院長コラム
目次
SLUG: wakiga-surgery-treatment-guide
電車のつり革につかまるとき、ふと脇のにおいが気になってそっと腕を下ろしてしまう。朝しっかり制汗剤を塗ったのに、夕方には服の汗ジミとにおいが戻ってしまう……。東銀座の診察室では、こうしたお悩みを毎週のように伺っています。
まず最初にお伝えしたいのは、においの発生源である「アポクリン腺」そのものを根本から取り除けるのは手術だけだということです。そして、このワキガ(腋臭症)の手術は健康保険が適用されます。
当院で行っている剪除法(せんじょほう・皮弁法)の切開は約28ミリ、手術の翌朝には圧迫を外してシャワーを浴びていただけます。この記事では、制汗剤から手術までを同じ基準で並べて比較し、どこから手をつければいいかを重症度別に整理します。
【この記事でわかること】
・ワキガ(腋臭症)の原因と、自分で確かめられるセルフチェックの方法
・制汗剤、外用薬、ボトックス注射、医療機器、手術を効果・傷跡・回復期間・費用で比較した結果
・保険が使えるワキガ手術の条件と、自己負担の目安
・剪除法の実際の流れ、術後4日間の過ごし方、仕事復帰までの現実的なスケジュール
ワキガの原因と治療法の全体像
腋臭症(ワキガ)とは、脇の下にあるアポクリン腺から出た分泌物を皮膚表面の常在菌が分解することで、特有のにおいが発生する状態を指します。汗そのものが臭いのではありません。ここを誤解されている方がとても多い。だから「汗を止める治療」と「臭いを断つ治療」は、本来まったく別の話として考える必要があります。
改めまして、リノクリニック東銀座院長の宮﨑 邦夫です。外科医として20年以上、手術の現場に立ち続けてきました。
アポクリン腺は脇毛の生えている範囲に分布していて、毛包に開口しています。思春期にホルモンの影響で活動が活発になるため、中学生から高校生の頃に急に気になり出す方が多いのです。体質によるもので、生活習慣が原因で突然発症するものではありません。
自分で確かめる目安を挙げておきます。耳垢が湿ってベタつく、白い服の脇が黄ばむ、脇毛に白い粉状のものが付く、家族に同じ悩みの人がいる、他人から臭いを指摘されたことがある。このうち複数当てはまるなら、腋臭症の可能性は高いと考えています。特に耳垢が湿っているかどうかは、アポクリン腺の活動性と相関することが知られていて、私も診察で必ず確認する項目です。
また、診察室でお話を聞いていると、実際にはにおいがほとんどないにもかかわらず「周りに迷惑をかけているのでは」と深く悩まれている方(いわゆる自臭症)にもお会いします。この場合、手術をしても根本的なお悩みの解決にはつながりにくいため、診察では私からも率直にお伝えするようにしています。だからこそ、ネットの情報だけで判断せず、まずは医師が直接においの状態を確認させていただくことが何より大切なのです。
手術以外のワキガ治療法を比較
手術以外の治療法は大きく4つ、制汗剤、外用薬、ボトックス注射、医療機器です。先に答えを言うと、これらはいずれも汗や菌の繁殖を抑えることで臭いを「軽くする」治療であり、臭いの発生源を取り除くものではありません。軽症の方や、まず手軽に試したい方には十分価値がありますが、中等症以上で「根本的に解決したい」という目標には届きにくい。
STEP 1|制汗剤・デオドラント
塩化アルミニウム配合の制汗剤は、汗の出口を一時的に塞いで発汗を抑えます。海外のレビューでも、限局性の多汗に対する第一選択として位置づけられています。ドラッグストアで買えるものから医療機関で処方するものまで幅があり、費用は月に1,000〜3,000円程度。ただし毎日使い続ける必要があり、かぶれる方も一定数います。
STEP 2|外用薬・内服薬
最近は保険で処方できる脇汗の外用薬も増えました。汗の量を減らすという点では選択肢になります。においそのものへの効果は限定的だと感じています。
STEP 3|ボトックス注射
汗を止めたい方には、私はボトックス注射をおすすめしています。神経から汗腺への信号を遮断する薬剤を、脇の皮内に20〜30カ所ほど注射します。施術は10分程度、ダウンタイムはほぼありません。効果の持続は4〜6ヶ月で、汗ジミに悩む方の満足度は高い。海外のランダム化比較試験でも、軽症から中等症の腋臭症ではボトックスと手術で治療効果に大きな差がなかった一方、重症例では手術のほうが優れていたと報告されています。つまり、汗の量が主な悩みならボトックス、においが主な悩みで重症なら手術、という線引きになります。
STEP 4|医療機器による治療
マイクロ波などのエネルギーを皮下に照射して汗腺にダメージを与える機器があります。当院には導入していません。中立に書きますが、汗が減ることでにおいが軽くなるケースはあります。ただ、においは残ることが多い。そして見落とされがちなのが、照射によって皮下が瘢痕(はんこん)化する点です。瘢痕があると皮膚と皮下組織の層がくっつき、後から手術を受けるときに剥離がしづらくなります。「臭いの元を断つ」という目標から逆算すると、アポクリン腺を直接取り除く手術が根本的な治療になる、というのが私の考えです。
ワキガ手術は保険でできる?
