院長コラム

ワキガ手術は切らない方法で治る?外科専門医が語る適応と限界

「ワキガ手術は切らない方法でなんとかなりませんか」。カウンセリングで、これは本当によく聞かれる質問です。結論から言います。汗の量を減らす目的なら、切らない治療(ボトックス注射やマイクロ波治療)は十分に選択肢になります。ただし、においの元であるアポクリン汗腺そのものを取り除くことはできないため、においが残るケースが少なくありません。においを根本から断つことを目指すなら、アポクリン汗腺を直接切除する手術が現時点での基本です。しかもこの手術は保険で受けられます。東銀座のリノクリニックで日々脇の診察をしている立場から、メリットだけでなく限界もはっきりお伝えします。

この記事でわかること

  • 腋臭症(ワキガ)の原因と、自分でできるセルフチェックの方法
  • 切らない治療(制汗剤・外用薬・ボトックス・マイクロ波)の適応と限界、再発リスク
  • 保険適用のワキガ手術(剪除法)の中身、切開の長さ、術後の経過
  • 切らない治療と手術、どちらを選ぶべきかの考え方

ワキガ手術と切らない治療の違い

まず定義から整理します。腋臭症(ワキガ)とは、脇に存在するアポクリン汗腺から分泌された汗が、皮膚の常在菌によって分解されることで独特のにおいを発する状態です。エクリン汗腺から出るいわゆる「汗」そのものはほぼ無臭で、においの主役はあくまでアポクリン汗腺。ここが理解の出発点になります。

つまり、ワキガ手術と切らない治療の最大の違いは「アポクリン汗腺を物理的に取り除くかどうか」です。手術は皮膚の裏側から汗腺を目で見ながら切除します。切らない治療は、汗腺の働きを抑えたり、熱で損傷させたりするアプローチ。この差が、効果の持続性とにおいの残り方にそのまま出てきます。

初めまして。リノクリニック東銀座で院長を務めている、宮﨑 邦夫です。日本外科学会認定の外科専門医として、これまで20年以上にわたり、日々メスを握り切開と縫合に向き合ってきました。東銀座のリノクリニックで日々脇の診察をしている立場から、正直に申し上げて、においの問題を「表面から何とかする」のには外科医として限界があると感じています。

セルフチェックとして私が診察で確認しているのは次の四点です。

STEP 1|耳垢が湿っているか

綿棒が茶色く湿る、耳垢がキャラメル状になる方はアポクリン汗腺が多い傾向があります。これは遺伝的な体質と関連します。

STEP 2|白いシャツの脇が黄ばむか

汗ジミが黄色っぽくなるのはアポクリン汗腺由来の成分が含まれるためです。

STEP 3|家族に同じ悩みの人がいるか

腋臭症は優性遺伝の形をとることが多く、ご両親のどちらかに同じ体質があるケースが目立ちます。

STEP 4|市販の制汗剤が効かないか

制汗剤を使っても夕方にはにおう、人に臭いと言われたことがある。この段階なら医療機関で相談する価値があります。

切らない治療の適応と限界とは

脇のにおいが気になり白いシャツの脇に手を当てて確認する女性|リノクリニック東銀座

切らない治療が向いているのは、汗の量が主な悩みの方、においは軽度〜中等度の方、そして今すぐ手術の時間が取れない方です。逆に、においが強く「根本的に解決したい」という方には力不足になりやすい。これが私の率直な評価です。

制汗剤・外用薬

塩化アルミニウム外用薬は汗の出口を一時的に塞ぎ、発汗を抑えます。手軽ですが毎日続ける必要があり、かぶれる方もいます。これまでに発表された国内外の研究データを見ても、脇の皮膚pHを弱酸性に傾ける外用剤がにおいの軽減に有効だったという報告もあり、においは皮膚の細菌バランスとも深く関わっていることが分かってきました。ただしこれも菌側へのアプローチであって、汗腺そのものには触れていません。

