院長コラム
「制汗剤を塗っても夕方には脇が臭う」「シャツの脇だけ黄ばんでしまう」「人に臭いを指摘されたことがある」。こうしたお悩みを抱えて、東銀座の診察室には毎週のように患者さんがいらっしゃいます。はじめにお伝えしておきたいのは、ワキガ手術の「剪除法(皮弁法)」は、臭いの原因であるアポクリン腺を医師が自分の目でしっかり確認しながら確実に取り除く方法であり、健康保険が適用されるということです。当院では切開の長さを約28ミリに抑え、手術の翌朝には圧迫を一時的に外してシャワーを浴びていただけるようにしています。「痛そう」「古い手術なのでは」と言われることもありますが、実際はその逆です。再発の少なさという確実性において、今なお治療の中心に据えられている優れた術式です。この記事では、手術のメリットだけでなく、傷跡や固定期間といった避けて通れない課題についても包み隠さずお伝えします。
この記事でわかること
・腋臭症(ワキガ)の原因と、手術でしか届かない部分がどこかということ
・ボトックスや各種の機器治療と剪除法の違い、どう使い分けるか
・剪除法の実際の手術内容、切開約28ミリ、傷跡と固定のリアルな話
・保険適用の条件と、3割負担での費用の目安、当日から1ヶ月までの流れ
目次
ワキガとは?手術が必要な理由
腋臭症(ワキガ)とは、脇にあるアポクリン汗腺から出た汗を皮膚の常在菌が分解することで、特有のにおいが発生する状態を指します。汗そのものは無臭です。においを作っているのは菌の分解産物であって、犯人は「汗の量」ではなく「アポクリン腺の存在」だ、という点がすべての出発点になります。
アポクリン腺は毛包に付随して存在し、脇では皮下脂肪の浅い層、具体的には真皮と皮下脂肪の境目あたりに密集しています。思春期にホルモンの影響で発達し、以後ほとんど自然には減りません。だから制汗剤でいくら表面を抑えても、腺そのものが残っている限りにおいの源は残り続けます。ここが、患者さんが一番腑に落ちないところではないでしょうか。「毎日お風呂に入っているのに」と泣きそうな顔でおっしゃる方がいますが、清潔さの問題ではないのです。
自分で確認できるサイン
診察の前に、ご自身でチェックできる項目があります。
- 耳垢が湿っている、または飴状でべたつく
- 白いシャツの脇が黄色く変色する
- ご両親のどちらかに同じ悩みがある
- 脇毛が太く、1本の毛穴から複数本生えている
- 脱いだ服の脇のにおいを、自分でもはっきり感じる
耳の中の耳垢腺もアポクリン腺の仲間なので、湿性耳垢はひとつの目安になります。ただし湿っていても臭わない方はいますし、逆もあります。私は診察のとき、ご本人の自己評価、ガーゼテストでの実際のにおい、衣類の黄ばみ、ご家族歴の四点を合わせて判断するようにしています。自己申告だけで決めてしまうと、本当はそこまで強くない方に手術を勧めることになりかねないからです。
海外の総説でも、腋臭症は本人の社会生活や心理面に大きな影響を与える疾患として扱われており、単なる美容の問題ではないと位置づけられています。恋人に指摘された、職場でデスクを離れた隙に消臭スプレーを撒かれていた——そういう話を診察室で聞くたびに、これは立派な治療対象だと改めて思います。
ワキガ手術以外の治療法との違い

まず押さえていただきたいのは、治療の選択肢は手術だけではない、ということです。症状の程度によっては、手術をしないほうがよいケースもあります。
市販の制汗剤や塩化アルミニウム外用薬は、汗の出口を塞ぐことで発汗を減らします。軽度であればこれで十分コントロールできる方もいます。ただ、においの元であるアポクリン腺には作用しません。
汗の量そのものがつらい方には、ボトックス注射をお勧めしています。エクリン汗腺に向かう神経の信号を抑える薬剤で、注射から数日で発汗が減り、効果はおおむね4〜6ヶ月続きます。脇の汗ジミが恥ずかしくて色の薄い服が着られない、プレゼンの前に脇が濡れる、といった多汗の悩みにはよく合います。メスを入れずに済むのも利点でしょう。ただしこれも、においの本体を取り除くわけではありません。
機器による治療、たとえばマイクロ波を使ったミラドライのような方法もあります(当院には機械がありません)。汗が減ることで結果的ににおいが軽くなる方はいます。しかし、においが残ることは少なくなく、そこが最大の悩ましさです。さらに私が気にしているのは、照射によって皮下組織が瘢痕(はんこん)化する点です。瘢痕化した脇は、後から手術をしようとしたときに層が分かりにくくなり、剥離がやりにくくなります。実際、他院で機器治療を受けた後に来院された方の脇は、皮膚と皮下のあいだが癒着していて、本来なら滑らかに剥がれる面がなかなか出てきません。においの元を断つという一点で考えるなら、アポクリン腺を物理的に取り除く手術が根本的な治療になります。
