院長コラム

骨切りとは?削骨との違いを外科専門医が解剖から解説

写真に写るたびに顔の大きさが気になる。エラが張っていて髪を結べない。顎が長くて面長に見える。横顔のEラインが整わない——こうした悩みで検索していると、必ず出てくるのが「骨切り」という言葉ではないでしょうか。

骨切りとは、ひとことで言えば骨に切離線を入れて骨片を動かし、新しい位置で固定する手術のことです。

表面の骨を削って形を整える「削骨」とは、目的も適応も異なります。ところが、この二つを混同したまま相談に来られる方は少なくありません。

東銀座のリノクリニックで日々カウンセリングをしていて、最初に説明することが多いのが、この骨切りと削骨の違いです。

この記事では、骨切りと削骨の解剖学的な違い、部位ごとの術式、そして「自分の悩みにはどちらが必要なのか」を見極める考え方を、私自身の診療経験を交えてお話しします。

この記事でわかること

  • 骨切りとは何か、削骨(骨削り)と何が違うのか
  • エラ・顎先・頬骨・上下顎など、部位別の術式と適応の違い
  • 「顔が大きい」「エラが張る」「面長」など、悩みの原因による治療の考え方
  • 骨切り後の腫れや仕事復帰、費用、当院の術後管理の考え方

骨切りとは何かを解剖学的に

骨切りは、英語ではosteotomy(オステオトミー)といいます。

骨に対して目的に応じた切離線を設計し、その線に沿って骨を切り、骨片を移動させ、必要に応じてプレートやスクリューで固定する手術です。

ここで大事になるのが、骨だけを見るのではなく、その周囲を走る神経や血管まで含めて立体的に考えることです。

下顎骨であれば、内部には下歯槽神経が通る下顎管があり、その神経はオトガイ孔から出て下唇や顎先の知覚に関わります。

つまり顎の骨は、ただの硬い塊ではありません。神経や血管との位置関係を確認しながら手術計画を立てる必要があります。

だから骨切りは、単に「骨を切る」作業ではありません。

どこに切離線を設定するのか。骨片をどの方向へ、どの程度動かすのか。移動後に骨同士が安定して接触できるのか。さらに、神経や歯根、咬み合わせにどのような影響があるのか。

これらを同時に考えて設計することが重要です。

私は骨切りでは、手術そのものと同じくらい術前の設計が重要だと考えています。

CTなどの画像から顎顔面骨格を立体的に確認し、下顎管の走行、骨の形や厚み、左右差などを一例ずつ確認します。

特に下顎骨の手術では、下歯槽神経の位置関係を事前に把握することが、安全に手術を行ううえで重要です。

骨切りと削骨の決定的な違い

顔の骨格模型を使って骨切りと削骨の違いを患者に説明する診察室の場面|リノクリニック東銀座

削骨(骨削り)は、ボーンバーなどの器具を使用して骨の表面を削り、輪郭を整える手術です。

骨片そのものを移動させるのではなく、突出している部分や厚みを調整する手術と考えるとわかりやすいと思います。

対して骨切りは、骨に切離線を入れて、骨片そのものを移動させます。

そのため、骨の表面を整えるだけでは変えにくい「位置」「長さ」「幅」などに対してアプローチできることが、削骨との大きな違いです。

たとえば顎先が長い方。

骨表面を削るだけで調整できるケースもありますが、顎の垂直的な長さそのものをしっかり短くしたい場合には、オトガイ部を骨切りし、中間の骨を切除して短縮する方法などを検討します。