ボトックス注射

汗の量に悩んでいる方には、私はボトックス注射を積極的におすすめしています。神経から汗腺への信号を遮断するため、脇汗の量はしっかり落ちます。効果の持続はおおむね4〜6ヶ月。汗ジミで服が選べない、制汗剤が効かないという多汗の悩みには相性がいい治療です。ただ、においに対しては「汗が減った分だけ軽くなる」程度にとどまることが多く、アポクリン汗腺の分泌自体を止めるものではありません。

マイクロ波治療(ミラドライ)

マイクロ波で皮下の汗腺層を加熱し、汗腺にダメージを与える治療です。切開しないので傷跡が残らないのが最大の利点でしょう。海外の患者報告アウトカムを用いた比較試験でも、汗とにおいの両方のスコアが改善したと報告されています。

ただ、ここは正直に話します。限界が三つあります。

ひとつ目。汗が減ることでにおいが軽くなることはあっても、においが完全になくなるわけではなく、残るケースが少なくありません。熱が届く深さには限りがあり、脂肪層寄りに存在するアポクリン汗腺を取りこぼすからです。

ふたつ目。再発の可能性があること。熱で損傷を受けた汗腺が部分的に機能を回復すると、時間が経ってからにおいが戻ることがあります。複数回の照射が必要になる方もいます。

三つ目。これが意外と知られていません。皮下に熱が加わると、その部分が瘢痕(はんこん)化します。繊維質が固くなり、皮膚と皮下組織が癒着した状態になるのです。後になって手術を受けようとしたとき、皮膚を薄く剥がす操作が格段にやりにくくなる。実際に他院でマイクロ波治療を受けた後の方を手術していると、組織の剥離に通常より時間がかかると感じる場面があります。これは患者さんにとって不利益です。

におい自体を断つことを考えるなら、アポクリン汗腺を取り除く手術が根本的な治療になる。遠回りに思えても、私はそう考えています。

切らない治療で臭いは消える?

答えは「軽くはなるが、消えるとは限らない」です。特に中等症以上の腋臭症では、切らない治療だけで満足される方の割合は決して高くありません。

その理由は解剖にあります。アポクリン汗腺は真皮の深層から皮下脂肪の浅い層にかけて、ブドウの房のように分布しています。毛根に付随して存在するため、毛の生えている範囲より少し広く散らばっていることも珍しくない。外から熱や薬剤を届けようとすると、どうしても「届く範囲」と「届かない範囲」が生まれます。

これまでに発表された10種類の腋臭症治療を比較したさまざまな研究データをまとめて解析した結果でも、皮下の汗腺を直接処理する方法が、単独の非侵襲的治療より良好な成績を示したと報告されています。つまり、世界的に見ても「取る」ことの優位性は一定の支持を得ている。

カウンセリングでこう聞かれたとき、私はいつもこうお答えしています。「汗を止めたいのか、においを消したいのか。そこをはっきりさせましょう」と。目的が汗ならボトックス。目的がにおいなら手術。この整理だけで、迷いの大半は解けます。

もちろん「まずは切らない方法から試したい」というお気持ちも理解できます。ただ、その順番を選ぶなら、将来手術を受ける可能性も念頭に置いたうえで決めていただきたい。メリットだけを聞いて選んだ結果、後で選択肢が狭まるのは避けたいのです。

ワキガ手術は保険でできる?

できます。腋臭症は厚生労働省が定める診療報酬上の手術項目に含まれており、医師が腋臭症と診断すれば健康保険が適用されます。自己負担は3割負担で4〜5万円程度。静脈麻酔を併用しても約45,000円が目安です(確定金額はカウンセリングでご案内します)。

ここは意外に思われるかもしれません。「ワキガの手術は高額」というイメージをお持ちの方がとても多い。実際、初診で費用をお伝えすると驚かれることがよくあります。においで長年悩んできた方ほど、保険で治療できると知らないまま過ごされているのです。だからこそ私は、まず診察を受けてほしいと思っています。

