院長コラム
「スマホを見下ろした瞬間に、首に横一本のシワが入っていてぎょっとした」「鏡を見たら首のスジが縦に浮き出ていて、顔より首のほうが老けて見える」。東銀座の診察室では、ほとんど毎日のようにこうしたお悩みを伺います。はじめにお伝えしておきたいのは、首の浅い小じわや縦に浮き出るスジには、マイクロボトックス(ネックボトックス)が非常に相性の良い治療であるということです。皮膚のごく浅い層に微量のボツリヌストキシンを細かく注入し、広頚筋の過剰な収縮をゆるめることで、表面をなめらかに整えます。効果は注射後3〜7日ほどで現れ、2週間前後でピークを迎え、おおむね3〜4か月が持続の目安です。ただし、深く刻まれた横じわや皮膚のたるみそのものには別の治療が必要になります。その点も含めて、包み隠さずお話ししていきます。
目次
この記事でわかること
- マイクロボトックスとネックボトックスの違いと、首の小じわに効く仕組み
- 効果が出るまでの日数、持続期間、何回受ければよいかの目安
- 施術当日の流れ、ダウンタイム、内出血やメイクの可否
- 首への注射で起こりうる副作用と、私が注入時に必ず守っていること
マイクロボトックスとは何か
マイクロボトックスとは、ボツリヌストキシンを通常より薄く希釈し、真皮から皮下のごく浅い層へ微量ずつ多点に注入する方法です。スキンボトックス、メソボトックスと呼ばれることもあります。首に対して行う場合を、ネックボトックスと呼んでいます。
従来のボトックス注射は、エラの咬筋や眉間の皺眉筋といった「筋肉の本体」に打ちます。狙いは筋肉そのものを一時的に弛緩させること。一方マイクロボトックスは、筋肉の表層側、皮膚にくっついている細かい線維だけに作用させるイメージです。専門的な研究や海外のレビュー等でも、オナボツリヌストキシンAを薄く希釈して真皮内へ細かく分散させて打つ手法が標準的とされています。濃度を薄くし、一点あたりの量を極限まで少なくする。だからこそ表情や動きはしっかり保たれるのに、皮膚の表面だけをなめらかに整えることができるのです。
あえて正直にお話ししますが、「ボトックス=表情が固まる」というイメージを持ったまま来院される方は今でも少なくありません。首に打つと聞いて、「物が飲み込めなくなりませんか」「声が変になりませんか」と心配される方もいらっしゃいます。ただ、注入する層と一点あたりの単位数を厳守すれば、そうしたリスクは十分にコントロール可能です。逆に言えば、首は顔以上に繊細な部位であるため、解剖学的な層を意識せず「とりあえず広く打つ」ような施術は絶対に避けるべきだと考えています。
もうひとつ。マイクロボトックスは小じわだけでなく、皮脂分泌や毛穴の目立ちにも関与すると報告されています。首の皮膚は皮脂腺が少ないので、首に関しては「小じわ」と「筋由来のスジ」への効果が主役です。
首の小じわはなぜできる?

