院長コラム
目次
SLUG: facial-bone-osteotomy-methods
顔が大きく見える、エラが張っていて写真の横顔が嫌い、顎が長くて面長に見える——そうした悩みから「骨切りの方法を知りたい」と調べてこのページにたどり着いた方が多いのではないでしょうか。骨切りと一口に言っても、切開をどこから入れるのか、骨をどの線で切るのか、切り離した骨をどう動かして、どう固定するのか。この工程の違いが、仕上がりと安全性をほぼ決めてしまいます。ところが検索しても「エラ骨切り」「頬骨縮小」といった術式名の羅列ばかりで、中身の手順まで説明しているページは意外と少ない。この記事では、東銀座のリノクリニックで実際に手術を担当している私が、切開・骨切り・骨片移動・固定という四つの工程を、自分の手の感覚も交えながら順を追ってお話しします。読み終わる頃には、自分の悩みにどの手術が必要なのか、輪郭がかなりはっきりしているはずです。
- 骨切り手術の基本4工程(切開・骨切り・骨片移動・固定)が具体的にわかる
- エラ・頬骨・顎先・両顎など、部位ごとの術式の違いと適応が整理できる
- 私が診断で重視している判断基準と、骨膜剥離・骨片の血流という技術的な要点
- 費用の目安、腫れの経過、仕事復帰までの現実的なスケジュール
骨切りの基本工程と方法
骨切り手術は、派手なイメージとは裏腹に、きわめて地味で手順の決まった作業の積み重ねです。大まかには次の四つのステップに分かれます。
STEP 1|切開(アプローチ)
顔の骨にたどり着くための入り口を作ります。エラ(下顎角)、顎先(オトガイ)、頬骨体部は、基本的に口の中の粘膜を切開して到達します。皮膚に傷が残らないのが口内法の最大の利点。頬骨弓という、こめかみから耳の前にかけて張り出す部分だけは、もみあげの中に数ミリの切開を加えてアプローチすることがあります。髪で隠れる位置を選びます。
STEP 2|骨膜剥離(こつまくはくり)
ここが、実は手術の良し悪しを分ける工程です。骨の表面は骨膜という薄い膜で覆われていて、骨に栄養を送る血管はこの膜を通っています。骨膜を広範囲に、乱暴に剥がすほど視野は広く取れて手術はやりやすい。けれど、その分だけ骨の血流は落ちます。私が手術をしていて一番神経を使うのはここで、「切る線を見るために必要な最小限だけ剥がす」という原則を崩しません。特にエラの内側、翼突筋という筋肉が付いている面は、必要以上に剥がすと術後の腫れも長引きます。
STEP 3|骨切り(オステオトミー)
専用のボーンソー(骨用の電動鋸)やリシプロケーティングソーで、計画した線に沿って骨を切り離します。下顎角の後方には下歯槽神経という太い神経が走っていて、CT画像でその走行を三次元的に把握したうえで、神経から安全域を取った線を引く。ここは経験と画像診断の両輪です。
STEP 4|骨片移動と固定
切り離した骨片(こっぺん)を、削るだけで終わる場合もあれば、動かして位置を変える場合もあります。顎先を前に出す、短くする、中央に寄せる。両顎手術なら上下の顎全体を動かします。動かした骨はチタン製のプレートとスクリューで固定し、約6週間で骨同士が癒合していきます。固定材は体内に残しても問題ないことがほとんどですが、希望があれば半年〜1年後に抜去も可能です。
部位別に見る骨切り方法の違い

「エラが張っている」と訴えて来院された方が、実はエラではなく頬骨の張り出しで顔が大きく見えていた——これ、本当によくあります。悩みの言葉と原因の部位は、必ずしも一致しません。
エラ(下顎角形成術)
下顎のラインが四角く見える、いわゆるベース顔の方に行う手術です。口の中から到達し、下顎角を弧を描くようにカーブさせて切除します。ここで大事なのが、後ろだけ切ると耳の下が妙にへこんで、顎の手前に段差が残ること。私は必ず下顎縁(かがくえん)まで連続したカーブで切除線を設計します。外板削り(がいばんけずり)という、骨の外側の厚みを薄くする操作を併用すると、正面から見た横幅の改善が出やすくなります。
頬骨(頬骨縮小術)
ハチが張る、頬骨が高くて顔が大きく見えるという悩みに対応します。頬骨体部をL字またはI字に切り、頬骨弓を後方で切って、骨全体を内側・後方に移動させて固定する方法が主流です。ここでの技術的な勘所は、骨片に咬筋や側頭筋の付着をできるだけ残すこと。血流が断たれた骨片は、わずかながら吸収や癒合不全のリスクが上がります。世界中の医学論文を振り返ってみても、骨切り単独での輪郭改善は組織のボリューム変化を考慮しないと平板な印象になり得ると指摘されており、私も頬のこけ具合を見ながら切除量を加減しています。
顎先(オトガイ形成術)
顎が長い、面長、Eラインが整わない、しゃくれて見える。この領域の悩みは、顎先の水平・垂直・左右の三方向をどう動かすかで解決します。水平骨切りで骨片を前進させれば顎を出せますし、二段階に切って中間の骨を抜けば短縮できます。医学的には自身の組織を移植する手法なども研究されていますが、日本人の輪郭整形では骨片そのものを動かすオトガイ形成が主役だと考えています。
両顎手術
