院長コラム

顔のたるみは原因別に治療法が違う|骨格・脂肪・筋膜を外科専門医が解説

日々カウンセリングをしていると、「フェイスラインがぼやけてきた」「ほうれい線が深くなった」「二重顎が消えない」といった切実なご相談を数多くお受けします。 顔のたるみと一言で言っても、実は「骨格・脂肪・筋膜・皮膚」のどれが主な原因かによって、選ぶべき治療法はまったく異なります。原因を見極めずに治療を始めてしまうと、時間と費用をかけたのに「思ったほど変わらなかった」という残念な結果になりかねません。 本記事では、ご自身のたるみがどのタイプなのかを見分ける手がかりと、外科専門医の視点から考える「原因別の正しい治療選択」について詳しく解説します。

この記事でわかること
・顔のたるみを骨格・脂肪・筋膜・皮膚の4要因に分けて考える方法
・自分がどのタイプのたるみか、自宅でできるおおまかな見分け方
・原因別の治療法(糸リフト、切開リフト、脂肪治療、骨格治療)の適応と費用の目安
・治療後の腫れの経過と、仕事復帰までのリアルな期間

顔のたるみは骨格と脂肪と筋膜で決まる

たるみというと、多くの方が「皮膚がゆるんだ」と考えます。でも、実際に手術で皮膚の下を見てきた経験から言うと、皮膚だけの問題であるケースはむしろ少数派です。

顔は、いちばん外側に皮膚があり、その下に浅層の脂肪、さらに下にSMAS(表在性筋膜、スマス)という膜状の組織、その下に深層の脂肪、そして最深部に骨があります。このSMASは表情筋とつながった膜で、頬の脂肪を支えるハンモックのような役割をしています。ハンモックの布がゆるめば、中身は当然下に落ちる。これがフェイスラインのぼやけや、ゴルゴ線、マリオネットラインの正体です。

さらに見落とされがちなのが骨です。加齢とともに、眼窩(目の周りの骨の縁)や上顎骨は少しずつ吸収されて痩せていきます。土台となる骨が縮むと、その上を覆っている皮膚や脂肪といった軟部組織は相対的に余ってしまいます。テントの支柱が短くなると、張っていた生地がたるんでしまうのと同じ理屈です。 加齢や急激な体重減少による顔の変化は、単なる皮膚のゆるみだけでなく、こうした「骨の萎縮」や「脂肪の減少」が複雑に絡み合って起きています。

加えて、リテイニングリガメントという「支持靭帯」の存在も無視できません。これは皮膚から骨まで縦に走るロープのような組織で、頬骨の下や下顎縁にあります。ここが緩むと部分的に落ち、緩んでいないところは動かないため、境目に溝ができる。ほうれい線やマリオネットラインが「線」としてはっきり出るのは、この支持靭帯の境界だからです。

つまり、たるみは皮膚・脂肪・筋膜・骨・靭帯の五層が絡んだ立体的な現象。どこが主犯かを見極めないまま治療を選ぶのは、原因不明の腹痛にとりあえず痛み止めを出すようなものだと私は思っています。

原因別に見るたるみのタイプ診断

鏡の前でフェイスラインを指で持ち上げて確認する40代女性の横顔|リノクリニック東銀座

カウンセリングで私が最初にやるのは、患者さんに上を向いてもらうことです。仰向けに近い角度で影が消えるかどうか。これで「落ちているだけ」なのか「そもそも凹んでいる」のかがかなり分かります。

脂肪過多タイプ

若い頃から丸顔、体重が増えると真っ先に顔に出る、二重顎が気になる。こういう方は頬の深層脂肪や顎下脂肪のボリュームそのものが多い傾向があります。指でつまむと厚みがはっきり分かる。20代でも「顔が大きい」「輪郭がぼやけて見える」と来院される方がいて、これは加齢性のたるみではなく脂肪量の問題であることが多いです。

筋膜(SMAS)下垂タイプ

40代以降で最も多いのがこのタイプ。頬の高い位置がこけてきたのに、口角の外側や下顎のラインにもたつきが出る。上を向くと影が消えて「若い頃の顔だ」と感じる方は、組織が下に落ちているだけなので、位置を戻す治療が効きます。

骨格タイプ

面長、エラが張っている、あるいは下顎が小さくて後退している。こうした骨格的特徴があると、同じ量の軟部組織でも落ちて見えやすい。特に顎先が引っ込んでいる方は、首と顎の境目が浅くなるため「二重顎に見える」「横顔のラインが気になる」という訴えになります。この場合、いくらリフトをしても土台が変わらないと限界がある。正直に言うと、ここを説明せずに糸リフトだけ勧めるのはフェアではないと考えています。