首に小じわができやすいのは、皮膚が薄いことと、広頚筋(こうけいきん)という薄い筋肉が真皮に直接くっついていることが理由です。顔の皮膚と比べて首の皮膚は薄く、皮脂腺も汗腺も少ない。乾燥しやすく、紫外線のダメージも蓄積しやすい部位です。
そこに広頚筋の動きが加わります。広頚筋は鎖骨のあたりから口元まで広がる、非常に薄いシート状の筋肉。これが収縮すると、皮膚が引っぱられて縦方向のスジ(プラティスマバンド)が浮き出ます。年齢とともに筋線維が束になりやすく、安静にしていても2本のスジが見える方もいます。「首に輪ゴムをかけたような線がある」「筋が浮いて首が老けて見える」という訴えは、ほぼこの構造が原因です。
横方向のシワ、いわゆるネックラインはまた別です。こちらは皮膚の折れ癖。下を向く姿勢を一日に何時間も繰り返せば、同じ場所に折り目がつきます。私の診療で感じるのは、ここ数年、20代後半〜30代で「首の横じわ」を主訴に来院される方が明らかに増えたこと。デスクワークとスマホの姿勢が、首の皮膚にとっては想像以上に過酷なのだと思います。
整理すると、首のシワは三つに分けて考える必要があります。
- 筋肉の収縮で浮き出る縦のスジ → ボトックスが得意
- 皮膚表面の浅いちりめんジワ・浅い横じわ → マイクロボトックスが得意
- 深く刻まれた横じわ、皮膚のたるみ・二重あご → ボトックス単独では不十分
カウンセリングで私がまず行うのは、首を動かしてもらって「これは筋肉由来か、皮膚由来か」を見分けること。ここを曖昧にしたまま打っても、満足度は上がりません。
ネックボトックスの効果と回数
効果の出方は、注射後3〜7日で変化を感じはじめ、2週間前後で最大、そこから3〜4か月かけてゆるやかに戻っていく、というのが一般的な経過です。首は顔の表情筋より持続が短めに感じる方もいて、3か月程度で「そろそろ」とおっしゃる方が多い印象です。
広頚筋の目立ちに対するボツリヌストキシンの効果は、海外の第3相ランダム化比較試験でも検証されています。重症度に応じて26〜36単位を広頚筋へ浅く筋肉内注射した群では、14日目の時点でプラセボ群を大きく上回る改善が確認され、医師評価で半数以上が「ごく軽度〜軽度」まで改善したと報告されています。また、繰り返し投与の試験では、関連する有害事象はいずれも軽度で、遠隔部位へのトキシン拡散を示す所見はなかったとされています。軽〜中等度のプラティスマバンドに対する系統的レビューでも、有効性と安全性は概ね良好という結論です。
マイクロボトックスそのものについても、下顔面と首を対象にしたクロスオーバー試験があり、ジョウル(口角横のもたつき)、マリオネットライン、首のボリューム、安静時と収縮時のプラティスマバンドのいずれにも改善がみられたと報告されています。
では何回受ければいいのか。私の答えはこうです。縦のスジがメインなら1回でも変化を実感しやすい。浅いちりめんジワがメインなら、2〜3か月おきに2〜3回続けたほうが仕上がりが安定します。理由は単純で、皮膚の折れ癖は一度ゆるめただけでは戻りやすいから。繰り返すうちに「打たない期間も以前より目立たない」という方が一定数いらっしゃいます。ここは個人の筋肉の強さと生活姿勢にかなり左右されます。
逆に、1回で劇的に変わらないケースもはっきりお伝えしておきます。安静時にもくっきり刻まれた横じわ、皮膚が余ってたるんでいる首。これはボトックスの適応外に近い。カウンセリングでこう聞かれたとき、私はいつも「シワの原因が筋肉か皮膚かで、打つ意味が変わります」とお答えしています。
マイクロボトックスの施術の流れ

所要時間は、初診のカウンセリングを含めて60分前後。注射そのものは5〜15分で終わります。
STEP 1|診察とデザイン
首を動かしてもらい、スジの走行、安静時にも残るシワ、皮膚のたるみの程度を確認します。持病、内服薬、妊娠・授乳の有無もここで伺います。
STEP 2|洗顔とマーキング
首元をクレンジングし、注入点をマーキングします。マイクロボトックスは浅く細かく打つので、点の数は首全体で数十か所になることもあります。
STEP 3|表面麻酔
希望に応じて麻酔クリームを20〜30分置きます。「刺さる感覚が苦手」という方には使ったほうが落ち着いて受けられます。
STEP 4|注入
極細針で真皮浅層に微量ずつ注入。薄く広く、が原則です。深く入れすぎないこと、喉頭周囲に不用意に広げないこと。この二つは私が必ず守っています。
