院長コラム
「手術した脇の皮膚がボコボコして、指で押すと硬い。このまま一生このままなんでしょうか」。わきが手術のボコボコについて、こういうご相談を受けることがあります。結論から言います。術後のボコボコの大部分は、腫れ・皮下にたまった血液や漿液・そして傷が縮む力(瘢痕拘縮)によるもので、多くは術後3〜6ヶ月かけて少しずつ平らに戻っていきます。ただし術後数日以内に片側だけ急に腫れて痛むような場合は、血腫を疑って早めに診る必要があります。東銀座のリノクリニックでも、この「待っていい凹凸」と「待ってはいけない凹凸」の線引きを最初にお伝えするようにしています。
この記事でわかること
・わきが手術後のボコボコ(硬結・凹凸)が起こる仕組みと、落ち着くまでの具体的な時期
・正常な経過と、すぐ受診すべき異常所見の見分け方
・修正や再手術を「急がない」ほうがいい医学的な理由と判断の目安
・保険で受けられる剪除法(皮弁法)の実際の流れと、術後ケアのポイント
目次
わきが手術のボコボコとは何か
わきが手術後のボコボコとは、脇の皮膚の下にできる硬いしこり(硬結)や、表面がでこぼこと波打つ状態の総称です。医学的には、術後の腫れ・皮下血腫や漿液腫・そして傷が治る過程でできる瘢痕組織の収縮が混ざった状態を指します。病気というより、ほとんどは治癒の途中経過。ここをまず知っておいていただきたいと思います。
改めまして、院長の宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医)です。外科の現場に20年以上いて、腋臭症の手術も数多く担当してきました。
なぜ凹凸ができるのか。腋臭症(わきが)の根本原因であるアポクリン腺は、皮膚の真皮の深い層から皮下脂肪の浅い層にかけて分布しています。臭いを断つには、ここをきちんと取り除かなければなりません。つまり手術とは、皮膚の裏側の組織を意図的に削り取る操作です。削った面と皮膚の間には一時的に隙間ができ、そこに体液がたまり、やがて線維成分で埋まって癒着していく。この「埋まっていく過程」が、触ると硬い板のように感じられる正体です。
実は、一番脇がゴツゴツと硬くなるのは「術後2週間〜1ヶ月」の時期です。 手術直後よりも硬みが増すため、「かえって悪化しているのでは」と驚かれる方も多いのですが、これは皮膚の裏側で組織がしっかり修復されている証拠でもあります。
実際、当院の術後検診でも、患者さんご自身の指で傷口に触れていただきながら「今が硬さのピークです。ここから数ヶ月かけて徐々に柔らかくなっていきますよ」とお伝えしています。ご自身の指で変化を確かめていただくことが、一番の安心につながるからです。
ボコボコが落ち着くまでの期間

おおよその目安をお伝えします。腫れは術後1〜2週間で大部分が引き、硬結(しこり)は術後2週〜1ヶ月でピーク、そこから3ヶ月ほどかけて目に見えて柔らかくなり、6ヶ月〜1年でほとんど気にならない程度まで落ち着いていくケースが多い、というのが私の実感です。
もう少し時間軸に沿って整理します。
STEP 1|術後0〜4日
圧迫固定をしている期間です。脇を強く動かさず、安静を優先していただきます。この時期の見た目は、腫れと固定のあとで判断できません。
STEP 2|術後5日〜2週間
抜糸前後。腫れが引き始める一方で、皮下の瘢痕が作られ始めるため、触ると硬い帯のようなものを感じ始めます。腕を上げるとつっぱる感じが出るのもこの頃。
STEP 3|術後2週〜1ヶ月
硬さのピーク。表面が波打って見える、引きつれるような違和感がある、といった訴えが最も多い時期です。ここで焦らないこと。
STEP 4|術後1〜3ヶ月
瘢痕が成熟に向かい、硬さが徐々に抜けていきます。腕の可動域の違和感もこの頃にかなり改善します。
STEP 5|術後6ヶ月〜1年
瘢痕組織は半年から1年かけてゆっくり柔らかく、白く落ち着いていきます。この時点で残っている凹凸が、いわゆる「最終形」に近いもの。