これまでに行われた複数の治療法を比較する臨床研究などでも、皮膚の裏側からアポクリン腺を直接取り除く方法が、他のどの保存的治療よりも確実な結果を出しています。どれを選ぶかは、においの強さ、汗の量、年齢、そしてどこまでを望まれるかで変わります。当院では診察でにおいと発汗の状態を確認したうえで、ご説明しています。
剪除法とはどんなワキガ手術?
剪除法(せんじょほう、皮弁法とも呼びます)とは、脇のしわに沿って皮膚を切開し、皮膚の裏側を直接めくり返して、アポクリン腺を目で見ながら剪刀(はさみ)で削ぎ取っていく手術です。英語では direct vision(直視下)という言葉が使われます。ここで申し遅れましたが、私は院長の宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医)です。外科の現場に20年以上立ってきた人間として言わせていただくと、「見ながら取る」ということの価値は、他の何にも代えがたいものがあります。
吸引やシェーバーを使う方法は、器具を皮下に入れてブラインドで組織を削ります。切開は小さくて済みますが、取り残しが出るかどうかは術者の手の感覚次第。一方、剪除法では皮弁(めくり返した皮膚)を裏から光にかざすように観察すると、アポクリン腺が白っぽい粒状の塊として見えます。毛根もはっきり見えます。それを一つずつ処理していくので、取り残しが構造的に起こりにくい。再発例に対して二重切開から直視下でアポクリン腺を処理したところ、12ヶ月以上の経過観察でにおいが消失または著明に改善したという報告もあり、「見て取る」ことの再現性は臨床的にも裏づけられています。
当院の保険の腋臭症手術は、切開の長さ約28ミリ。圧迫固定は術後4日間続けますが、翌朝からはシャワーのときに外して浴びられます。皮膚の切開そのものは短くても、皮下の剥離範囲さえしっかり確保できれば、アポクリン腺は十分に見渡せます。切開が短いほど皮膚への血流が保たれやすく、傷も目立ちにくい。とはいえ短ければ短いほどよいという単純な話でもなく、視野が狭くなれば取り残しのリスクが上がります。私はこの28ミリという長さを、視野の確保と傷の小ささの両方が成り立つ落としどころだと考えています。
手術時間は両脇で60〜90分程度。局所麻酔で行いますが、麻酔の注射の痛みが不安な方には静脈麻酔を併用し、うとうとしているあいだに終わるようにしています。「痛い手術」という評判は、おそらく麻酔技術が今ほど整っていなかった時代の記憶ではないでしょうか。手術中に痛みを訴える方は、私の診療ではほとんどいません。
剪除法の傷跡とダウンタイム

あえて包み隠さずお伝えしますが、剪除法で確実な効果を得るためには、「傷跡」と「術後の固定」という一定の代償(ご負担)がどうしても伴います。
傷跡は約28ミリの線状になりますが、脇のしわに沿わせてデザインするため、腕を下ろしていればほとんど目立ちません。経過としては、術後1〜2ヶ月は赤みが強く、3〜6ヶ月かけて徐々に白く平らになっていきます。体質により一時的に傷が盛り上がる(肥厚性瘢痕)ケースもありますが、その場合はテーピングや外用薬でしっかりケアしていきます。「全く跡が残らない」とはお約束できませんが、半年から1年経てば、どこを切ったのか自分でも探さないと分からないくらいに馴染んでいく方が大半です。
また、固定については、剥離した皮膚を皮下に密着させて血腫を防ぐために、術後4日間はしっかりとした圧迫固定が必要です。ここを怠ると血腫や皮膚の血流障害を招く恐れがあるため、4日間だけはどうかご協力をお願いしたいところです。とはいえ、最初の一晩さえ越えてしまえば、翌朝には圧迫を一度外してシャワーを浴びていただけます。新しいガーゼで巻き直して残りの期間を過ごす形になりますので、「何日間もお風呂に入れない」という昔のイメージとは全く異なります。」
腕を肩より上に挙げる動作は、術後1週間ほど控えてください。つり革、高い棚、洗髪のときの動作が要注意。デスクワークなら術後2〜3日で復帰される方が多く、力仕事やスポーツは2〜3週間空けていただきます。抜糸は術後7日前後です。
ワキガ手術は保険で受けられる?