当院で行っているのは保険適用の剪除法(せんじょほう/皮弁法)です。脇のシワに沿って皮膚を切開し、皮膚を裏返して、真皮側に付着しているアポクリン汗腺を医師が直接目で見ながらハサミで切除していく術式。目視下で処理するので取り残しが少なく、においの再発リスクを抑えやすいのが最大の利点です。

当院の切開の長さは約28ミリ。一般的な剪除法と比べても小さい切開で、脇のシワのラインに沿わせるため、傷は時間とともに目立ちにくくなっていきます。「切らない」とまではいきませんが、「ほとんど切らないに近い切開で、汗腺はしっかり取る」。このバランスを私は重視しています。

保険診療の仕組みや対象については、こちらもあわせてご覧ください。 保険診療について見る 保険の料金を確認する

ワキガ手術の流れと術後の経過

クリニックのカウンセリングルームで医師から脇の治療について説明を受ける患者|リノクリニック東銀座

手術は局所麻酔で行い、片脇あたり30〜40分、両脇で1〜1時間半程度。日帰りです。緊張が強い方には静脈麻酔を併用し、眠っている間に終わらせることもできます。

STEP 1|診察とデザイン

毛の生えている範囲を確認し、汗腺が分布している領域を見積もってマーキングします。私は毛の範囲より一回り外側まで処理範囲に含めるようにしています。ここを削ると再発につながるからです。

STEP 2|切開と剥離

脇のシワに沿って約28ミリ切開し、皮膚を裏返します。

STEP 3|アポクリン汗腺の切除

真皮直下に白く粒状に見えるのがアポクリン汗腺です。これを一つずつ剪刀で除去していきます。地味な作業ですが、ここの丁寧さが結果のすべてを決めると言っていい。

STEP 4|縫合と圧迫固定

皮膚を元に戻して縫合し、ガーゼで圧迫固定します。皮膚が下の組織に生着するまでのステップです。

術後の経過で、患者さんが一番気にされるのが「いつからシャワーに入れるか」。当院では手術の翌朝、検診のときに圧迫を外してシャワーを浴びていただけます。そのうえで圧迫固定自体は術後4日間続けていただきます。つまり「圧迫は4日間だが、翌朝からシャワーは可能」ということ。ここはよく誤解されるので、はっきりお伝えしておきます。

腕の動きは術後1週間ほど控えめに。重いものを持つ、腕を大きく上げる動作は避けてください。抜糸は術後7日前後。デスクワークであれば翌日から復帰される方もいますが、私は数日ゆとりを持つことをおすすめしています。運動や飲酒は2週間程度控えていただき、傷が赤みを帯びる時期は3ヶ月前後で落ち着いてくることが多い印象です。

切らない治療と手術の選び方

選び方の基準はシンプルです。悩みの主体が「汗」ならボトックスなどの切らない治療から、悩みの主体が「におい」なら手術から。この軸で考えていただくのが、遠回りが少ないと思います。

ただ、ご自身の腋臭症がどの程度なのかを自己判断するのは難しい。人に臭いと言われた経験があって深刻に悩んでいるのに、診察してみると軽症というケースもあれば、逆に「そこまで気にしていない」とおっしゃる方がはっきりとした腋臭症のこともあります。だからこそ、治療の選び方は診察で症状を確認したうえでご説明します。

私が診察で見ているのは、においの強さ、汗の量、毛の濃さと範囲、耳垢の性状、そして生活への支障の度合い。この五つです。特に最後の「生活への支障」を私は重く見ています。電車で手すりを持てない、人と距離を取ってしまう、好きな服が着られない。そういう話を聞くと、医学的な重症度以上にその方にとっては深刻な問題なのだと分かる。治療方針はそこを踏まえて組み立てるべきだと考えています。

