院長コラム
「脇の臭いが気になって、夏場は電車に乗るのが怖い」「どんな制汗剤を使っても効果がない」。診察室でこうしたお悩みを打ち明けられるたび、「もっと早く相談してくださればよかったのに」と感じます。はじめにお伝えしておきたいのは、当院の保険適用による腋臭症手術は、切開の長さが約28ミリであること。圧迫固定は術後4日間行いますが、翌朝からはシャワーの際に一時的に外して浴びることができます。デスクワークであれば数日で復帰される方がほとんどです。また、腋臭症(ワキガ)の手術は保険診療の対象であり、3割負担で4〜5万円程度が費用の目安となります。この記事では、東銀座の診察室で日々執刀している私(宮﨑)が、創傷治癒の段階に沿って傷・腫れ・におい・生活制限のリアルな経過を解説します。
この記事でわかること
・腋臭症の術後に起きる変化を、当日から1年後まで時系列で把握できる
・傷あと・腫れ・内出血・においがいつ落ち着くのか、具体的な日数で理解できる
・腕を上げていい時期、運動・仕事・入浴の再開時期など生活制限の目安がわかる
・血腫や皮膚トラブルなど、受診すべき異常のサインと対処法がわかる
目次
腋臭症とは?術後を知る前に
腋臭症とは、脇の下にあるアポクリン汗腺から分泌される汗が、皮膚の常在菌に分解されることで特有のにおいを発する状態のことです。汗そのものは無臭で、においの原因は「アポクリン腺の分泌物+細菌」。ここを理解しておくと、術後になぜにおいが変わるのかが腑に落ちます。
アポクリン腺は毛包に開口しているため、脇毛の多い方、わき汗で黄ばみ(汗ジミ)が出る方、耳垢が湿っている方は、アポクリン腺の活動が活発な傾向があります。私がカウンセリングで必ず確認するのは、次の四点です。耳垢が湿っているか、服の脇が黄色く変色するか、家族に同じ悩みがあるか、そして人から指摘された経験があるか。この四つが揃っている方は、診察でもアポクリン腺がしっかり確認できることが多い印象です。
あえて正直にお話ししますが、ご自身のにおいは客観的に判断しづらいものです。「気のせいかもしれない」と一人で何年も悩み続け、思春期から10年越しで受診される方もいれば、医学的には全く問題のないレベルであるにもかかわらず深く悩まれている方もいらっしゃいます。だからこそ私たちは、まず診察で状態を正しく評価することから始めます。なお、腋臭症は立派な保険診療の対象疾患であり、決して美容目的のわがままなどではありません。この点は医療者として強くお伝えしておきたいところです。
腋臭症の治療法と術後の違い

腋臭症の治療には、制汗剤、塗り薬、ボツリヌストキシン(ボトックス)注射、マイクロ波による機器治療、そして手術があります。結論を先に言えば、においの元であるアポクリン腺そのものを取り除けるのは手術だけで、他の治療は「汗を減らす」「菌を減らす」ことで間接的ににおいを軽くするアプローチになります。術後の経過も、当然ながら方法ごとにまったく違います。
汗が主な悩みならボトックス注射
「においよりも、とにかくわき汗の量が多い」「汗ジミが恥ずかしい」という方には、ボツリヌストキシン注射をお勧めしています。エクリン汗腺への神経伝達を抑えることで発汗を減らす方法で、ダウンタイムはほぼなし。注射当日から普段どおりに過ごせます。ただし効果は永続せず、数ヶ月ごとの再注射が必要です。
マイクロ波治療(ミラドライ)について
当院にはこの機器を導入していませんので、論文や学会等で示されている客観的な事実に基づいてお話しします。マイクロ波で汗腺に熱を加えて汗を減らすことで、結果的ににおいが軽減するケースはあります。ただ、においが完全に解消しきらないケースも珍しくありません。また、見落とされがちなのが皮下組織へのダメージです。照射後の組織を病理学的に調べた海外の報告では、汗腺周囲の壊死だけでなく強い線維化(瘢痕化)が生じることが確認されています。皮下が硬く瘢痕化してしまうと、将来的にやはり手術を受けたいと思った際、皮膚の剥離が難しくなり手術自体のハードルが上がってしまいます。これは、実際にメスを握る外科医として率直にお伝えしておきたいポイントです。
複数の治療法を比較した海外のネットワークメタ解析でも、アポクリン腺を直接処理する外科的手法の成績が、機器や単独治療より上位に位置づけられていました。においの元を断つという意味では、やはり切除が根本的な治療になります。
どの方法が向いているかは症状の程度や生活背景によって変わりますので、診察で状態を確認したうえでご説明します。
保険で受ける腋臭症手術と術後
当院で行う腋臭症手術は、保険適用の剪除法(せんじょほう/皮弁法)です。脇のしわに沿って皮膚を切開し、皮膚を裏返して、毛根の根元にぶら下がるアポクリン腺を目で見ながら一つひとつ切除していきます。「見ながら取る」という点が、この術式の最大の強み。盲目的に掻き出す方法と違い、取り残しを最小限にできます。