受けられます。腋臭症と診断されれば、剪除法は健康保険の対象です。厚生労働省の診療報酬において「腋臭症手術(皮弁法)」として点数が定められており、美容目的ではなく疾患の治療として扱われます。ここを知らずに何年も我慢されていた方が、本当に多い。
費用の目安は、3割負担で4〜5万円程度です。静脈麻酔を併用した場合でも約45,000円で収まります。これに初診料や術後の処置料、薬代が加わります。確定金額は診察のうえでご案内しますので、カウンセリングでお尋ねください。
保険診療の対象や受診の流れについては、こちらもあわせてご覧ください。
保険が効くからといって、誰にでも手術をお勧めするわけではありません。私が手術を提案するのは、においがご本人の生活を実際に妨げている場合です。進学や就職、人間関係に影響が出ている、あるいは外出前に何十分もにおい対策に費やしている——そういう段階であれば、迷わず手術を選択肢に入れてよいと思います。逆に、ご自身では気になるけれど診察ではほとんどにおわない、という方には、まず外用や注射から始めましょうとお話しします。中央区という土地柄、仕事帰りに相談だけ、という方もよくいらっしゃいます。
剪除法の手術当日と術後の流れ
当日から1ヶ月後までを、時系列でお示しします。
STEP 1|診察・カウンセリング
においの程度を実際に確認し、発汗量、既往歴、過去の治療歴を伺います。脇に機器治療の既往がある方は、瘢痕の有無も触診で確認します。手術日を決め、必要に応じて血液検査を行います。
STEP 2|手術当日(所要2〜3時間)
脇毛は前日までに剃っておいていただきます。デザインを行い、局所麻酔、ご希望があれば静脈麻酔を併用。約28ミリの切開から皮弁を起こし、アポクリン腺と毛根を直視下で処理します。両脇で60〜90分。縫合後、ガーゼで圧迫固定して終了です。お帰りはご自身で可能ですが、静脈麻酔を使った日は車の運転をお控えください。
STEP 3|翌朝
圧迫を外してシャワーを浴びていただけます。傷を濡らして構いません。洗った後は新しいガーゼを当て、再び圧迫します。この日に来院いただき、血腫がないか確認します。
STEP 4|術後4日目まで
圧迫固定を継続。腕を挙げる動作は控えめに。痛みは鎮痛薬でコントロールできる程度で、内服が必要なのは2〜3日という方がほとんどです。
STEP 5|術後7日前後
抜糸。この頃から腕の可動範囲を戻していきます。
STEP 6|術後1ヶ月〜6ヶ月
傷の赤みが徐々に落ち着いていきます。においについては、術後1ヶ月の時点で「自分でもう分からない」とおっしゃる方が多い印象です。ただし脇の皮膚が完全に落ち着くまでは半年ほどかかると見ておいてください。