受け口、口ゴボ、噛み合わせが悪い、顎が出ている・引っ込んでいる。これらは顎そのものの位置の問題なので、上顎(ルフォーI型骨切り)と下顎(下顎枝矢状分割術=SSRO)を同時に動かします。顎変形症の診断がつけば健康保険の適用になるケースもあり、厚生労働省の診療報酬上も規定されています。世界的な臨床データでも、噛み合わせの改善とともに生活の質(QOL)が大きく向上することが報告されています。
骨切り方法を選ぶ診断のポイント
カウンセリングで「私はどの骨切りが必要ですか」と聞かれたとき、私がその場でレントゲンだけを見て答えることはありません。必ず三次元CTを撮って、次の四点を確認します。
一つ目は、骨の形そのもの。下顎角の角度、頬骨体部の突出量、オトガイの位置を数値で測ります。二つ目は、神経の走行。下歯槽神経管がどの深さを通っているかで、安全に切除できる量が決まります。三つ目は軟部組織、つまり皮膚と脂肪と筋肉の厚み。骨を削っても、その上に乗っている組織が厚ければ、見た目の変化は目減りします。四つ目が左右差。顔のバランスが悪いと感じている方の多くは、骨格そのものに左右差があり、左右同じ量を切ると逆に歪みが目立つことすらあります。
正直にお話しすると、ここは教科書どおりにはいきません。数値上は頬骨が大きく出ていても、本人が気にしているのはエラだったりする。逆に、骨は平均的なのに「顔が大きい」と悩んでいる方もいて、その場合は骨切りではなく脂肪や皮膚側の処置のほうが合理的なこともあります。私はカウンセリングで、あえて「あなたに骨切りは必要ないと思います」とお伝えすることがあります。手術を売るのが仕事ではなく、悩みを解決するのが仕事だからです。
もう一点、私が強調したいのが呼吸と噛み合わせです。下顎を大きく後退させる手術では、気道の容積が変化することが医学的な分析でも示されています。いびきや睡眠時の呼吸が気になる方には、移動量の設計段階からこの点を織り込みます。見た目だけを追うと、後から機能で困る。輪郭整形は美容手術であると同時に、顎顔面の機能手術でもあるという認識を、私は外科医として手放さないようにしています。
骨切り方法別の費用とダウンタイム

費用の目安をお伝えします。あくまで参考価格で、確定金額はカウンセリングで骨格と術式を確定してからのご案内になります。
エラ(下顎角形成術):おおむね100万〜150万円
頬骨縮小術:おおむね100万〜150万円
オトガイ形成術:おおむね80万〜120万円
両顎手術(自費の場合):250万〜400万円程度
顎変形症と診断され、保険適用の条件を満たす場合は自己負担額が大きく変わります。保険で行える施設・術式には要件がありますので、該当しそうな方はその点も含めてご相談ください。
腫れの経過については、当院では一貫してこうお伝えしています。ピークは術後4〜5日。2週間でおよそ7割が引き、1ヶ月で9割が引きます。残りの1割、特に輪郭が完全に落ち着くまでは3〜6ヶ月を見てください。仕事復帰は、早い方で術後数日から戻っています。マスクをしていればデスクワークは十分可能という方が多く、腫れを気にしないのであれば生活リズムはどんどん元に戻していただいて構いません。
ここで一つ、当院の方針をはっきり書いておきます。一般的にはフェイスバンドで顔を圧迫するクリニックもありますが、当院では使用していません。理由は三つ。圧迫していると血腫(内出血の塊)ができたときに発見が遅れること、気道が狭くなるリスクを避けたいこと、そして何より早期の開口訓練を優先したいからです。実際の比較データでも、顎の手術後に早期から積極的に口を開ける運動を行った方のほうが、回復が早かったと報告されています。私はこの医学的根拠に素直に従っています。
骨切り後の回復を早める方法
術後にご自身でできることは、思っているより多い。私が毎回お伝えしているのは次の三つです。
STEP 1|頭を高くして過ごす
日中はもちろん、就寝時も枕を高めにして、心臓より頭を上にしてください。重力に任せるだけで顔のむくみの引き方が変わります。術後3〜4日目、腫れのピークを乗り切るうえで、これが一番コストゼロで効く方法です。
STEP 2|しっかり食べる
術後は口の中に傷があるので、食欲が落ちる方がいます。けれど骨が癒合するにも、腫れが引くにも、エネルギーとタンパク質が要る。最初の数日は流動食やスープで構いませんが、量は落とさないでください。術後1週間の検診で「ほとんど食べていません」という方は、やはり回復が一段遅い。これは診療を続けていて確信に近い実感です。
STEP 3|早期から開口訓練
術後数日から、無理のない範囲で口を開ける練習を始めます。指2本分、3本分と目標を決めて、1日に数回。痛みが強い時期は鎮痛薬を使いながらで構いません。開口制限を放置すると筋肉と瘢痕が固まり、後から取り戻すのに数倍の時間がかかります。
加えて、骨片を動かす術式では固定の精度が長期の安定性を左右します。術前計画と固定の丁寧さが、半年後・1年後の結果に効いてくるということ。だから私は、手術時間が多少延びても、固定の位置を確認する手間を惜しまないようにしています。