ここで私、院長の宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医)の方針をお話しします。当院の切開の長さは約28ミリです。外科医として20年以上、腹部や乳腺の手術で培った皮弁操作の経験を応用し、小さな創から十分な範囲の剥離を行っています。傷が小さければ小さいほど良いという単純な話ではありません。小さすぎれば視野が悪くなり、取り残しや皮膚の血流障害につながる。約28ミリというのは、確実にアポクリン腺を処理できる視野と、傷あとの目立ちにくさの両立点として私が選んでいる長さです。
手術は局所麻酔で行い、ご希望があれば静脈麻酔を併用します。所要時間は両脇で1時間前後。費用は3割負担で4〜5万円程度が目安で、静脈麻酔を併用しても約45,000円ほどです。確定金額は診察時にご案内します。
保険が使える条件や診療の流れについては、こちらもあわせてご覧ください。
腋臭症術後の経過と生活制限

腋臭症の術後は、創傷治癒の三段階(炎症期・増殖期・成熟期)に沿って考えるとわかりやすくなります。やっていいこと、まだ控えるべきことの線引きが、段階ごとに明確になるからです。
STEP 1|炎症期(当日〜術後4日):皮膚を「くっつける」期間
剥離した皮膚と皮下組織の間にはどうしても僅かな隙間が生まれます。そこに血液や浸出液が溜まると血腫を招き、皮膚の血流障害を引き起こす原因になるため、しっかりとした圧迫固定が欠かせません。当院では術後4日間にわたり固定を継続していただきます。「数日間お風呂に入れないのは辛い」と不安に思われるかもしれませんが、翌朝からはシャワーの際に一時的に外して浴びることができますのでご安心ください。シャワー後は再度しっかりと装着し、4日目までは固定を続けていただきます。この期間は腕を肩より上に上げない、重い物を持たない。洗髪は腕を上げずに前かがみで行うか、ご家族に手伝ってもらってください。腫れと痛みのピークはこの時期で、処方した鎮痛薬でコントロールできる程度の方がほとんどです。
STEP 2|増殖期(術後5日〜3週):傷が強度を持ち始める期間
圧迫が終われば、生活はぐっと楽になります。抜糸は術後7日前後。デスクワークは数日で復帰される方が多く、実際「3日後から出社した」という方も珍しくありません。ただし、腕を大きく動かす動作は傷に張力をかけます。満員電車でつり革につかまる、重い荷物を持ち上げる、この辺りは2週間は避けたいところ。内出血の紫色は1〜2週間で黄色く変わり、2週間でおおむね落ち着きます。軽い運動は2〜3週間後から、しっかりした運動やジムは1ヶ月後からを目安にしています。
STEP 3|成熟期(術後3週〜6ヶ月、長ければ1年):傷あとが育つ期間
赤みと硬さが残るのがこの時期です。傷あとは3〜6ヶ月かけて赤から白へ、硬さも徐々に和らいでいきます。このあいだ私がお願いしているのは、テーピングやシリコンジェルシートでの保護と、紫外線を避けること。脇は直射日光こそ当たりにくいものの、摩擦の多い部位です。摩擦も色素沈着の原因になります。脇毛は手術でアポクリン腺を取る過程で毛根も一部除去されるため、術後に薄くなる方が多い。これを「助かった」と喜ぶ方もいれば、気にされる方もいます。事前にお伝えするようにしています。
腋臭症の術後トラブルと再発
まず結論を。腋臭症の術後に最も注意すべきは血腫と皮膚の血行障害で、いずれも術後2〜5日に起こります。そしてにおいは、多くの方で手術直後から明らかに軽くなります。
受診すべき異常のサイン
次の症状があれば、予定の検診日を待たずにご連絡ください。片側だけ急に腫れてパンパンに張ってくる(血腫の疑い)。ズキズキと拍動するような痛みが強くなる。38度以上の発熱。傷から黄色い膿が出る、周囲が赤く熱を持つ(感染)。皮膚の色が黒ずんでくる(血行障害)。血腫は早く見つければ、注射器で抜く、あるいは小さく開けて洗うだけで解決することが多いのです。放置して皮膚が壊死してしまうと、傷あとが大きく残ってしまう。だから術後数日は、ご自身の脇をよく観察していただきたいのです。
皮膚壊死については、皮下の結合組織の隔壁(septa)を適度に残す工夫で壊死を避けられたとする海外の報告もあります。私も剥離のときは、薄くしすぎず、しかしアポクリン腺は確実に取るという層のコントロールに最も神経を使っています。手術をしていて感じるのは、この術式の成否の8割は「層の見極め」で決まるということ。切除量の多さを競う手術ではありません。
においは再発するのか
アポクリン腺は一度取り除けば再生しないとされています。ただし、においが完全にゼロになるわけではないことも、正直にお伝えしておきます。脇にはエクリン汗腺もあり、汗をかけば皮膚の常在菌が働き、誰にでもある程度の体臭は残ります。術後しばらくして「やっぱり少しにおう気がする」と相談に来られる方の多くは、実際には手術前とは比較にならないレベルまで改善しています。ご自身の嗅覚が手術前の基準のままだと、わずかなにおいにも敏感になってしまうのです。術後3ヶ月、半年と時間が経つにつれ、気にならなくなる方が大半でした。