皮膚弛緩タイプ

急激なダイエット後、あるいは60代以降で、つまんだ皮膚がなかなか戻らない。細かいちりめんジワが増えた。このタイプは皮膚そのものを切除する治療でないと解決が難しい領域です。

実際には、これらが単独で存在することはほとんどありません。「脂肪7割・筋膜3割」のように配分を読むのが診断の本質です。

筋膜を引き上げる治療法の選び方

SMASに対するアプローチは、大きく糸リフトと切開リフトに分かれます。

糸リフト(スレッドリフト)は、トゲのついた溶ける糸を皮下に挿入して組織を引き上げる方法です。ダウンタイムが軽く、腫れは数日から1週間程度。費用の目安は本数によりますが、片側4本程度で20万円前後からというのが一般的なレンジです。ただし、これは「浅層」への治療。SMASそのものを強く固定するわけではないので、効果の持続は半年から1年半程度と考えておくのが現実的でしょう。

切開リフト(フェイスリフト)は、耳の前後を切開してSMASを剥離し、引き上げて固定する手術です。SMASの処理には複数の術式があり、医学的にも「どの方法が絶対的に優れている」という一つの正解があるわけではありません。 結局のところ、画一的な術式を当てはめるのではなく、術者が患者様お一人おひとりの骨格や組織の状態を正確に見極め、最適なアプローチを選択する技術が求められます。

私が糸リフトを勧めない場合

ここは正直に話しますが、皮膚のたるみが強い方に糸リフトを行っても、期待する結果にはなりにくい。糸は組織を引き上げますが、余った皮膚を減らすことはできないからです。50代後半で「切りたくないので糸でお願いしたい」と言われたとき、私は一度立ち止まって、何がどれくらい変わるのかを具体的にお伝えするようにしています。期待値の調整をせずに施術だけ行うのが、いちばん不幸な結果を生むと思うからです。

逆に30代後半から40代前半で、まだ皮膚に弾力があり、下垂の初期段階。この層には糸リフトは非常に相性がいい。要は適応を外さないことに尽きます。

支持靭帯についても研究が進んでおり、リフト手術で靭帯を温存すべきか解放すべきかは今も議論が続いている領域です。ただ、頬骨靭帯の解放が中顔面の可動性を決めるという点は、実際に剥離をしていると手の感覚として納得できます。

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脂肪と骨格が原因のたるみ治療法

カウンセリングルームで骨格模型を使ってたるみの仕組みを説明する医師|リノクリニック東銀座

脂肪が主因のたるみに対しては、脂肪吸引や脂肪溶解注射が選択肢になります。顎下(サブメンタル)の脂肪吸引は、二重顎とフェイスラインの改善に対して効果が出やすい部位です。費用の目安は30万〜50万円程度、腫れのピークは術後4〜5日で、2週間で7割、1ヶ月で9割が引くというのが当院でお伝えしている経過です。

ただし注意点があります。皮膚の収縮力が弱い方から脂肪だけを取ると、かえって皮膚が余ってたるむ。だから私は、脂肪吸引の適応を決めるとき、皮膚のつまみ具合と戻り方を必ず確認します。「脂肪を取れば小顔になる」は半分正しくて半分危ない。

ボリュームロスには補う治療を

一方、こけているのに下は余っている、というパターンでは、逆に足す治療が必要です。こめかみのボリューム減少に対するヒアルロン酸注入は系統的レビューもある確立された手法ですし、脂肪注入という選択肢もあります。ただし顔面への脂肪注入には、稀ではあるものの動脈塞栓という重篤な合併症の報告があり、眉間やこめかみへの注入では特に慎重さが求められます。解剖を熟知した上で、注入層と圧を管理することが安全性を左右します。永久型のフィラーについては、数年後に炎症性結節などの遅発性トラブルが報告されており、私は使用しない方針です。

骨格が原因の場合

エラが張っている、面長で中顔面が長い、下顎が後退している。こうした骨格要因がたるみを強調しているケースでは、輪郭形成や顎の手術が根本的な解決になることがあります。特に顎先の前方移動は、首と顎のラインを作る上で効果が大きい。骨格に踏み込むかどうかは慎重な判断が要りますが、「何をやってもフェイスラインが出ない」という方の背景に骨格があることは珍しくありません。

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治療後の経過と当院の術後管理

輪郭手術やフェイスリフトを受けた後、どれくらいで人前に出られるのか。これは全員が気にされる点です。

腫れのピークは術後4〜5日。ここが一番つらい時期ですが、そこを越えれば日ごとに軽くなります。2週間で約7割、1ヶ月で約9割が引く。完全に落ち着くまでは3〜6ヶ月みていただきますが、日常生活という意味では2週間でかなり戻ります。仕事については、早い方だと術後数日で復帰されています。マスクをしていればデスクワークは可能という方が多い。