できます。腋臭症と診断されれば、手術は健康保険の適用になります。これは厚生労働省の診療報酬点数表に「腋臭症手術」として明記されている、れっきとした保険診療です。美容目的の施術ではなく、日常生活に支障をきたす疾患の治療として扱われます。
保険で行う術式は剪除法(皮弁法・直視下摘除法)です。脇のしわに沿って皮膚を切開し、皮膚を裏返して、毛根に付着しているアポクリン腺を目で見ながらハサミで切除していきます。ポイントは「目で見ながら」という部分。吸引や掻爬だけの方法と比べて取り残しが少なく、海外のメタアナリシスでも、切除手術は再発率が3.0%と他の方法より低い水準だったと報告されています。
皆さまが一番気にされる費用についてですが、3割負担の場合で約4万〜5万円です。静脈麻酔を併用された場合でも、手術費用自体は約45,000円前後が目安となります。当院では「局所麻酔の注射自体が怖くて痛みに耐えられるか不安」という方のために、眠っている間に手術が終わる静脈麻酔にも対応しています。 ※別途、初再診料や術後の処置・お薬代などがかかります。正確な総額についてはカウンセリング時に丁寧にご説明いたします。
カウンセリングでよく聞かれるのが「保険の手術だと効果が落ちるのでは」という質問です。逆です。保険で認められている剪除法は、アポクリン腺を直接見て取り除く方法で、においに対する治療としては最も合理的な構造を持っています。
剪除法のワキガ手術の流れ
当院の剪除法は、片脇あたり約28ミリの切開で行います。左右で約1時間から1時間半。日帰り手術です。
STEP 1|診察とデザイン
まず脇のにおいを確認し、毛の生えている範囲を見てアポクリン腺の分布を推定します。切開線は脇のしわに合わせて設計します。私がここで時間をかけるのは、毛穴の分布範囲をきちんと見極めること。アポクリン腺は毛包に付いているので、毛の範囲より外側に腺はほとんどありません。逆に言えば、毛の生えている範囲をすべてカバーできないと取り残しが出ます。
STEP 2|麻酔
局所麻酔、またはご希望に応じて静脈麻酔を併用します。眠っている間に終えたい方には静脈麻酔を選んでいただくことが多いです。
STEP 3|切除
皮膚を切開し、裏返した状態で、ルーペ下に真皮直下のアポクリン腺を一つひとつハサミで切除します。ここが剪除法という手術の、最も高い技術が求められる部分です。皮下組織を深く削りすぎれば皮膚の血流が途絶えて壊死のリスクが高まり、逆に浅すぎるとアポクリン腺を取り残してしまいます。 この絶妙な加減は、長年の手術経験から手に伝わる組織の感触や、裏返した皮膚の色調の変化を見極めることで初めて可能になります。
STEP 4|縫合とタイオーバー固定
細い糸で丁寧に縫合し、ガーゼなどで圧迫固定を行います。この圧迫は血腫(皮膚の下に血が溜まること)を防ぎ、剥離した皮膚を元の床に密着させるためのもの。手術の成否を分ける地味だけれど決定的な工程です。実際、海外の比較研究でも術後血腫の予防が満足度に直結すると指摘されています。
STEP 5|翌朝の診察
手術の翌朝に来院いただき、圧迫を外します。その時点でシャワーを浴びていただけます。固定自体は術後4日間続けますが、シャワーのたびに外せるので、丸4日間お風呂に入れないということはありません。ここを誤解されたまま手術を迷っている方が多いので、強調しておきます。
