院長コラム

Face-Driven Planningが変える顎顔面治療の未来|数値を合わせる手術から顔をつくる手術へ

2026.10.24

「Face-Driven Planningは、新しい手術方法なの?」
「これから両顎手術はどう変わっていくのだろう」

結論から言うと、Face-Driven Planningは新しい骨切りの術式でも新しい矯正装置でもなく、すでにある技術の「使い方」を変える設計思想です。韓国や台湾ではすでに広く実践されており、日本でもこれから広がっていく段階にあると考えています。そのために必要なのは、外科と矯正の連携の深まり、軟組織シミュレーションの精度向上、そして患者様と「顔について対話する」文化の3つです。

この記事は、院長の宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医)が、Face-Driven Planningシリーズの最終回(第6回)として書いています。前回はOrthodontic Firstでも使えるFace-Driven Planningでした。

この記事でわかること

  • Face-Driven Planningが「新しい技術」ではない理由
  • 日本でFace-Driven Planningが広がるために必要な3つのこと
  • 院長がFace-Driven Planningを実践し、発信している理由

シリーズのふりかえり

このシリーズでは、6回にわたってFace-Driven Planningについて書いてきました。

新しい技術ではない

まずはっきりさせておきたいのは、Face-Driven Planningは「新しい技術」ではないということです。

新しい骨切りの術式でも、新しい矯正装置でもありません。すでにある技術の「使い方」を変える設計思想です。

韓国や台湾では、顔を起点にした治療設計はすでに広く行われています。日本の顎変形症学会でも、複数の形成外科医が「Face First」という言葉で近い考え方を発表していました。世界的に見れば、この流れはすでに始まっています。日本はこれから追いついていく段階だと考えています。

では、日本の両顎手術でFace-Driven Planningが広がるために何が必要か。私は3つあると思っています。

1 外科と矯正の連携を深める

一つめは、外科医と矯正歯科医の連携をより深めることです。

Face-Driven Planningでは、顔のゴールから骨の移動量を決め、その移動量に合わせて噛み合わせを整える矯正計画を立てます。外科と矯正が「同じゴールを見て計画を立てる」必要があります。

日本では外科医と矯正歯科医が別の施設にいることが多く、連携はあっても「一緒にゴールを設計する」ところまではなかなか届きにくいのが現状です。紹介状やデータのやりとりだけでは、顔の細かなニュアンスまでは伝わりきりません。

この壁を低くしてくれるのが、デジタルツールの進化です。3Dシミュレーションを共有し、オンラインで顔のゴールをすり合わせる。同じ施設にいなくても、同じゴールを見て計画を立てることは、技術で実現できるはずです。

2 軟組織の予測精度を上げる

二つめは、軟組織シミュレーションの精度を上げることです。

Face-Driven Planningの核心は、「この顔にするために骨をこう動かす」という逆算にあります。逆算の精度は、「骨をこう動かしたら顔の表面がどう変わるか」という予測の精度に左右されます。

現在の軟組織シミュレーションは年々精度が上がっていますが、まだ完璧ではありません。特に軟組織の厚みや弾力の個人差が大きい部位では、予測と実際の結果にずれが出ることがあります。

AIや機械学習を使ったシミュレーションの研究も進んでいます。過去の症例データから骨の移動量と軟組織の変化の関係を学び、より精度の高い予測を出す。こうした技術が実用化されれば、Face-Driven Planningの逆算はさらに精密になっていくと考えています。

3 顔について対話する文化

三つめは、患者様と「顔について対話する」文化です。これは技術ではなく、コミュニケーションの話です。

Face-Driven Planningでは、カウンセリングの段階で「どんな顔になりたいか」を深く話し合います。数値を見せて説明するのではなく、顔を見ながら一緒にゴールをつくります。

これは、「医師が計画を立てて患者様に説明する」という従来の形とは違います。患者様が治療の設計に参加し、自分の顔の変化を自分ごととして考える。

この対話の質を上げるには、外科医にもコミュニケーションの力が求められます。患者様のあいまいな希望を、具体的な顔のゴールに置きかえる力。それは手術の技術とはまた別の専門性だと思っています。

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院長がFDPを発信する理由

私がFace-Driven Planningを実践し、発信している理由は単純です。この考え方のほうが、患者様と同じゴールを共有したうえで治療に進めると考えているからです。

「なりたい顔」を一緒に考え、そこから計画を立て、安全な範囲でゴールにできるだけ近づける。もちろん、すべてのケースで予測と結果が完全に一致するわけではありません。それでも、ゴールを共有しているからこそ、わずかなずれがあっても「一緒に決めた計画だから」と受け止めていただける関係をつくれると感じています。

治療は技術だけでは完結しません。患者様と「同じゴールを見ている」という信頼関係があって、はじめて完結します。Face-Driven Planningは、その信頼関係を設計の段階から組み込む考え方です。

これからの日本の両顎手術が、「数値を合わせる手術」から「顔をつくる手術」へ進んでいく。そのための設計思想として、Face-Driven Planningが広がっていくことを願っています。

よくある質問

Q. Face-Driven PlanningとFace Firstは同じ意味ですか?

A. 近い考え方を指しています。ただ、Surgery FirstやOrthodontic Firstの「First」は治療の順序を意味するのに対し、この考え方は順序ではなく設計思想です。そのため当院では、より正確に表せるFace-Driven Planningという言葉を使っています。

Q. Face-Driven Planningで治療計画を立ててもらうには、どうすればいいですか?

A. まずはカウンセリングで、気になっている部分やなりたい顔のイメージをお聞かせください。写真や検査をもとに、顔のゴールと治療の進め方を一緒に検討します。

Q. AIのシミュレーションで、手術後の顔は正確にわかるようになりますか?

A. 研究は進んでいますが、現時点では軟組織の個人差により、予測と実際の結果が完全に一致することはお約束できません。シミュレーションは、ゴールを共有し計画を詰めるための道具として使っています。

まとめ

  • Face-Driven Planningは新しい術式ではなく、すでにある技術の使い方を変える設計思想
  • 韓国・台湾ではすでに広く実践され、日本でもこれから広がっていく段階にある
  • 広がるために必要なのは、外科と矯正の連携、軟組織シミュレーションの精度向上、顔について対話する文化
  • 治療は、患者様と同じゴールを見ている信頼関係があってはじめて完結する

このシリーズはここで一区切りです。具体的な症例や技術的な話は、また別の形で書いていきます。

当院のご案内

リノクリニック東銀座は、東京都中央区銀座3丁目11-13 松本銀座ビル9階(東銀座駅から徒歩3分)にある美容外科・形成外科です。院長は宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医、外科経験20年以上)。両顎手術(OGS)・骨切り・輪郭形成について、Face-Driven Planningに基づき、顔貌のゴールを共有するところからご相談をお受けしています。

監修者情報

宮﨑 邦夫

リノクリニック東銀座 院長

【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員

消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。

監修日:2026.10.24

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