体質によって差は出ます。ケロイド体質の方、もともと肥満傾向のある方、喫煙されている方は、瘢痕が落ち着くまでの時間が長くなる傾向があると感じています。海外の報告でも、体格や脂質代謝と腋臭症の関連が検討されており、皮下脂肪の厚さは術後の経過にも影響する要素のひとつでしょう。
わきが手術でボコボコになる原因
原因は大きく4つに分けられます。腫れ、血腫・漿液腫、瘢痕拘縮、そして皮下組織の不均一(取りムラ・削りムラ)です。この4つを分けて考えることが、正しい対処の第一歩になります。
1つ目、腫れ。術後数日から2週間程度の、組織液による膨らみ。時間が解決します。
2つ目は「血腫(けっしゅ)と漿液腫(しょうえきしゅ)」です。 皮膚の裏側と脂肪層の間に、血液や滲出液がたまってしまう状態を指します。
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片側だけが不自然に膨らんでいる
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押すとタプタプと波打つように動く
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皮膚の色が紫色っぽくなってきた
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ズキズキとした強い痛みがある
こうしたサインが見られたときは、自然に治るのを待たずにすぐ処置を行う必要があります。血腫をそのままにすると皮膚への血流が遮られ、皮膚壊死(組織が傷むこと)を引き起こすリスクがあるためです。
実際の医学データ(系統的レビュー)でも、手術における血腫や皮膚壊死の発生率は数%程度と報告されており、決して油断できない合併症のひとつです。だからこそ、当院ではこの症状に対してのみ「しばらく様子を見ましょう」という対応はせず、迅速に適切な処置を行っています。
3つ目、瘢痕拘縮。傷が治るときに組織が縮む力です。脇という部位は腕の動きで常に皮膚が伸び縮みするため、拘縮が出ると「腕を上げるとスジが突っ張る」「脇の中央が引き込まれて凹む」といった症状になります。これは早期からの軽いストレッチで改善が期待できる部分。
4つ目、皮下組織の不均一。アポクリン腺を取り除く際、皮膚を薄く均一に処理できていないと、厚い部分と薄い部分がまだらになり、凹凸として残ります。手術をしていて感じるのは、ここが術者の手仕事の差が最も出るところだということです。海外では、皮下の隔壁(septa)をあえて一部残して皮膚への血流を保ちながら、皮弁を2ミリ程度まで薄く均一に処理する工夫が報告されています。薄くしすぎれば壊死、残しすぎれば臭いの再発と凹凸。このバランスを探る作業が手術の本体だと私は思っています。
なお、ミラドライのような機器による治療を先に受けた後に手術を希望される方もいます。汗が減ることで臭いが軽くなることはありますが、臭い自体は残る場合が多く、さらに皮下が瘢痕化するため、あとから手術を行う際に層が剥がれにくくなります。結果として凹凸も出やすい。臭いの元を断つという点では、アポクリン腺そのものを取り除く手術が根本的な治療になります。
ボコボコを防ぐ術後ケアと固定

術後のボコボコを最小限に抑える一番の鍵は、「術後4日間の正しい圧迫固定」と、「その後の適切なストレッチ」です。 当院では、手術の翌朝からシャワーの際に一度圧迫を外していただき、浴び終わったらまた固定し直すという形で、合計4日間しっかり圧迫を続けていただくようお願いしています。
なぜしっかり圧迫する必要があるのでしょうか。手術で皮膚の裏側を処理したあとは、皮膚と脂肪層の間にどうしても小さな隙間ができてしまいます。この隙間をピタッと密着させて、血や汁がたまらないようにするのが圧迫の大きな役割です。もしここで固定が緩んでしまったり、腕を大きく動かして皮膚と中の組織がズレるような強い力がかかると、血腫ができ、ボコボコとした凹凸の原因になってしまいます。