さらに、エラの「外板切除」のように、単純にバーで削るのではなく、下顎骨外側の皮質骨を切除して厚みを減らす術式もあります。

私は患者さんに説明するとき、「削る」「切って外す」「切って動かす」という違いで説明することがあります。

同じ「骨を小さくする手術」に見えても、何を変えられるのか、侵襲やリスク、ダウンタイムはそれぞれ異なるからです。

整理すると、削骨は「骨の表面や突出を整える」、外板切除は「骨の厚みを減らす」、骨切りは「骨の位置や長さを変える」という違いがあります。

顔が大きいという悩み一つとっても、原因が下顎骨の厚みなのか、下顎角の突出なのか、顎先の長さなのか、頬骨の横方向への張り出しなのかで、選ぶ手術は変わります。

だから「骨切りと削骨、どちらがいいですか」という質問には、実際に骨格を確認する前には答えられないのが正直なところです。

骨切りの対象部位と術式の種類

顔面の骨切りにはさまざまな術式がありますが、輪郭形成で相談の多い部位を大きく分けると、下顎角、オトガイ、頬骨、上下顎などがあります。

STEP 1|下顎角(エラ)の骨切り

「エラが張っていてベース顔に見える」という悩みで相談される方が多い部位です。

下顎角形成では、下顎角から下顎体にかけて、顔全体の輪郭が滑らかにつながるよう骨の形を整えます。

単純に角の部分だけを切除すると、切除した部分と残った下顎骨との境界が目立つことがあるため、どこまで骨のラインをつなげるかが重要になります。

また、正面から見た下顔面の横幅には、下顎骨の外側の厚みが関係しているケースがあります。その場合には、外板切除などを組み合わせることもあります。

STEP 2|オトガイ(顎先)の骨切り

顎が長い、顎先が前に出ている、逆に顎が引っ込んでいる、左右差がある。

こうした悩みは、オトガイ形成術(genioplasty)の領域です。

顎先の骨を水平に骨切りして前後へ移動させる方法、垂直方向の長さを短くする方法、幅を狭くする方法などがあり、目的によって骨切りの設計を変えます。

どの程度移動できるかは、骨の形や厚み、歯根、オトガイ神経の位置、顔全体のバランスなどによって異なります。

骨片を移動したあとは、必要に応じてプレートやスクリューで固定します。

STEP 3|頬骨の骨切り

「頬骨が横に張り出している」「正面から見たときに顔幅が気になる」という方では、頬骨の位置や突出方向を確認します。

頬骨縮小術では、頬骨体部や頬骨弓に骨切りを行い、骨片を内側へ移動させる方法があります。

頬骨は単純に表面を削ればよいとは限りません。

張り出しの位置や骨格によっては、突出している骨を削るよりも、骨切りによって骨片の位置そのものを変えるほうが適しているケースがあります。

STEP 4|上下顎(両顎手術)