重症度別に選ぶ治療法ロードマップ
私が治療法を提案するときに見ている軸は4つです。においの強さ、脇毛とアポクリン腺の分布範囲、生活の制限をどこまで許容できるか、そしてどれくらいの減臭を期待しているか。この4点が揃って初めて、どの治療法が合うかが決まります。
軽症の目安は、自分では気になるが他人から指摘されたことはなく、制汗剤を使えば一日しのげる状態。この段階なら、まずは制汗剤と外用薬で様子を見ることをおすすめします。汗ジミが主な悩みならボトックス注射を足す。それで日常が快適になるなら、手術まで進む必要はありません。
中等症は、制汗剤が効かない日がある、夕方になると自分で臭いに気づく、白い服の脇が黄ばむ、といった状態。ここが一番悩ましい層です。ボトックスで汗を抑えると臭いも軽くなる方がいる一方で、半年ごとに繰り返す負担をどう見るか。私は「3年以上続けるつもりなら、一度手術を検討してもいいのでは」とお話しすることが多いです。
重症は、他人から臭いを指摘されたことがある、脇毛が多く範囲も広い、耳垢が明らかに湿っている、というケース。ここは迷わず剪除法をおすすめします。重症例ではボトックスより手術のほうが成績がよいことが研究でも示されていますし、実際に私の外来でも、重症の方ほど術後の満足度が高い傾向があります。20代の患者さんで、就職活動を機に受診され、術後3ヶ月の検診で「満員電車が怖くなくなりました」と話してくださった方がいました。ああいう言葉を聞くと、この手術は見た目の医療というより生活の医療だと改めて思います。
逆に、手術を急がないほうがいいケースもあります。思春期でまだアポクリン腺の活動が安定していない時期、授乳中の方、においがほとんど確認できない自臭症に近い状態。こうした場合は時期を待つか、別のアプローチを考えます。治療の選び方は、診察で症状を確認したうえでご説明します。
ワキガ手術後の経過と生活制限
術後の制限は、腕を大きく動かさないこと。これに尽きます。皮膚を裏返して剥離しているため、固定期間中に腕を強く上げると、せっかく密着した皮膚がずれて血腫や部分壊死の原因になります。
時系列で整理します。手術当日は圧迫したまま帰宅、入浴は不可。翌朝に来院して圧迫を外し、シャワーが可能になります。術後4日目まで固定を続け、抜糸は約1週間後。デスクワークであれば術後2〜3日で復帰される方が多く、実際に翌々日から出社された方もいます。ただし電車のつり革や高い棚への手伸ばしは要注意。荷物を持つのも、術後1週間はできるだけ避けてください。
運動は2〜4週間後から段階的に。腕を使うスポーツや筋トレは1ヶ月は我慢していただきます。傷跡は術後1〜2ヶ月は赤みが残り、3〜6ヶ月かけて徐々に白く目立ちにくくなっていきます。脇のしわに沿った28ミリの線なので、腕を下ろしていればほぼ見えません。ただ、体質によってケロイド状に盛り上がる方もいるため、経過を見ながらテープや外用でケアします。
脇毛については、アポクリン腺を切除する過程で毛根もある程度ダメージを受けるため、術後に薄くなる方が多いです。完全になくなるとは限りません。においに関しては、剪除法で大部分のアポクリン腺を取り除けますが、ゼロにはならないと考えてください。私はカウンセリングで「気にならないレベルまで下げるのが目標」とお伝えしています。ここを曖昧にしたまま手術をすると、お互いに不幸ですから。