喫煙については、術後1ヶ月は控えてください。ニコチンは末梢の血流を落とし、骨片と粘膜の治癒に不利に働きます。これは好みの問題ではなく、生理学的な事実です。
骨切り方法のよくある質問
Q. エラが張っていて顔が大きく見えます。骨切りで小顔になれますか?
A. 下顎角の骨の張り出しが原因であれば、エラの骨切りで横幅と角ばった印象の改善が期待できます。ただ、咬筋の発達や皮下脂肪が主因のケースもあり、その場合は骨を切っても変化が出にくいです。CTと触診で原因を切り分けてからの判断になります。効果の出方には個人差があります。
Q. 顎が長くて面長に見えるのですが、骨切り以外に方法はありませんか?
A. 顎先の縦の長さが原因なら、オトガイを二段階に切って短縮する方法が最も確実です。一方で、原因が中顔面の長さや口元の間延びにある場合は、人中短縮など別のアプローチのほうが合理的なこともあります。「顎が長い」という感覚の正体を特定するのが先決です。
Q. 骨切りの傷あとは顔に残りますか?
A. エラ・顎先・頬骨体部は口の中からの切開なので、顔の表面に傷は残りません。頬骨弓にアプローチする際、もみあげ内に数ミリの切開を加えることがありますが、髪に隠れる位置を選びます。口内の縫合糸は2〜3週で吸収されるものを使用しています。
骨切り方法の選び方まとめ
- 骨切りは「切開→骨膜剥離→骨切り→骨片移動・固定」の4工程で成り立つ
- 骨膜を最小限しか剥がさず、骨片の血流と筋肉の付着を守ることが安全性と仕上がりを左右する
- エラ・頬骨・顎先・両顎で術式も適応もまったく違う。悩みの言葉と原因部位は一致しないことが多い
- 費用は術式により80万〜400万円程度が目安(確定金額はカウンセリングでご案内)
- 腫れはピークが術後4〜5日、2週間で7割、1ヶ月で9割が引く
- 当院はフェイスバンドによる圧迫を行わず、頭を高く保つこと・しっかり食べること・早期開口訓練を重視
骨切りは、顔の骨格を一生ものとして変える手術です。だからこそ、術式名だけで決めず、ご自身の骨の形と悩みの原因を一度きちんと見てもらってください。なお、効果の現れ方や回復のスピードには個人差があります。
骨切り相談は東銀座の当院へ
リノクリニック東銀座は、中央区・東銀座駅すぐの立地で、エラ・頬骨・オトガイ・両顎などの輪郭骨切り、人中短縮、婦人科形成、腋臭症手術を外科専門医が担当しています。三次元CTを用いた術前診断からアフターケアまで一貫して対応。銀座エリアで骨切り手術をご検討の方は、初診のご予約はこちら(WEB予約24時間受付)からどうぞ。
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参考文献
- Nelke K, Kotela A, Majchrzak Z, et al. Autologous Tissue Grafts for Chin Augmentation With or Without Genioplasty: A Systematic Review. J Clin Med. 2026;15(18). PubMed / DOI
- Ebenezer V, Ganesh P, Vinayagar M. Clinical outcomes, complications and impact on quality of life following orthognathic surgery: a systematic review. Front Oral Health. 2026;7:1790589. PubMed / DOI
- Xu X, Song F, Wu L, et al. A proximal segment positioning method to enhance condylar stability after bilateral sagittal split ramus osteotomy in skeletal class II patients: A randomized controlled study. J Craniomaxillofac Surg. 2025;53(8):1176-1187. PubMed / DOI
- Jang HJ, Song JM, Kim YI, et al. Effectiveness of early active mandibular exercise in early recovery of mandibular movement and quality of life after orthognathic surgery: a single-centre randomised clinical trial. Br J Oral Maxillofac Surg. 2025;63(9):650-656. PubMed / DOI
監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2026.10.02