STEP 5|アフターケア
軽く冷却して終了。当日からシャワーは可能で、メイクも目立つ赤みが引けば問題ありません。ただし当日は首を強くマッサージすること、激しい運動、サウナや長風呂は避けていただきます。
ダウンタイムは軽めです。点状の赤みは数時間〜翌日で落ち着き、内出血が出た場合は1〜2週間で吸収されます。経験上、内出血が出るのは首の側面、皮膚が薄く血管が透けている部分が多い。どうしても避けたい予定がある方には、2週間以上の余裕を見てご予約いただくようお願いしています。
なお、当院は骨切りや輪郭手術も行っていますが、当院では血腫の早期発見と気道確保、開口訓練を優先するためフェイスバンドによる圧迫固定は行いません。代わりに、頭を高くして過ごし、しっかり食事を取っていただくこと、そして早期からの開口訓練をおすすめしています。これは注射治療にも通じる考え方で、「とりあえず押さえる」より「変化を見逃さない」ほうを私は重視しています。
首のボトックスは痛い?副作用
痛みは「チクッとした感覚が数十回」という程度で、麻酔クリームを併用すればほとんどの方が問題なく受けられます。針は極細のものを使い、1か所あたりの注入量もごく少量なので、咬筋ボトックスのような重い鈍痛は通常ありません。
起こりうる副作用で最も多いのは内出血と、注入部位の赤み・軽い腫れ。これらは一過性です。頻度は低いものの、首特有のものとして飲み込みにくさ(嚥下違和感)、首の力が入りにくい感じ、声の出しづらさが報告されています。繰り返し投与の臨床試験でも嚥下障害や顔面の筋力低下といった事象が報告されていますが、いずれも軽度で、トキシンの遠隔拡散を示す所見はなかったとされています。
なぜこうした症状が起こるのか。広頚筋の深部には、飲み込みや喉の動きに関わる筋肉が近接しています。だから深く入れすぎると影響が出る。逆に言えば、浅く、微量で、解剖を意識した位置に打てばリスクは下げられます。私が注入のときに必ず守っているのは、(1)注入層を真皮〜ごく浅い皮下に限定する、(2)一点あたりの単位を増やさず点数で面をカバーする、(3)喉仏周囲には打たない、の三点です。
受けられない方もいます。妊娠中・授乳中の方、重症筋無力症などの神経筋接合部疾患をお持ちの方、ボツリヌス製剤にアレルギーのある方。また、短期間での反復注射は抗体産生の観点から勧められません。日本美容外科学会(JSAS/JSAPS)や日本形成外科学会でも、適応と投与間隔の遵守は繰り返し議論されているところです。申し遅れましたが、私は院長の宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医)です。外科医として20年以上、組織の層を意識して手を動かしてきた立場から言うと、注射も結局は「どの層に、どれだけ」に尽きると思っています。
小じわ治療の料金と効果の持続
料金については、当院の料金ページに記載している金額をご確認ください。参考価格であり、注入範囲や単位数によって変わるため、確定金額は診察のうえでご案内します。何種類もの追加費用が後から出てくるような説明はしません。
持続は3〜4か月が目安です。年に3回前後のペースで継続される方が多く、「夏に首元を出す前」「結婚式や同窓会の2〜3週間前」といったタイミングで受けられる方もいます。注射から効果のピークまで2週間かかるので、イベント前なら最低でも3週間前までに受けていただくのが安全です。
ここで、よく誤解されていることを三つ挙げます。
ひとつ目。「一度打てばシワが消えてなくなる」わけではありません。ボツリヌストキシンの作用は可逆的で、時間とともに神経筋接合部の機能は戻ります。
ふたつ目。「打てば打つほど効く」わけでもない。単位を増やすと、首では飲み込みにくさなどのリスクが上がります。私は増量より回数で調整する方針です。
三つ目。たるみとシワは別物です。皮膚が余ってもたついている首、二重あごが気になる首に、マイクロボトックスだけで対応するのは無理があります。そういう方には、ヒアルロン酸やスキンブースターの併用、あるいは外科的なアプローチを含めて選択肢をお話しします。何でもボトックスで解決するように説明するのは、私は誠実ではないと思っています。
銀座・中央区エリアは美容クリニックが密集していて、比較検討される患者さんが本当に多い。だからこそ、「この治療で届く範囲」と「届かない範囲」を最初に線引きすることが、結果的に満足度につながると考えています。