そのため、術後4日間だけは「重い荷物を持つ」「腕を頭の上にグッと上げる」「重いものを引っ張る」といった動作は控えていただくようにお願いしています。
固定を外した後のケアも書いておきます。
- 術後5日目以降:日常生活は戻してかまいません。ただし激しい運動と飲酒は2週間程度控えめに。
- 術後2週間以降:腕をゆっくり真上に上げる、壁に手をついて脇を伸ばす。1日数回、痛くない範囲で。硬結が平らになるのを助けます。
- 術後1ヶ月以降:硬い部分を指の腹で円を描くように軽くほぐす。強く揉む必要はありません。
- 傷あと対策:テープ保護や保湿を3〜6ヶ月続けると、瘢痕が目立ちにくくなる傾向があります。
カウンセリングでよく聞かれるのが、「圧迫は長いほうが効きますか」という質問。これには、必要な期間を越えて締め続けても利点は乏しく、むしろ皮膚への血流を妨げる懸念があるとお答えしています。短く、確実に。それが私の方針です。
ボコボコが治らない時の受診目安
受診の目安はシンプルです。「急に起きた変化」はすぐ、「変わらない硬さ」は焦らず定期検診で。この二つに分けて覚えてください。
すぐにご連絡いただきたい所見を挙げます。術後3日以内に片側だけパンパンに腫れてきた。押すと強く痛む、または拍動するような痛みがある。皮膚の色が紫や黒っぽく変化してきた。発熱、傷からの膿や強い赤み・熱感。これらは血腫・感染・皮膚のトラブルを示すサインで、早期に処置をすれば回復も早く、結果として凹凸も残りにくくなります。
一方で、「硬いけれど痛くない」「左右で少し差がある」「突っ張る感じが残っている」——この段階は、時間と自己ケアで改善していく範囲であることがほとんどです。ここで修正手術を急ぐべきではありません。理由は3つあります。瘢痕が成熟する前に触ると、かえって新しい瘢痕を作ってしまうこと。術後6ヶ月までは自然に柔らかくなる余地が大きいこと。そして、腫れが残った状態では左右差の正確な評価ができないこと。
では、いつ修正を考えるか。私が目安にしているのは、術後6ヶ月以上経過しても硬さや陥凹が改善せず、腕の可動に支障が出ている場合、あるいは明らかな取り残しによる臭いの残存を伴う場合です。これは最低ラインで、実際には1年待って判断することも珍しくありません。はっきり言いますが、焦って触るより、待って評価するほうが最終的な結果は良くなります。
20代の方で、術後1ヶ月の検診のたびに「ここが硬い」と不安を訴えておられたケースがありました。写真を撮って毎回比較したところ、3ヶ月目には本人も「あ、前より柔らかい」と。半年の時点で凹凸はほぼ分からなくなっていました。記録を残して比べること。これが不安への一番の処方箋かもしれません。
わきが手術は保険で受けられる?
受けられます。腋臭症(わきが)の手術は健康保険の適用対象で、当院では保険診療の剪除法(皮弁法)を行っています。自己負担は3割負担で4〜5万円程度、静脈麻酔を併用しても約45,000円が目安です。確定金額はカウンセリングでご案内します。
剪除法は、脇のシワに沿って切開し、皮膚を裏返してアポクリン腺を直視下で取り除く方法です。当院の切開の長さは約28ミリ。目で見ながら確実に腺を処理できるため、再発率の低さという点で優れた方法とされています。海外の系統的レビューでも、各種治療法の中で手術による切除は再発が最も少ない群に分類されると報告されています。
ご自身がわきがかどうか迷っている方へ、簡単なセルフチェックを。耳垢が湿っている。白いシャツの脇が黄ばむ、汗ジミが目立つ。制汗剤を使っても夕方には臭いが戻る。家族に同じ悩みの人がいる。人に臭いと言われたことがある。複数当てはまるなら、一度診察を受ける価値はあると思います。
治療法はひとつではありません。臭いより「汗の量」が主な悩みで、汗ジミが気になる方にはボトックス注射という選択肢もあります。外用薬で対応できる方もいます。どの方法が合うかは、診察で症状を確認したうえでご説明します。