東銀座のリノクリニックには、中央区や銀座周辺でお勤めの方だけでなく、東京近郊から相談にいらっしゃる方も多くいます。10代後半の学生さんから50代の方まで年齢層は幅広く、「もっと早く来ればよかった」とおっしゃる方が本当に多い。においの悩みは人に相談しづらいからこそ、一人で抱え込まず診察室で話していただきたいと思っています。

よくある質問

Q. 制汗剤が効かなくて困っています。まず何から試せばいいですか?

A. まずは診察で腋臭症かどうかを確認するところから始めてください。市販の制汗剤が効かない場合、医療用の外用薬やボトックス注射が選択肢になります。においが主な悩みであれば、保険適用の手術も含めて検討する価値があります。

Q. ワキガ手術は切らない方法でも再発しませんか?

A. 切らない治療は再発の可能性があります。熱や薬剤でダメージを受けた汗腺が部分的に機能を回復したり、処理が届かなかった汗腺が残ったりするためです。アポクリン汗腺を目で見て切除する手術のほうが、においの再発リスクは抑えやすいと考えています。

Q. 傷跡はどのくらい残りますか?

A. 当院の切開は約28ミリで、脇のシワに沿って入れるため時間とともに目立ちにくくなっていきます。術後3ヶ月ほどは赤みが残ることが多く、そこから徐々に白く落ち着いていく経過をたどります。傷の治り方には個人差があります。

Q. 手術の翌日からお風呂に入れますか?

A. 翌朝の検診で圧迫を外し、シャワーを浴びていただけます。ただし圧迫固定そのものは術後4日間続けていただきます。湯船につかる入浴は、抜糸後に傷の状態を確認してからご案内しています。

Q. 保険で受けられるなら、費用はどのくらいですか?

A. 3割負担で4〜5万円程度が目安です。静脈麻酔を併用した場合でも約45,000円程度。診察のうえで腋臭症と診断されれば健康保険が適用されます。確定金額はカウンセリングでご案内します。

まとめ

  • 腋臭症(ワキガ)のにおいの元はアポクリン汗腺。汗そのものではない
  • ワキガ手術を切らない方法で代替したい場合、ボトックスは汗の悩みに有効だが、においには限界がある
  • マイクロ波治療は傷が残らない反面、においが残ることが多く、皮下が瘢痕化して後の手術がやりにくくなる点に注意
  • においを根本から断つなら、アポクリン汗腺を切除する剪除法が基本
  • 腋臭症の手術は保険で受けられます(3割負担で4〜5万円程度)
  • 当院の切開は約28ミリ。手術の翌朝には圧迫を外してシャワーを浴びられます

においの悩みは、他人に打ち明けにくいぶん一人で長く抱え込みやすいものです。診察を受ければ、自分がどの程度なのか、どの治療が合うのかがはっきりします。まずは相談だけでも構いません。なお、治療効果や経過には個人差があります。

当院のご案内

リノクリニック東銀座
院長:宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医、外科経験20年以上)
所在地:東京都中央区銀座3丁目11-13 松本銀座ビル9階(東銀座駅から徒歩3分)

腋臭症(ワキガ)・多汗症の保険診療、婦人科形成、輪郭形成など、外科専門医としての経験をもとに診療を行っています。腋臭症については保険適用の剪除法を中心に、症状を診察したうえで治療方針をご説明します。脇のにおいや汗ジミでお悩みの方、切らない治療と手術で迷われている方は、一度ご相談ください。

初診のご予約はこちら(WEB予約24時間受付)

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参考文献

  1. Grove GL, Togsverd-Bo K, Schwensen JFB, et al. Impact of microwave thermolysis energy levels on patient-reported outcomes for axillary hyperhidrosis and osmidrosis. Lasers Surg Med. 2023;55(1):105-115. PubMed / DOI
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  4. Sun P, Wang Y, Bi M, et al. The Treatment of Axillary Odor: A Network Meta-Analysis. Med Sci Monit. 2019;25:2735-2744. PubMed / DOI
監修者情報

宮﨑 邦夫

リノクリニック東銀座 院長

【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員

消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。

監修日:2026.10.22

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