よくある質問
Q. 首のスジが2本浮いていて老けて見えます。ネックボトックスで目立たなくなりますか?
A. 縦に浮き出るスジは広頚筋の収縮が原因であることが多く、ボトックスで改善が期待できる代表的な症状です。臨床試験でも、浅い筋肉内注射で2週間後に明らかな改善が確認されています。ただし皮膚のたるみが主因の場合は変化が限られるため、診察で見極めます。
Q. スマホの見すぎでついた首の横じわにも効きますか?
A. 浅い横じわであれば、マイクロボトックスでなめらかに見せる効果が期待できます。皮膚の折れ癖が浅いうちほど反応は良好です。一方、安静時にも深く刻まれている横じわは注射だけでは不十分なことが多く、ヒアルロン酸などの併用をご提案する場合があります。
Q. 施術した翌日から仕事に行けますか?メイクはできますか?
A. 翌日からの通常勤務は問題ない方がほとんどです。点状の赤みは数時間から翌日で落ち着き、メイクもその日のうちに可能です。内出血が出た場合は1〜2週間かかることがあるため、重要な予定の2週間以上前の施術をおすすめしています。
Q. 首に打つと飲み込みにくくなると聞いて怖いのですが大丈夫でしょうか。
A. 頻度は低いものの、嚥下の違和感が報告されているのは事実です。深く入りすぎた場合に起こりやすいため、当院では注入層を浅く限定し、一点あたりの量を抑え、喉仏周囲は避けています。万一症状が出ても多くは軽度かつ一時的ですが、気になる症状があればすぐご連絡ください。
Q. 顔のボトックスと同じ日に首も受けられますか?
A. 同日に行うことは可能です。むしろ下顔面のもたつきと首のスジは連動していることが多く、あごのラインと首をまとめて整えたほうが自然に仕上がるケースもあります。総単位数が過剰にならないよう配分を調整しますので、ご希望を診察時にお伝えください。
まとめ
- マイクロボトックス(ネックボトックス)は、ボツリヌストキシンを薄く希釈して真皮浅層へ微量多点に注入する方法
- 首の縦のスジ(広頚筋由来)と浅い小じわ・横じわに向いている
- 効果は3〜7日で出はじめ2週間でピーク、持続は3〜4か月が目安
- ダウンタイムは軽く、翌日から通常生活が可能。内出血が出た場合は1〜2週間
- 深い横じわ・たるみ・二重あごには別のアプローチが必要
- 妊娠中・授乳中、神経筋疾患のある方は適応外
首は顔よりも年齢が出やすく、しかも自分では見えにくい部位です。写真や動画を見て初めて気づいた、という方も多いのではないでしょうか。気になりはじめた段階が、いちばん結果の出やすいタイミングだと私は思っています。なお、効果には個人差があります。まずは一度、ご自身の首のシワが「筋肉由来」か「皮膚由来」かを診せにいらしてください。
当院のご案内
リノクリニック東銀座
院長:宮﨑 邦夫(日本外科学会認定 外科専門医、外科経験20年以上)
所在地:東京都中央区銀座3丁目11-13 松本銀座ビル9階(東銀座駅から徒歩3分)
当院では、マイクロボトックス・ネックボトックスをはじめとする注入治療のほか、輪郭・骨切り手術、婦人科形成、保険診療の腋臭症手術まで、外科専門医が一貫して診療にあたっています。東京・銀座エリアで首の小じわやフェイスラインのお悩みを相談先をお探しの方は、まず診察でご状態を確認させてください。治療のメリットだけでなく、向かないケースもその場で率直にお伝えします。
初診のご予約はこちら(WEB予約24時間受付)
関連コラム
参考文献
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- Sugrue CM, Kelly JL, McInerney N. Botulinum Toxin Treatment for Mild to Moderate Platysma Bands: A Systematic Review of Efficacy, Safety, and Injection Technique. Aesthet Surg J. 2019;39(2):201-206. PubMed / DOI
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監修者情報

宮﨑 邦夫
リノクリニック東銀座 院長【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員
消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。
監修日:2026.10.16