受け口、口元の突出、顔の左右差、咬み合わせのズレなど、上下顎の位置関係そのものに問題がある場合には、輪郭形成だけでは十分に改善できないことがあります。

この場合に検討されるのが、上顎のLe Fort I型骨切り術や、下顎の下顎枝矢状分割術(SSRO)などを組み合わせる両顎手術です。

両顎手術は、顔の輪郭だけでなく咬み合わせにも関係する手術です。

特に顎変形症など咬合異常を伴う場合には、矯正歯科や口腔外科などとの連携を含めて治療計画を立てる必要があります。

カウンセリングでよく聞かれるのが「全部やったほうがいいですか」という質問です。

私はまず、その方が一番気になっている部分と、顔全体のバランスを大きく崩している原因がどこにあるのかを整理します。

すべての部位を変えれば必ずきれいになるわけではありません。

どの部位をどこまで変えるのかを決めることが、輪郭手術では重要だと考えています。

自分に骨切りが必要か見極めるポイント

術後の腫れが引いていく経過をイメージした女性の横顔のクローズアップ|リノクリニック東銀座

自分に骨切りが必要かどうか。私が診断で重視しているのは次の四点です。

1|悩みの原因が骨なのか、軟部組織なのか

たとえばエラの張りは、骨だけではなく咬筋の発達が関係している場合があります。

診察では、顔の形を確認するだけではなく、咬筋の発達、脂肪や皮膚の厚みなども確認します。

筋肉のボリュームが主な原因と判断した場合には、骨切りではなくボトックスなどを先に提案することもあります。

2|正面と側面のどちらが気になっているのか

同じエラや顎の悩みでも、正面から見た横幅を変えたいのか、横顔のラインを変えたいのかによって必要な処置は異なります。

正面の横幅には外板の厚みや頬骨の張り出しが関係する場合がありますし、側面では下顎角や顎先の位置・長さが重要になることがあります。

患者さんが「どの角度の顔を一番変えたいのか」を確認することも、術式を決めるうえでは大切です。

3|咬み合わせに問題がないか

咬み合わせや上下顎の位置関係に大きなズレがある場合には、輪郭だけを整える手術ではなく、両顎手術を含めて検討したほうがよいケースがあります。

そのため、顔貌だけではなく咬合も確認して治療方針を決めます。

4|骨の上にある軟部組織をどう考えるか

骨格を小さくすると、その上にある皮膚、脂肪、筋肉などの軟部組織とのバランスも変化します。

骨の変化量が大きいほど、術後の軟部組織の見え方まで考えて手術計画を立てることが重要です。

年齢だけでたるみの程度を決めることはできませんが、皮膚の状態、脂肪量、骨格の変化量などによっては、術後にたるみが気になる可能性もあります。

私自身も、骨だけを見て手術を決めるのではなく、術後にその上の軟部組織がどう見えるかまで含めて考えるようにしています。

骨切り後の腫れと仕事復帰

骨切りの術後は腫れが出ます。

腫れ方には個人差がありますが、一般的には手術直後よりも数日かけて腫れが強くなり、その後徐々に落ち着いていきます。

見た目として大きな腫れが落ち着いたあとも、むくみや硬さ、左右差のように感じる状態がしばらく残ることがあります。

最終的な輪郭を評価するまでには、数か月単位で経過を見る必要があります。

当院では、術式や術後の状態に応じて経過を確認しながら術後管理を行います。

当院では、骨切り後にフェイスバンドなどで強く圧迫することを基本としていません。術後は血腫や腫脹、呼吸状態などを確認することが重要であり、必要な術後管理は手術内容や患者さんの状態に合わせて判断しています。