ここで当院の方針をはっきり書いておきます。骨切りや輪郭形成の術後に、フェイスバンドや包帯で圧迫固定するクリニックもありますが、当院では行っていません。理由は三つ。圧迫していると血腫ができたときに発見が遅れること。気道が圧迫されるリスクがあること。そして、早期からの開口訓練を優先したいことです。

では代わりに何をしていただくか。まず、頭を高くして過ごすこと。就寝時も枕を高めにして、重力を味方につけます。次に、しっかりご飯を食べること。腫れが引く過程には栄養が要りますし、噛むこと自体が回復を助けます。そして早期からの開口訓練。ここを怠ると開口障害が長引きます。

手術をしていて感じるのは、術後の経過を決めるのは手術そのものだけではないということ。同じ術式でも、指示どおり動いてくれる方は明らかに戻りが早い。腫れを気にして家に閉じこもるより、生活リズムをどんどん戻していただくほうが結果的に楽になります。

費用については、糸リフトから切開リフト、輪郭手術まで幅があります。東銀座の当院では、カウンセリングで骨格・脂肪・筋膜の状態を確認した上で、必要な組み合わせと確定金額をご案内しています。

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よくある質問(たるみの原因別治療法)

Q. ほうれい線が深いのですが、これはたるみですか?脂肪ですか?

A. 両方の可能性があります。上を向いて溝が浅くなるなら組織の下垂が主因、変わらないなら頬の脂肪の厚みや支持靭帯による固定が関係していることが多いです。まずどちらの要素が強いかを診察で確認してから、治療法を選ぶことをおすすめします。

Q. 二重顎が気になります。痩せれば治りますか?

A. 体重を落として改善する方もいますが、顎が後退している骨格や、顎下脂肪が多い体質の場合は減量だけでは限界があります。特に横顔で首と顎の境目が浅い方は骨格要因が絡んでいることが多く、脂肪吸引や輪郭治療を含めた検討が必要になります。

Q. 糸リフトを何度も受けていますが持ちが悪くなってきました。次は何を?

A. 糸リフトは皮膚の余剰を減らせないため、たるみが進むと効果を実感しにくくなります。皮膚のゆるみが主体になっている段階であれば、SMASを扱う切開リフトのほうが適していることがあります。現状を診た上でご提案しますので一度ご相談ください。

まとめ|原因別に治療法を選ぶ

  • 顔のたるみは皮膚・脂肪・筋膜(SMAS)・骨格・支持靭帯が複合的に関与する
  • 上を向いて影が消えるかどうかが、下垂タイプかボリューム不足かの手がかりになる
  • 糸リフトは下垂初期に、切開リフトは皮膚の余剰が明らかな段階に適応がある
  • 脂肪が多いタイプは吸引、こけているタイプは補う治療と、方向がまったく逆になる
  • 骨格が背景にある場合、リフト治療だけでは限界があることを知っておく
  • 当院では術後にフェイスバンドによる圧迫固定は行わず、頭を高くする・食べる・開口訓練を重視する

自分のたるみがどのタイプか、鏡だけで判断するのは難しいものです。効果には個人差がありますので、まずは診察で骨格と軟部組織の状態を確認するところから始めましょう。

東銀座のたるみ治療のご案内

リノクリニック東銀座では、外科専門医である私が、輪郭形成・フェイスリフト・脂肪治療など、顔のたるみを原因別に評価して治療法をご提案しています。中央区・銀座エリアはもちろん、東京近郊からのご相談も多くいただいております。初診のご予約はこちら(WEB予約24時間受付)。

関連コラム

参考文献

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  2. Schultz KP, Sherif R, Ganesh Kumar N, et al. Demystifying Deep Layer Face-Lift Techniques: A Systematic Review of Superficial Musculoaponeurotic System Techniques. Plast Reconstr Surg. 2026;157(4):615-620. PubMed / DOI
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  4. Friedmann DP, Hinchee-Rodriguez K, Verma KK. Nonsurgical Temple Volumization with Soft-Tissue Fillers: A Systematic Review of the Literature. Aesthetic Plast Surg. 2025;49(19):5237-5251. PubMed / DOI
  5. Moellhoff N, Kuhlmann C, Frank K, et al. Arterial Embolism After Facial Fat Grafting: A Systematic Literature Review. Aesthetic Plast Surg. 2023;47(6):2771-2787. PubMed / DOI
監修者情報

宮﨑 邦夫

リノクリニック東銀座 院長

【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員

消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。

監修日:2026.09.29

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