【よくある質問】
Q. 制汗剤が全然効かないのですが、もう手術しかないですか?
A. 手術が有力な選択肢になりますが、その前に汗が主因かにおいが主因かを切り分けます。汗ジミが一番の悩みならボトックス注射で改善することがありますし、においが主因なら剪除法が根本的な対処になります。まずは診察でにおいを直接確認させてください。
Q. ワキガ手術は保険が使えますか?費用はいくらくらいですか?
A. 腋臭症と診断されれば保険が使えます。3割負担で4〜5万円程度、静脈麻酔を併用しても約45,000円が目安です。診察料などが別途かかりますので、確定金額はカウンセリングでご案内しています。
Q. 手術の傷跡はどのくらい残りますか?
A. 当院の剪除法の切開は約28ミリで、脇のしわに沿って入れます。術後1〜2ヶ月は赤みがありますが、3〜6ヶ月かけて白く目立ちにくくなっていくのが一般的な経過です。腕を下ろした状態ではほとんど見えません。
Q. 手術の後、何日お風呂に入れませんか?
A. 入浴できないのは手術当日だけです。翌朝の診察で圧迫を外し、その時点からシャワーを浴びていただけます。固定自体は術後4日間続けますが、シャワーのときは外せますので、何日も洗えないということはありません。
Q. 仕事はどのくらい休む必要がありますか?
A. デスクワークなら術後2〜3日で復帰される方が多いです。ただし腕を大きく上げる動作や重い荷物は1週間ほど避けてください。力仕事や腕を使う職種の場合は、1〜2週間の調整をおすすめしています。
【まとめ】
- 腋臭症(ワキガ)の臭いの元はアポクリン腺。汗を止める治療と臭いを断つ治療は別物
- 制汗剤、外用薬、ボトックス注射、医療機器は臭いを軽くする治療。汗が主な悩みならボトックスが有効
- 臭いの根本を断つには、アポクリン腺を切除する手術が必要
- 腋臭症の手術は保険で受けられます。3割負担で4〜5万円程度(静脈麻酔併用でも約45,000円)
- 当院の剪除法は切開約28ミリ。手術の翌朝には圧迫を外してシャワーを浴びられます
- 軽症は保存治療から、重症は剪除法から。判断軸はにおいの強さ、分布範囲、許容できる生活制限、期待する減臭率
なお、治療効果や経過には個人差があります。脇のにおいや汗ジミで生活が狭くなっていると感じるなら、一度診察にいらしてください。においは自分ひとりでは客観視しづらいものです。まず現状を正しく知ることから始めましょう。
【当院のご案内】
リノクリニック東銀座
院長:宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医、外科経験20年以上)
所在地:東京都中央区銀座3丁目11-13 松本銀座ビル9階(東銀座駅から徒歩3分)
当院では保険適用の腋臭症手術(剪除法)をはじめ、ボトックス注射による多汗症治療、婦人科形成、輪郭形成などを行っています。東京で脇のにおいや汗の悩みを相談できる場所をお探しの方、銀座・中央区にお勤めで通院しやすいクリニックを探している方も、お気軽にご相談ください。診察でにおいと汗の状態を確認したうえで、あなたに合った治療法をご説明します。
初診のご予約はこちら(WEB予約24時間受付)
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参考文献
- Morioka D, Nomura M, Lan L, et al. Axillary Osmidrosis: Past, Present, and Future. Ann Plast Surg. 2020;84(6):722-728. PubMed / DOI
- Sun P, Wang Y, Bi M, et al. The Treatment of Axillary Odor: A Network Meta-Analysis. Med Sci Monit. 2019;25:2735-2744. PubMed / DOI
- Shin JY, Roh SG, Lee NH, et al. Osmidrosis Treatment Approaches: A Systematic Review and Meta-Analysis. Ann Plast Surg. 2017;78(3):354-359. PubMed / DOI
- Xie A, Nie L, Tan Q. Local injection of botulinum toxin A: an alternative therapy for axillary osmidrosis. J Dermatol. 2014;41(2):153-6. PubMed / DOI
監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2026.10.25