銀座・東銀座で働いている方だと、金曜に手術を受けて月曜から出勤、という組み方をされるケースがよくあります。
よくある質問
Q. ワキガ手術の剪除法って痛いと聞いたのですが、本当ですか?
A. 手術中の痛みはほとんどありません。局所麻酔に加えて静脈麻酔を併用できるため、眠っているあいだに終わります。術後2〜3日は突っ張る感じや鈍い痛みが出ますが、処方する鎮痛薬で十分対応できる程度です。「思ったより楽でした」と言われることが多いです。
Q. 剪除法は古い手術だと聞きました。新しい方法のほうがいいのでは?
A. 古いのではなく、確立されているとお考えください。アポクリン腺を目で見ながら取るという点で再発が少なく、海外の比較研究でも皮下のアポクリン腺を直接処理する方法が良好な成績を示しています。新しい機器治療はにおいが残ることがあり、皮下が瘢痕化すると後の手術が難しくなります。
Q. 手術の後、どれくらいでお風呂に入れますか?
A. 翌朝には圧迫を外してシャワーを浴びていただけます。傷を濡らしても問題ありません。ただし湯船に浸かるのは抜糸後、術後7〜10日ほど経ってからにしてください。圧迫固定そのものは術後4日間続けていただきます。
Q. 脇の傷跡はどのくらい目立ちますか?
A. 当院の切開は約28ミリで、脇のしわに沿わせるため腕を下ろせばほぼ見えません。術後1〜2ヶ月は赤みがありますが、3〜6ヶ月かけて白く平らになっていきます。体質により傷が盛り上がることもあり、その場合はテープや外用薬で対応します。
Q. 制汗剤が全然効かないのですが、それだけで手術の対象になりますか?
A. 制汗剤が効かないことは手術を検討する理由のひとつになります。ただし診察でにおいの程度を確認したうえで判断します。汗の量が主な悩みであればボトックス注射が合う場合もありますので、まずは実際の状態を診せていただくのが近道です。
ワキガ手術 剪除法のまとめ
要点を整理します。
- 腋臭症(ワキガ)のにおいの元はアポクリン腺であり、外用や制汗剤では腺そのものには届かない
- 剪除法(皮弁法)は皮膚をめくってアポクリン腺を直視下で取り除く方法で、再発の少なさに強みがある
- 腋臭症の手術は健康保険で受けられ、3割負担で4〜5万円程度、静脈麻酔を併用しても約45,000円が目安(確定金額は診察時にご案内します)
- 当院の切開は約28ミリ。手術の翌朝には圧迫を外してシャワーを浴びられます
- 圧迫固定は術後4日間、抜糸は7日前後、腕を高く挙げる動作は1週間ほど控えてください
- 汗の量が主な悩みならボトックス注射という選択肢もあり、どれを選ぶかは診察で症状を確認したうえでご説明します
なお、効果には個人差があります。においの強さも、傷の治り方も、人それぞれです。だからこそ、ネットの情報だけで結論を出さず、一度診せていただきたいと思っています。何年も一人で抱えてきた悩みが、1時間半の手術で変わることがある。その場面に何度も立ち会ってきました。
当院のご案内
リノクリニック東銀座
院長:宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医、外科経験20年以上)
所在地:東京都中央区銀座3丁目11-13 松本銀座ビル9階(東銀座駅から徒歩3分)
腋臭症(ワキガ)に対する保険適用の剪除法(皮弁法)のほか、多汗に対するボトックス注射、婦人科形成、輪郭形成などを行っています。東京・銀座エリアで脇のにおいにお悩みの方、過去に他の治療を受けたけれど改善しなかった方も、まずは診察でご相談ください。においの程度と発汗の状態を確認したうえで、手術が適しているかどうかを率直にお伝えします。
初診のご予約はこちら(WEB予約24時間受付)
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参考文献
- Chen B, Ren C, Lu H, et al. Treatment of Recurrent Axillary Osmidrosis: Trimming and Electrocoagulation of Apocrine Glands Under Direct Vision Through Double Incisions. Ann Plast Surg. 2021;87(5):e103-e106. PubMed / DOI
- Morioka D, Nomura M, Lan L, et al. Axillary Osmidrosis: Past, Present, and Future. Ann Plast Surg. 2020;84(6):722-728. PubMed / DOI
- Sun P, Wang Y, Bi M, et al. The Treatment of Axillary Odor: A Network Meta-Analysis. Med Sci Monit. 2019;25:2735-2744. PubMed / DOI
監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2026.10.16



