんが、ずれると、鏡を見たときに「思っていたのと違う」ということが起こり得ます。

Face-Driven Planningでは、ゴールの顔を先に決め、その顔になるために骨をどう動かすかを考えます。顔の変化を「結果」ではなく「目標」にする。方向が逆になります。

セファロは不要という意味ではない

ここまで読むと「セファロ分析はいらないのか」と思われるかもしれませんが、まったくそうではありません。

セファロ分析は、手術の安全性を守り、移動量の精度を高めるために欠かせません。骨格の現状を客観的に知るためにも必要です。

私が伝えたいのは、セファロ分析の「使い方」です。

  • 計画の出発点として使う(数値 → 移動量 → 顔の変化は結果)
  • 計画を実現するための道具として使う(顔のゴール → 移動量の逆算 → 数値で安全と精度を確認)

同じデータでも、どちらの位置づけにするかで計画の組み立て方が変わります。Face-Driven Planningでは後者です。顔のゴールを決めたあと、「骨をどう動かせばそこに届くか」を決める段階で、セファロやCTのデータが活きてきます。

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自費の両顎手術で大切な理由

日本の両顎手術は保険診療が中心だった時代が長く、治療目標は「噛み合わせの改善」が第一でした。その目的であれば、セファロ分析を起点にした設計は合理的です。噛み合わせを整えるのに必要な移動量を計算し、術式を決める。顔の変化は結果としてついてきます。

今は自費で両顎手術を受ける方が増えています。その方たちの目標は噛み合わせだけではなく、「なりたい顔がある」「顔のバランスを変えたい」というものです。

そうした方に「数値を正常値に近づけます」と説明しても、それは聞きたい答えではないことが多いと感じています。

「あなたが目指す顔に近づけるために、骨をこう動かします」

これがFace-Driven Planningでの説明です。セファロ分析は、その裏付けとして使います。

よくある質問

Q. セファロ分析の数値が正常なら、両顎手術は必要ありませんか?

A. 数値が正常範囲でも、顔全体のバランスから見て骨を動かしたほうがよいケースはあります。逆に、数値に大きなずれがあっても手術が適さない場合もあります。数値だけで決めず、顔貌と噛み合わせの両方から判断します。

Q. CTを撮れば、セファロ分析の限界はなくなりますか?

A. CTで立体の情報は得られますが、それをどんな顔を目指すかという目標に置きかえる基準は、まだ二次元の考え方が中心です。だからこそ、先に顔のゴールを共有し、CTはそのゴールを安全に実現するための設計図として使います。

Q. 手術後の顔の変化は、どのくらい正確に予測できますか?

A. 軟組織の厚みや弾力には個人差があるため、予測と実際の結果が完全に一致することはお約束できません。予測の考え方と、ずれが出やすい部位についても、カウンセリングでご説明します。

まとめ

  • セファロ分析は手術に欠かせない検査で、客観性と再現性がある
  • ただし計画の出発点にすると、二次元の限界・正常値と理想のずれ・軟組織の個人差という3つのすき間が生まれる
  • Face-Driven Planningは、ゴールの顔を先に決め、骨の動きを逆算する考え方
  • セファロやCTは不要になるのではなく、ゴールを安全に実現する道具として使う

次回は、Face-Driven Planningが実際のカウンセリングでどう使われるのかを書きます。Face-Driven Planningの実際|カウンセリングから治療計画まで

当院のご案内

リノクリニック東銀座は、東京都中央区銀座3丁目11-13 松本銀座ビル9階(東銀座駅から徒歩3分)にある美容外科・形成外科です。院長は宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医、外科経験20年以上)。両顎手術(OGS)・骨切り・輪郭形成について、Face-Driven Planningに基づき、顔貌のゴールを共有するところからご相談をお受けしています。

監修者情報

宮﨑 邦夫

リノクリニック東銀座 院長

【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員

消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。

監修日:2026.10.24

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