腋臭症 術後のよくある質問
Q. ワキガの手術は保険が使えますか?費用はいくらですか?
A. 腋臭症と診断されれば保険が適用されます。当院の剪除法(皮弁法)は保険診療で、3割負担で4〜5万円程度が目安です。静脈麻酔を併用しても約45,000円ほど。確定金額は診察時にご案内しますので、カウンセリングでお尋ねください。
Q. 手術の翌日からお風呂やシャワーは入れますか?
A. 翌朝からシャワーのときに圧迫を外して浴びていただけます。シャワー後はまた圧迫を装着し、術後4日間は固定を続けてください。湯船につかるのは抜糸後、術後1週間を過ぎてからを目安にしています。
Q. 仕事はどのくらい休めばいいですか?
A. デスクワークなら数日、早い方は術後3日ほどで復帰されています。ただし腕を肩より上に上げる動作や重い物の持ち上げは2週間控えてください。立ち仕事や力仕事の方は、職種に応じて個別に復帰時期をご相談します。
Q. 脇の傷あとは目立ちますか?
A. 当院の切開は約28ミリで、脇のしわに沿って行うため、半年から1年かけて白く目立ちにくくなっていきます。術後3〜6ヶ月は赤みが残る時期。テーピングでの保護と摩擦を避けることで、傷あとの成熟を助けられます。
Q. 制汗剤やミラドライで様子を見てからでも間に合いますか?
A. 急ぐ必要はありませんが、マイクロ波治療は皮下の線維化(瘢痕化)を起こすため、後から手術を受ける際にやりにくくなる点は知っておいてください。においの元を断ちたいのか、汗を減らしたいのか。目的を整理したうえで診察にお越しいただければ、順序立ててご提案します。
まとめ|腋臭症の術後ケアの要点
- 腋臭症(ワキガ)の手術は保険で受けられ、3割負担で4〜5万円程度が目安
- 当院の切開は約28ミリ。アポクリン腺を目で見ながら切除する剪除法(皮弁法)
- 圧迫固定は術後4日間続けるが、翌朝からはシャワーのときに外して浴びられる
- 抜糸は術後7日前後、デスクワークは数日で復帰できる方が多い
- 腫れ・内出血は2週間でおおむね落ち着き、傷あとは3〜6ヶ月かけて白くなる
- 片側だけ急に腫れる、強い痛み、発熱、膿は血腫や感染のサイン。すぐ連絡を
においの悩みは、人に相談しづらいぶん一人で抱え込みやすいテーマです。けれど治療法のある「疾患」であり、保険で対応できます。なお効果には個人差がありますので、ご自身の状態については診察でご確認ください。脇の臭いや汗ジミでお悩みなら、一度ご相談いただければと思います。
当院のご案内(腋臭症の術後診察)
リノクリニック東銀座は、東京都中央区銀座3丁目11-13 松本銀座ビル9階(東銀座駅から徒歩3分)にあります。院長は宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医、外科経験20年以上)。腋臭症(ワキガ)の保険手術を中心に、婦人科形成、輪郭形成などの外科的治療を行っています。腋臭症の手術は術後4日間の圧迫と抜糸までの経過観察を含め、私が最後まで責任を持って診ます。銀座・東銀座エリアでお仕事をされている方は、お昼休みや仕事帰りの検診にも通いやすい立地です。初診のご予約はこちら(WEB予約24時間受付)。
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参考文献
- Hatano T, Fukasawa N, Miyano C, et al. Pathological Changes in Axillary Hyperhidrosis and Axillary Osmidrosis Induced by Microwave Treatment: Comparison of Single- and Double-Pass Irradiation. Lasers Surg Med. 2021;53(9):1220-1226. PubMed / DOI
- Sun P, Wang Y, Bi M, et al. The Treatment of Axillary Odor: A Network Meta-Analysis. Med Sci Monit. 2019;25:2735-2744. PubMed / DOI
- Hsu KC, Wang KY. Sparing subcutaneous septa avoids skin necrosis in the treatment of axillary bromhidrosis with suction-curettage shaving. J Cosmet Dermatol. 2019;18(3):892-896. PubMed / DOI
監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2026.10.16