よくある質問
Q. 手術した脇がボコボコして硬いのですが、失敗ですか?
A. 多くは失敗ではなく、治癒の途中経過です。術後2週〜1ヶ月は瘢痕が作られる時期で、硬さが最も強く出ます。3ヶ月で柔らかくなり、6ヶ月〜1年でほぼ気にならなくなる方が大半です。ただし急な腫れや痛みを伴う場合は血腫の可能性があるため、早めにご相談ください。
Q. わきが手術のあと、お風呂やシャワーはいつから入れますか?
A. 手術の翌朝から、圧迫を外してシャワーを浴びていただけます。シャワー後は再び固定を戻し、圧迫自体は術後4日間続けます。湯船につかるのは抜糸後からが目安です。脇をこすらず、泡で優しく洗う程度にしてください。
Q. 脇の凹凸が気になります。マッサージで早く治せますか?
A. 術後2週間を過ぎてからの軽いストレッチとやさしいマッサージは、硬結が平らになるのを助けると考えています。ただし術後すぐの強い刺激は血腫や炎症の原因になります。痛みが出ない範囲で、指の腹を使って円を描くように。強く揉む必要はありません。
Q. ボコボコが残ったら再手術になりますか?
A. すぐに再手術にはなりません。私は術後6ヶ月、できれば1年の経過を見てから判断しています。瘢痕が成熟する前に手を加えると新たな瘢痕を作る可能性があるためです。可動域の制限や臭いの残存がある場合は、その時点で修正の方法を一緒に検討します。
Q. 制汗剤が効かず、人に臭いと言われたことがあります。手術しかないですか?
A. 手術だけが選択肢ではありません。汗の量が主な悩みならボトックス注射、軽度なら外用薬で対応できることもあります。ただし臭いの元であるアポクリン腺を減らす根本的な治療は手術です。どれが適しているかは診察で判断します。
まとめ:わきが手術のボコボコとの付き合い方
- 術後のボコボコの正体は、腫れ・血腫や漿液腫・瘢痕拘縮・皮下組織の不均一の4つ
- 硬さのピークは術後2週〜1ヶ月、3ヶ月で柔らかくなり、6ヶ月〜1年で落ち着くことが多い
- 急な片側の腫れ、強い痛み、皮膚の色の変化、発熱は早期受診のサイン
- 修正の判断は術後6ヶ月以降。焦って触らないほうが結果は良くなる
- 腋臭症の手術は保険で受けられ、当院の切開は約28ミリ。手術の翌朝には圧迫を外してシャワーを浴びられます
脇の臭いや汗ジミの悩みは、人に相談しづらいぶん、ひとりで抱え込みやすいものです。術後の経過についても同じこと。気になる凹凸があれば、自己判断で様子を見続けず、一度診せてください。なお、治療の経過や効果には個人差があります。
当院のご案内
リノクリニック東銀座は、東京都中央区銀座3丁目11-13 松本銀座ビル9階(東銀座駅から徒歩3分)にあります。院長は宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医、外科経験20年以上)。腋臭症(わきが)に対する保険診療の剪除法を中心に、婦人科形成、輪郭形成などの外科治療を行っています。脇の臭い、汗ジミ、他院での手術後の凹凸や経過のご相談も承ります。銀座・東銀座エリアで腋臭症の治療をお考えの方は、まず診察で症状を確認させてください。初診のご予約はこちら(WEB予約24時間受付)。
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参考文献
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監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2026.11.02