また、術式に応じて開口訓練などの機能回復も行います。

ご自宅では、頭を少し高くして休むこと、指示された食事方法を守ること、必要な栄養を確保することなどをお願いしています。

骨や創部の回復にはエネルギーやタンパク質などの栄養も必要です。食事が取りにくい時期でも、術式に応じた方法で必要な栄養を確保することが大切です。

仕事復帰の時期は、手術部位や手術範囲、腫れの程度、仕事内容によってかなり変わります。

デスクワークで比較的早く復帰される方もいますが、人前に出る仕事では腫れがどの程度落ち着くまで待つかによって必要な休みも変わります。

そのため、「何日休めば必ず大丈夫」と一律にはお伝えせず、予定している手術と仕事内容を確認したうえでご案内しています。

骨切りの費用の目安

骨切り・輪郭形成は、術式や手術部位、複数施術の組み合わせ、麻酔方法などによって費用が大きく変わります。

また、麻酔料や術前検査、術後診察などが料金に含まれているかどうかもクリニックによって異なります。

当院での具体的な費用については、現在の料金表をご確認ください。

なお、顎変形症など一定の疾患として診断され、施設基準などの条件を満たして治療を行う場合には、外科的矯正治療が保険診療の対象となることがあります。

一方、美容目的で行う輪郭形成や骨切りは自由診療となります。

骨切りについてよくある質問

Q. エラが張っているのですが、骨切りで小顔になれますか?

A. 骨格の張りが原因であれば、下顎角形成や外板切除などによって下顔面の輪郭を変えられる可能性があります。

ただし、エラが張って見える原因には咬筋の発達や脂肪などもあります。

筋肉の影響が大きい方では、骨を手術しても期待していた変化と一致しない可能性があります。

診察と画像検査をもとに、どこが顔幅に影響しているのかを確認してから術式を決めます。

Q. 顎が長くて面長に見えるのが悩みです。骨切りで短くできますか?

A. 顎先の骨格が原因であれば、オトガイ骨切りによって垂直方向の長さを短くする方法があります。

ただし、面長に見える原因は顎先だけとは限りません。

中顔面の長さ、上下顎の位置、咬み合わせなども含めて顔全体の縦横比を確認し、どの部分をどの程度変えるのかを決めます。

Q. 骨切りは削骨よりダウンタイムが長いのでしょうか?

A. 骨片を切離して移動・固定する骨切りは、骨表面を整える削骨と比べて手術範囲が大きくなる場合があります。

ただし、ダウンタイムは「骨切りか削骨か」だけでは決まりません。

手術する部位、骨の処理範囲、複数の手術を組み合わせるかどうかなどによって、腫れや回復期間は変わります。

仕事の予定がある場合には、カウンセリング時に具体的な日程まで含めてご相談ください。

骨切りとは何か|まとめ

  • 骨切りとは、骨に切離線を入れ、必要に応じて骨片を移動・固定して骨格を変える手術
  • 削骨は骨の表面や突出を整える手術で、骨切りとは変えられる部分が異なる
  • 外板切除では下顎骨外側の厚みを減らし、正面から見た下顔面の幅を調整することがある
  • 骨切りには下顎角、オトガイ、頬骨、上下顎などさまざまな術式がある
  • 必要な手術は、骨格だけでなく筋肉・脂肪・皮膚・咬み合わせまで確認して判断する
  • 骨切り後の腫れや仕事復帰までの期間には個人差があり、最終的な輪郭の評価には数か月かかる

顔が大きい、エラが張る、顎が長い、横顔が気になる——同じ言葉で語られる悩みでも、原因となっている骨格や軟部組織は一人ひとり違います。

ネットの情報だけで「自分にはエラ削り」「自分には顎の骨切り」と決めてしまう前に、一度骨格を確認してみることをおすすめします。

効果や術後の経過には個人差があります。

東銀座のリノクリニックのご案内

リノクリニック東銀座では、外科専門医である私が、骨切り・輪郭形成・両顎手術をはじめ、人中短縮、婦人科形成、腋臭症などの診療を行っています。

輪郭形成では、診察と画像検査をもとに骨格を確認し、「どこを変えると希望する輪郭に近づくのか」「骨切りが必要なのか、それとも別の方法が適しているのか」を一緒に整理していきます。

中央区・銀座エリアにお勤めの方はもちろん、東京都外からのご相談も承っています。

参考文献

  1. 日本口腔外科学会.顎変形症の標準手術-Le Fort I型骨切り術-.日本口腔外科学会雑誌.2012;58(8):473-479.
  2. 日本口腔外科学会.専門医制度施行細則.Le Fort I型骨切り術、下顎枝矢状分割術、オトガイ形成術、下顎角形成術等.
  3. Chen H, Sun J, Wang J. Reducing Prominent Mandibular Angle Osteotomy Complications: 10-Year Retrospective Review. Ann Plast Surg. 2018;81:S5-S9.
  4. Deschamps-Braly J. Feminization of the Chin: Genioplasty Using Osteotomies. Facial Plast Surg Clin North Am. 2019;27(2):243-250.
監修者情報

宮﨑 邦夫

リノクリニック東銀座 院長

【資格・所属学会】
日本外科学会専門医 / 日本外科学会会員 / 日本形成外科学会会員 / 日本頭蓋顎顔面外科学会会員 / 日本美容外科学会会員

消化器外科・心臓血管外科・呼吸器外科・小児外科など外科研修ののち、外科専門医を取得。その後、形成外科で6年、美容外科で7年実績を積み、リノクリニック東銀座を開業、院長を務める。美容外科の技術は韓国や台湾、アメリカなどへ出向き、良質な技術を取り入れて日々の診療に生かしている。 2014年から在籍していた湘南美容クリニックでは指導医として若手美容外科医の教育にも尽力し、同院で行われた美容外科コンテストで2年連続ではグランプリを獲得。次の東京美容外科では骨切りメニューの立ち上げを行い、スタッフ教育にも尽力した。

監修日:2026.09.14

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